ISMRM2017 (25th) プレナリーセッションで長縄慎二先生が講演

今年のISMRMは、ハワイ開催!それだけでもテンションが上がりますが、、

、、長縄慎二先生がプレナリーセッションで講演されるという記念すべき大会になりました。

Webサイトでもこのようなバナーがでています。

この模様をお届けします。

開催は通常より遅い10:45からということで、お寝坊さんも皆集まっています(^^) これは会場の中央付近で撮影したので、後ろにもたくさんの人がいます。全部で2000人ほどいたのではないでしょうか。真ん中に講演者が映し出され、講演内容のスライドは左右に投影されます。

司会は、Peter Caravan, Ph.D. と、 Winfried Willinek, M.D.です。

第2話者のトエニー(Harriet Thoeny)先生。腎臓の画像診断が専門で、DWIの会でも大変よく招かれている先生です。

彼女はGdベースの造影剤(GBCA)について、欧州基準(EMEA)による安全性評価について話されました。当然のごとく、 神田 知紀先生(帝京大、この4月から神戸大)によるGdの脳沈着の論文がでてきます。

デンマークでは、リニア型造影剤は基本的に使用禁止となったようです。また欧州全体でも、マクロ環型が75%程度のシャアになった(増大した)とのこと、またEMEAでは、リニア型は推奨しないということになったと述べられました。

長縄慎二先生登場

最後のトリに長縄先生が登場されました。講演慣れしている長縄先生ですが、心なしか緊張の面持ちです。

Long TEのFLAIR

今回の発表内容の重要な点は、「静注したGBCAは脳脊髄液(CSF)に移行する」ということですが、それを可能にしたのが、とてもTEの長いFLAIRシークエンス(Heavily T2-weighted FLAIR)です [注:英語では”heavily”と副詞になります]。この撮影法を用いると、 (1) FLAIRなので、通常のCSFはnullingされる(信号が抑制される)(2) 少しでも不純物が含まれると(少しでもT1 shorteningが起こると)信号が上昇する ということがわかります。これを用いて、Gdを「静注した(=血液の中に入れた)」にもかかわらず、なぜか「CSFに移行した」ということを発見しました。神田先生の発表(Gdが脳に沈着してしまうことを発見)とも相まって、非常に注目されることになったわけです。

もともとFLAIRは、くも膜下出血の際に出血をみるためにも用いられます。しかし今回の方法は、造影後1時間以上経ってから撮影しているところがポイントです。ものすごく長いインタバルを置かないとGBCAが脳脊髄液中に移行することがわからないのですが、たまたまメニエール病の研究をしていて発見した、というところが重要なブレークスルーでした。

・・というわけで、それを説明しているスライド。順調にプレゼンが進みます。

Glymphatic Systemと、眠ること

いま、脳脊髄液が、(身体におけるリンパ液のような)老廃物をwash outするシステムだと考えられてきていますが、これを造語でGlymphatic System [Google Scholar]といいます。このシステムは、以前私のブログでも紹介しましたね(「眠ることが大切なもう一つの理由」)。これは寝ているときによく働いて、老廃物を流すのですが、このスライド(…is active during sleepと書いてあります)の時に ” I hope you are awake” (・・・けれども、みなさんが(この講演ではいま)起きていることを期待します)と述べて、相当な笑いを誘いました!👏

・・というわけで、無事発表は終了しました。

ウィリネック(ウィンフレッド)先生とトエニー(ハリエット)先生はお友達なので、お礼とお祝いを行って、写真を撮りました。ウィリネック先生はずーっとボン大学にいましたが、Tier大学の教授になりました。イケメンです! ハリエット先生は、いっつも「はいタァーロオ〜」というオーバーアクションの素敵な方で、いつも癒やしてくれます。彼女は今回が2回めのPlenaryで(そんな人はとてもめずらしい!)、1回目は2008年(5月5日月曜日、Toronto)で、そのときは僕も一緒に発表させていただいた(Whole Body Volumetric Diffusion-weighted Imaging (DWI))のでそれ以来おつきあいを頂いています。

終了後も長縄先生は・・・

はい、終了後も15分間ぐらいに渡って、長縄先生はずーっと質問攻めにあっていました。成功した講演は、”Congraturations”という声掛けと、質問がたくさん来るというのがバロメーターです。本当におめでとうございました。みんなでお祝いをいたしましょう!

余談1:「臨床画像」6月号(MRI特集)

私は、「臨床画像」6月号(5月末発売)のMRI特集の編集をさせていただいています。長縄慎二名大教授が今回講演されたGlymphatic Systemとガドリニウムについて、同大学の田岡俊昭准教授が、ご自身の仮説も含めて素晴らしい原稿を書いてくださっています。拝読して感動しました。乞うご期待!

余談2:故・平敷淳子先生と、STIR with long TE

昨年平敷淳子(あつこ)先生がお亡くなりになりました。平敷先生には、現・徳島大学教授の原田先生などと一緒に、埼玉医大で1990年ごろに開催されたMRI勉強会(泊りがけでした)でMRIについて教えていただきました。皆さんご存知と思いますが、MR学会でのシンポジウムでも時には厳しく(笑)、本当は温かく(本当です)、指導してくださいました。そのときに天沼誠先生にMRAを教えていただいたのもよく覚えています。

その平敷先生が、今回の学会で、IN MEMORIAM に顔写真が載っていたのは、日本人として誇らしいことではありますが、本当に寂しい限りです。平敷先生が、あのときMRI勉強会で教えてくれたのは、「STIR法を単に脂肪抑制と(だけ)思ってはいけません。TEを短くしたり長くしたりすると、映し出されるものが変わるんだよ」ということでした。STIR with short TE, STIR with long TE と呼んでいました。IR法でもいつもTEのことを意識したり、IR法のひとつもであるDWIBS法でTRのことを意識したりするのは、平敷先生が最初に刷り込んでくださったおかげです。今回、長縄先生が、「FLAIR with long TE」、とでも呼ぶべき、IRシークエンスをお使いになって(それが大発見につながった)のをみて、改めて感慨を深くした次第です。

もうひとつ、私にとっては、左から2人目のKlaas Nicolay先生がご逝去されたことに衝撃を受けました。Nicolay先生は、自分をPlenaryに呼んでくれた人です。調べたら2007年のことで、僕はそのとき(もう)オランダにいたのですが、杏林大学にいると思ってメールを下さったのでした。時は流れていきますね。

 

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tarorin東海大学工学部 医用生体工学科 教授

投稿者プロフィール

MRIの撮像・フィルム焼き・患者導入に従事していた経験を活かし、企・技・医の中間の立ち位置を大切にしています。モットーは研究結果を中立的に判断すること、皆で研究成果を愉しむことです。

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