- Home
- ★FOVの面内回転でモーションアーチファクト回避
★FOVの面内回転でモーションアーチファクト回避
- 2024/10/25
- BLOG, Education, 撮像のワンポイントアドバイス
- コメントを書く
<新企画>「撮像のワンポイントアドバイス」
★〜★★★までの難易度を設定し、MRIにおける基本的な注意点や撮像のポイントなどをまとめていくコンテンツです。初学者の方やローテーターの方など是非ご一読ください!
今回の「撮像のワンポイントアドバイス」の難易度は★ひとつです。
岡山済生会総合病院の吉村祐樹です。
今回は、明日から誰でもすぐに使えるちょっとした画質改善の方法を紹介したいと思います。FOVを面内で回転させることでモーションアーチファクトを回避するテクニックです。
モーションアーチファクトとは
モーションアーチファクトの原因には、体動、蠕動、嚥下などの不規則な動きと、拍動(血管、心臓、脳脊髄液)、呼吸などの周期的な動きに大別されます。
モーションアーチファクトは位相エンコード方向のみに出現します。周波数エンコード方向ではモーションが問題にならないくらい短時間(ミリ秒の単位)でデータ収集するのに対し、位相エンコード方向ではTR毎(秒の単位)にデータ収集を繰り返すためモーションの影響を大きく受けます。そのため、位相エンコード方向に一定の間隔で生じるゴーストや画像のボケとしてアーチファクトが認められます。
対策はアーチファクトの原因により様々ですが、Saturation Pulseの併用や位相エンコード方向と周波数エンコード方向の変更、高速撮像法の使用、心電図同期・呼吸同期、TR・加算回数の設定など撮像法やパラメータの設定により対策ができます。また、患者さんへの口頭での説明や圧迫固定、鎮痙剤の使用といった対策もあります。
FOV面内回転テクニック
FOVの面内回転テクニックは教科書などに載っているところを見かけないのですが、パラメータ設定が不要で誰でもすぐに使用することができる簡便で有用な方法です。この方法は、位相エンコード方向は維持しつつ、FOVを面内で回転させることでモーションを目的とする部位から外すというものです。では、実際の活用例を見ていきましょう。
①初めは頸椎に関してです。
通常の背臥位の状態で矢状断を撮像すると頚椎・頚髄がFOVに対して斜めに写ってきます。この場合、口元の動きや嚥下によりモーションアーチファクトが頚椎・頚髄に重なってしまうことがあります(黄色矢頭)。そのため、頚椎・頚髄の走向と位相エンコード方向を平行に合わせることでアーチファクトを回避することができます。
②次は肩関節です。
肩関節の検査目的として腱板断裂の評価を行うことが多くあると思います。腱板断裂を最も生じやすいのは棘上筋腱ですので、横断像にて胸部の呼吸によるアーチファクトが腱の付着部や棘上筋に重ならないようにすると良いと思います。
③続いて前立腺です。
本手法は東京慈恵会医科大学附属病院の北川久様よりご紹介いただいたもので、前立腺の矢状断の撮像で恥骨を使って前立腺をプロテクトする方法です。
恥骨の背側は呼吸によるモーションアーチファクトの影響が小さいことを利用しています。通常のFOV設定では腹壁の動きがアーチファクトとして前立腺に重なっていることがわかると思います(黄色矢頭)。位相エンコード方向と平行になるように恥骨の背側に前立腺を隠すことでアーチファクトを回避することができます。
④最後は腫瘍が腹部の横側や背部などにあった場合です。
今回は皮下血腫を示しますが、呼吸によるモーションアーチファクトが腫瘍に重ならないようにFOVを面内回転することで回避することができます。
おわりに
今回はFOVの面内回転でモーションアーチファクトを回避する方法を紹介しました。画像の出方が通常(患者さんが普通に寝ている状態)とは異なるため、最後に回転保存し直して提出することや画像診断医との相談が必要になることもあるかもしれません。しかしながら、簡便で有用な方法ですので、他にもいろいろな部位で使えるはずです。モーションを想像しながら検査をしてみると面白い発見があるかもしれません。
皆様の撮影の一助となれば幸いです。
コメント
トラックバックは利用できません。
コメント (0)
この記事へのコメントはありません。