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★位相エンコード方向設定のススメ
- 2024/1/14
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<新企画>「撮像のワンポイントアドバイス」
★〜★★★までの難易度を設定し、MRIにおける基本的な注意点や撮像のポイントなどをまとめていくコンテンツです。初学者の方やローテーターの方など是非ご一読ください!
今回の「撮像のワンポイントアドバイス」の難易度は★ひとつです。
大雄会病院の伊藤祐介と申します。今回は位相エンコード方向の違いによる画像の変化についてまとめましたのでご覧ください。
おさらい〜位相エンコードとは〜
位相エンコードとは、k空間に信号を充填する際に、信号読み取り方向に垂直な方向の位置情報を位相差としてMRI信号に付与する方法です。周波数エンコード方向とは違い、基本的には1行ずつ充填する必要があるため、通常のスピンエコー系やグラディエントエコー系シーケンスでは、位相エンコード数に比例して撮像時間が延長します。そのため、矩形FOVにおいては図1のように短径方向を位相エンコード方向にするのが一般的です。
また、位相エンコード方向には折り返しアーチファクトやモーションアーチファクトが発生するため、撮像の際には目的臓器にアーチファクトがかからないように位相エンコード方向を適宜変更する必要があります。
位相エンコードによる画像の違い
それでは、下腹部領域を例に挙げて、エンコード方向が画像にどう影響するのかみていきましょう。
図2は、位相エンコード方向を変化させて前立腺MRIの撮像をした際のT2WI矢状断像です。左側は頭尾方向(HF)、右側は前後方向(AP)に設定しました。前立腺は直腸に隣接しており、腸管ガスの影響をダイレクトに受ける臓器です。また、呼吸による腹壁の動きもアーチファクトの要因となり、画質を劣化させます。当院では、腹壁からのアーチファクトを抑えるため、位相エンコード方向を頭尾方向で撮像しています。しかし左側の画像のように、腸管に溜まったガスの影響で前立腺や直腸の壁構造が不明瞭となることもあります。右側の画像のように、位相エンコード方向を前後方向に設定すると、それらの描出が改善されます。
図3は、子宮筋腫のT1強調画像の軸位断像です。左の画像は位相エンコードを左右方向(RL)にて撮像していますが、筋腫部分に腸管のモーションアーチファクトが重なっています。そこで位相エンコード方向を前後方向(AP)に変更して撮像したところ、今度は腹壁の動きが筋腫に重なってしまいました。このような場合、pre saturation pulseを腹壁上端にギリギリかかるように設定することで、腸管の動きと腹壁の動きを両方抑えることができます。
余談ですが、腸管のモーションアーチファクトを軽減する方法として、Radial scanが有効な場合があります。Radial scanは、k空間を風車のように充填していくデータ収集方法です。 Radial scan の利点は、動きの影響が分散し、モーションアーチファクトが目立たなくなることです(図4右)。ただし、Radial scanの画像は一般的なk空間の埋め方をした画像と比べて、画質が異なる可能性もあります。また、パラメータ調整方法も通常とは異なりますので、使用する際は事前に画質を確認してから使用してください。
以上、位相エンコード方向が画像に与える影響について解説いたしました。皆様にとってこの記事が少しでもお役に立てば幸いです。
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