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機能性肌着とMRI検査
- 2015/1/28
- Any Modality, Other Writers, 安全情報
- コメント:4件
「MRI検査をする時はヒートテックなどのあったかくなる肌着は脱いでくださいね」とよくお声掛けします。最近は似たような名前の商品が多くの会社から出ていて(下図)どれがよくてどれがダメなのか混乱しますよね。今日は機能性肌着の原理ともいえる“素材”について触れたいと思います。
通常の衣服は綿やポリエステル等の素材が多く使われます。一方機能性肌着といわれる製品には”吸湿発熱素材”が使用されています。例えばUNIQLOが販売するヒートテックの特徴はアクリルやレーヨンが織り込まれています。具体的な構成はアクリル41%、ポリエステル34%、レーヨン22%、ポリウレタン5%です(種類によって若干違います)。アクリルが高い保温性を、レーヨンが高い吸水性を持ち、肌から放散される水蒸気を吸水します。この時、水蒸気が衣服に吸着する際に発生する“吸着熱”が発生し、その熱をアクリルが閉じ込める役割を担っています。吸着熱は発熱効率は違えど、吸着熱自体で直接的に熱傷が起こるほどの温度上昇は起きません。
問題となるのはMRIとの相性です。MRI検査時にRFパルスにより人体内に温度上昇が起こると体温調節のため肌から放散される水蒸気も多くなります。機能性肌着ではこれを蒸散させることなく衣類に吸水します。通常の衣類より湿りますので誘導電流が流れ、火傷が起こりやすくなるわけです。おまけに、製品の特長上、熱を保持する機能にすぐれていますので、温度上昇はさらに容易に起こりやすい(火傷を惹起しやすい)という状況にあるわけです。湿った衣服はダメというのはMRI装置の添付文書上(下図)でもいわれていますので、機能性肌着を着たまま検査することは“さらにリスク因子を増やす”ということになりますね。
機能性肌着は様々な種類がありますが、レーヨンは乾きが遅い特徴がありますので、とくに意識する必要があるでしょう。最近はシャツだけでなく腹巻きや靴下にも吸湿発熱素材は使われていますし、新たな繊維素材も開発され続けていますので、我々MRIに携わる者は、ますますアンテナをはる必要があります。以下に、各社製品の成分リストを示しますので参考にしてください。
●各社からでている機能性肌着の成分リスト
もちろん、安全のため更衣してもらうほうが何より確実です。さらに、更衣してもらったことで安心せず、基本的な熱傷防止措置を確実に講じることを忘れてはなりません。
ウオーム・ビズ用衣料の特許技術の紹介
http://www.e-kochi.com/pdf/warmbiz-20121009.pdf
JIS Z 4951:2012 (IEC 60601-2-33:2010)
http://kikakurui.com/z4/Z4951-2012-01.html
レーヨンとは:ダイワボウレーヨン株式会社
http://www.daiwaborayon.co.jp/rayon/rayon1.html
発熱系肌着(ファーストリテイリング、東レ、グンゼ、ワコール、東洋紡) 人が放つ水蒸気を利用:日経ビジネス (1566), 120-122, 2010-11-15 日系BP社
ライター紹介
千葉 大志(旧姓:嶋森)(市立角館総合病院)
好きなもの:MRI、コーヒー、糖分
趣味 → 勉強会 ストレス解消 → 勉強会
新しいことを見つけた瞬間って最高です!MRIは最高です!
コメント
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コメント (4)
貴重な情報ありがとうございました。
ちなみに添付文書はどちらの装置でしょうか?
教えていただければ幸いです。
よろしくお願いします。
今回使用した添付文書は、Philipsの装置の添付文書です。
コメントありがとうございます。
いつもいろいろな情報をありがとうございます。
勉強させていただいております。
本文とは全く関係がなくて申し訳ないのですが、紹介文の「ご拝読下さい」が気になっておりました。
謙譲語のため使い方が誤りです。
今後ともよろしくお願いします。
吉田様、コメントありがとうございます。添付文書はoctさんの言う通りです。