Deep Learning(AiCE)がなくても出来る! 第2弾 Fast 3D Multipleは臨床で役に立つのか!?

前回の記事では、Fast 3D Wheelを用いることで、ルーチン頭部MRAがわずか2分半で撮像できることをお伝えしました。

このFast 3DはDeep Learning(AiCE)を用いていないにも関わらず、高速撮像を可能にするという画期的な技術でした。

Fast 3DなしMRA;4分49秒
Fast 3DありMRA;2分45秒

まだ見ていない方は下のリンクから前回の記事も併せてご覧下さい (^o^)

Fast 3Dとは?

前回の記事の復習になりますが、CANONの「Fast 3D」とは、k-spaceの充填方法を効率化することで、3D収集の撮像時間を短縮する技術であり、撮像を効率的に行うことで撮像時間が短縮されます。最大で従来のおよそ1/2の時間で撮像可能となり、適用部位に制限はなく、全身に使用可能な高速撮像技術です。

そして、k-spaceを効率よく充填する方法には「Multiple」と「Wheel」という2種類の異なる充填方法が使用でき、前回の記事では「Wheel」について詳しく解説しました。今回の第2弾では「Multiple」について解説と臨床での使い方を解説していきます ☆彡

Multipleとは?

従来の方法では、データをk-spaceへ充填する時、1TRで1スライスエンコードの充填が行われるのですが、Multipleでは、1TRで並行する2つのスライスエンコードをジグザグに収集することで、k-spaceの充填時間を2倍速にしています。さらに、Asymmetric Fourier Imaging(AFI)を併用しているので、よりk-space充填時間は短くなりますね!

「Multiple」はT2強調画像やFLAIRなどの画像種に適しているとのことなので、今回は3D Multi Planar Voxel(MPV) FLAIRと3D MPV MRCPの臨床応用について考察していきます!

MPVというのはCANON装置特有の名称で、一般的には3D variable Flip Angleシーケンスとして知られている画像です m(_ _)m

Fast 3D Multipleの実際 ~画質はどう変化する?~

いくら高速化されても、MPRを作成したときに画像がボケる、あるいはコントラストが低下するような画質劣化があっては臨床では使えないないですよね。ということで色々パラメータを変化させて最適なFast 3Dの設定値を検討しました (^_^)v

Fast 3D Multiple(以下Multiple)を使用せずに撮像した3D MPV 脂肪抑制FLAIRと、Multipleを用いた画像、Multiple + AFIを用いた画像の3種類を比較します。まずはSagittalの元画像をご覧下さい。

Fast 3Dを用いていない画像とMultipleの画像では分解能・コントラスト共に視覚的には大きな差はないですね。一方で、Multiple + AFIを用いた画像では分解能の低下とノイズが目立っていることがわかります。

脳梁周囲を拡大した画像とReformatのAxial画像を確認するとよりわかりやすくなります。

Multiple + AFIの画像で、橋周囲を見てみるとノイズが目立ち、分解能の低下によって小脳の辺縁はややボケている印象ですね。一方でFast 3Dを用いていない画像とMultipleの画像ではノイズ、分解能、コントラストに視覚的には明らかな差がありません!

この様に、Fast 3Dを用いない場合の撮像時間は9分であるのに対し、Multipleを用いる事で明らかな画質の低下が起こることなく4分35秒にまで高速化する事が出来ました。Multiple + AFIを用いる事で3分にまで高速化が可能ですが、画質の低下が起こることを理解した上で使用する必要があります。

Wheelと違い、AFIを使用する割合を調整できないのが残念ですが、この画像からはMultiple単体で高速化するのが臨床では使いやすそうですね!

なんだ、大したことないじゃないか、、、と思われたかもしれませんが、3D脂肪抑制FLAIRはMRI脳表撮像法(surface anatomy scan:SAS)に使われることもあります。そこで先程の3D MPV FLAIRの画像をSASで比較してみます。

SASはVolume Renderingを作成し、MRVとフュージョンすることで、手術支援画像として用いられたりします。今回は、SAS単体で見て頂きたいのでMRVとのフュージョンはしていませんが、Fast 3Dを用いていない画像とMultipleの画像、Multiple + AFIのSAS画像に大きな差がないことがわかります。

この様に、目的によっては、Multiple + AFIを用いて撮像する事でさらに高速撮像が可能となります。

今回撮像した3D MPV FLAIRの撮像条件も載せておきますので、ご参考になれば嬉しいです!

Fast 3D Multipleの真骨頂

現時点で、私が臨床で一番使えるな!と感じているFast 3D Multipleは息止め3D MRCPです (*^O^*)
息止めは出来るけど、呼吸間隔が不安定で呼吸同期で上手く撮れない場合など、息止めで撮像したい時ってありますよね?
こちらの画像は、ボースデルを使用していないので腸管の信号がやや邪魔ですが、呼吸同期が上手くいかないと診断には全く役に立たない画像になってしまう事がわかります(;´Д`)

こんな時に必ず私が使用しているのが、Fast 3D Multipleを併用した息止め3D MRCPです!これならば呼吸間隔が不安定でも、息止めが出来れば綺麗に撮像することができます。

もちろん呼吸同期で綺麗に撮れた3D MRCPと比較すると若干の分解能低下はあるものの、Multipleを用いて息止め撮像した3D MRCPは、臨床でも十分使用可能な画質だと思います!従って、私は呼吸同期の画像がダメダメだった場合、迷わず息止め3D MRCPを追加撮像しています(^o^)

このように、新しい高速撮像技術であるFast 3Dは、工夫することでかなり幅広い検査に対して臨床応用が出来そうです!

色々と試してみて下さい (^o^)

Let’s enjoy MRI !!

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Hori Hiroki宮前平脳神経外科クリニック

投稿者プロフィール

約20年間GEユーザーとして活動していましたが、2024年よりCANONデビューしました!!
CANONのMRI情報をメインに情報発信するのでよろしくお願いします (^_^)v

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