AIRS MEDICAL社のSwiftMRの検証② 東名古屋画像診断クリニック

MRIfan.netの読者の皆さまはじめまして、東名古屋画像診断クリニックの山室 修と申します。
当院は愛知県を中心とした医療グループ(他岐阜、三重、静岡、長野、埼玉、東京)の一つで、画像診断を中心に行う施設です。名古屋市の東部にあり、近隣にはバンテリンドームや東山動植物園があります。
当院の主な機器はPET-CT 3台、乳房専用PET 1台、CT 1台、MRI 2台、超音波検査装置 2台、マンモグラフィー 1台、一般撮影、骨塩定量検査装置 1台になります。その中でMRIは古く、1.5TはGEのHDxt Ver.23、3.0TもGEのHDxt Ver.23となっております。一つ一つのシーケンスが長いため患者さんの拘束時間も長くなり、それに伴い稼働率も100%近くになっています。
機器の更新はまだまだ先となりそうなのですが、そんな中、ノイズ低減と高分解能化が可能なAIRS Medical社のSwiftMRTMを1か月間使用する機会がありました。デモ初日に普段使用しているプロトコルの条件をもとに、時間短縮したプロトコルを組んでいただきました。その後テストスキャンを重ね、SwiftMRTMの効果は1.5Tの方がメリットを感じたため、デモプロトコルを変更し、もう一段階踏み込んだ短縮条件を組みました。以下がデモを行ったプロトコルの一部と時間短縮の割合になります。「Original」が当院のプロトコルで、「SwiftMRTM」が短縮したプロトコルです。(Table.1)

SwiftMRTMの詳細については、過去のITEM 2024レポート以前の検証記事もご参照ください。

Figure. 1 頭部MRA
同じボランティアの3.0Tと1.5TにおけるMRAの比較です。(a)は1.5Tで通常撮像しているMRAのMIP像、(b)は3.0Tで撮像しているMRAのMIP像、(c)はSwiftMRTM用に時間短縮して1.5Tで撮像したMRAのMIP像、(d)は(c)にSwiftMRTM処理をしたMIP像です。スライドでは分かりにくいかもしれませんがノイズの低減と空間分解能の向上がみられます。 (b)と比較しても遜色ないか、(3.0Tの撮像時間よりも)時間短縮をしていることを考慮すれば十分な効果が得られていると思います。

Figure. 2 頭部MRA(歯科矯正あり)
こちらは歯科矯正がある方のMRAです。(a)(b)(c)はそれぞれの元データを示しており、磁化率の影響がみられます。(d)は当院で通常撮像しているMRAのMIP像、(e) SwiftMRTM用に時間短縮して撮像したMRAのMIP像、(f)は(e)にSwiftMRTM処理をしたMIP画像です。こちらも末梢の描出能の向上がみられます。これは最短TE(位相分散による信号低下の抑制)の他に、時間短縮パラメータ調整でバンド幅を広げることによる磁化率アーチファクトの低減効果も良い影響をもたらしていると考え、それによるSNRの低下をSwiftMRTMによるノイズ低減と高分解能化が補っての結果であると思います。

Figure. 3、4、5 頭部MRI 2D
こちらに2Dの画像を示します。FLAIRは時間短縮のパラメータ調整に限界があったため、高分解能の方向で調整しました。それぞれオリジナルに近いかそれ以上の画質向上がみられました。

ここからは、時間短縮によるSwiftMRTMの効果ではなく、スライス厚を薄く設定した場合のSwiftMRTMの効果を検証しました。

Figure. 6 膝関節
当院では通常3.5mm厚のsliceで撮像していますが、2.0~2.5mmで設定しました。それにより撮像枚数も増加していますが、撮像時間は今までと変わらない設定にしています。

Figure. 7 腰椎
こちらは2.0~3.0mm sliceです。脂肪抑制画像のS/N改善効果は顕著です。

Figure. 8 手指
1.5~2.0mm slice。薄いスライスのため脂肪抑制においてS/Nの低下が顕著ですが、SwiftMRTMでカバーできています。

Figure. 9 足
2.0~2.5mm slice。

当院にはワークステーション搭載型のノイズ低減処理ソフト(iNoirMR)があるため、SwiftMRTMとのノイズ低減レベルの違いの評価として、簡易的にSD値と分解能の比較を行いました。
SwiftMRTMはデノイズレベルを0~8段階で設定することが可能です(設置時に撮像プロトコルを検討し、それにあわせてSwiftMRTMのデノイズレベル等を設定)。Figure. 10 に可変させた画像を示します。


Figure. 11 はiNoirMRのデノイズレベルを0~100%まで変化させた画像です。明らかにSwiftMRTMのノイズ低減が優れていることがわかります。

Table. 2にSD値を比較したグラフを示します。iNoirMRは緩やかでリニアに低下しましたが、SwiftMRTMは初期に急峻なカーブを描き低下し、iNoirMRと比較してノイズ低減のレベルと低減率の設定が大きく異なることがわかります。

Table. 3に各ソフトのデノイズレベルを変化させた画像の脊髄部分のプロファイルカーブを示します。

分解能に関して、iNoirMRは処理度合いを上げるに従いコントラストによっては傾きが弱くなっています。SwiftMRTMでは、一部分解能の向上がみられますが、コントラストが密の部分はノイズ低減処理レベルの増加による分解能の低下があります。しかし、視覚上はiNoirMRほどのボケ感はありませんでした。これはSwiftMRTMの特長の一つである超解像技術による高分解能化(512→1024)の効果によると考えます。Figure. 12に2.0倍に拡大した腰椎のT2W AXの画像を示します。超解像技術の効果により、拡大してもピクセルのボケが低減しているのがわかります。

今回のデモは、頭部、脊椎、四肢・関節で行ったため、他部位でのノイズ低減や高分解能化のよる画質評価はできておりません。また元画像の描出能が著しく悪いS/Nが低下した極端な短縮プロトコルでは、いくらSwiftMRTMでも画質の担保は望めないのではと思います。
総合的にデモによる結果からは、当院のような機器においてデメリットは感じられず、脂肪抑制によるS/N低下への効果や頭部MRAへのメリットが特に大きいと感じました。

Chief Editor’s comments

話題のSwiftMRの使用例について、さまざまな画像で検証をしてくださいました。多くの例で、画質が向上したと感じられる画像が得られていると思います。一方、辛口にみると、Fig.6の (d) 膝窩部大腿骨背側の脂肪織内、微細静脈の描出(chemical shiftにより多数が見えている)が不良になっています。AIの判断としてノイズとされるもののなかに、必要な情報が含まれると情報が減ることがわかります。使用することにより診断能が上がるのかどうか(上がるとしたらその頻度がどのくらいか)も含めて今後検討が必要だと思われます。しかしかなり細かい撮影の数々をありがとうございました。

ライター紹介

偕行会グループ 東名古屋画像診断クリニックの山室 修(やまむろ おさむ)と申します。技師歴は30年を越え、そのなかでMRIに携わるようになって17年目を迎えました。MRIに限らず画像診断技術は常に進歩しており、その情報のキャッチアップは大変ですが楽しいと感じております。若いスタッフに刺激をもらいながら、まだまだ進歩していきたいと思います。

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Takahashi Mitsuyuki国家公務員共済組合連合会横浜栄共済病院放射線技術科

投稿者プロフィール

診療放射線技師歴はなんと37年となりました。技師人生も最終章ですね。現在は病院の技師長職を行っています。お昼の食事交代にMRI業務をおこなっています。まだまだ現役ばりばりばりです(笑)。宜しくお願いします。

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