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★「転移性脳腫瘍」検査で役立つ撮像法と画像再構成時のワンポイントアドバイス
- 2025/8/15
- BLOG, Philips, ミニレクチャー, 撮像のワンポイントアドバイス
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<新企画>「撮像のワンポイントアドバイス」
★〜★★★までの難易度を設定し、MRIにおける基本的な注意点や撮像のポイントなどをまとめていくコンテンツです。初学者の方やローテーターの方など是非ご一読ください!
今回の「撮像のワンポイントアドバイス」の難易度は★ひとつです。
YouTubeショート動画もご覧ください:https://www.youtube.com/shorts/WajSfIm62rs?feature=share
つくばセントラル病院の内海と申します(使用装置:PHILIPS Ingenia 3.0T)。
日々の臨床で転移性脳腫瘍の造影検査を依頼された際、造影後T1WIのGREシーケンスを撮像することがあると思います。転移性脳腫瘍における脳転移の数は予後を決定する重要な因子であり1,2)、治療戦略においても重要です。しかし、病変が血管の高信号と重なってみづらかった経験はないでしょうか?
皆さんの施設では、T1WI GREシーケンスに追加または代替シーケンスとして「3D Variable Refocusing Flip Angle(VRFA)-TSE」を利用したT1WIを撮像していますか?
T1WI 3D VRFA TSEについて
まず、VRFAとは、高速SE法の再収束フリップ角(RFA)を連続的に可変する方法です。RFAを下げることで、SAR(比吸収率)の低減、T1コントラストの強調、血流の位相分散が促進されBlack Blood(BB)効果が得られます。さらにAnti DRIVEを付加することでT1コントラストをさらに強めることが可能となります3)(Fig.1)。
T1WI 3D VRFA TSE とMotion-Sensitized Driven Equilibrium (MSDE)の併用
MSDEは、DWIと同様の原理で血液などFlowがある信号を位相分散させて抑制し、BBに描出するプリパルスです。T1WI 3D VRFA TSEにMSDEを併用することで、より血流信号を抑制した画像が得られます。
また、MSDEを応用した方法としてimproved Motion-Sensitized Driven Equilibrium(iMSDE)があります (Fig.2)。iMSDEはB0、B1不均一の影響を受け難く、かつ渦電流の影響を抑えることでムラやSNRの低下を最小限にすることを可能としたプリパルスになります。
MSDEの血流抑制の強さはVenc(Velocity encoding)の設定で決められます。Vencの設定を低い値にするほど遅い血流まで強く抑制されます(Fig.3)。
T1WI GREとT1WI 3D VRFA TSE + MSDEの比較
造影後T1WI GREの撮像では腫瘍以外の血管等も高信号になります。しかし、T1WI 3D VRFA TSE + MSDEで撮像した画像は、血流信号を抑えることで造影された腫瘍をより明瞭に描出することが可能となります(Fig.4)4)。
画像再構成時のポイント
T1WI 3D VRFA TSE + MSDEで撮像した画像を再構成します。その際、当院では通常のMPR作成ではなく、「Parallel MIP」で作成しています。
MIP 再構成により病変の視認性が向上し、3mm以下の小さな病変の評価でも高い検出能を示したという報告があります4,5)。MIP 3D-GRE(C)では、血管により病変が隠れてしまっていますが、non-MIP(B)およびMIP iMSDE(D)では病変が明瞭に観察されています(Fig.5) 4)。
また、再構成によるスラブ厚5mmを超えると偽陽性所見が増え、5mm未満であれば読影時間が短縮されるという報告があります4)。当院では、パーシャルボリュームの影響による偽陽性所見を減らし、また微小病変の描出等を考慮し、スラブ厚2mmで再構成しています。
画像としては、腫瘍の「あり」「なし」が一目で分かり、診断精度の向上と読影時間の短縮6,7) が期待できます。
おわりに
今回は「転移性脳腫瘍」検査で役立つシーケンスとして「T1WI 3D VRFA TSE + MSDE」の撮像法をご紹介させていただきました。
この撮像法とParallel MIPの画像は、当院の放射線科医および臨床医から良い評価をいただいております。
皆様も試してみてはいかがでしょうか?
臨床での皆様の一助となれば幸いです。
1)Nussbaum ES, Djalilian HR, Cho KH, Hall WA. Brain metastases. Histology, multiplicity, surgery, and survival. Cancer 1996;78:1781–1788.
2)Chang WS, Kim HY, Chang JW, Park YG, Chang JH. Analysis of radiosurgical results in patients with brain metastases according to the number of brain lesions: is stereotactic radiosurgery effective for multiple brain metastases? J Neurosurg 2010;113 Suppl:73–78.
3)高原太郎 , MRI応用自在 第4版 , メジカルビュー社 , 2021 , p93
4)Yun Jung Bae, et al, Efficacy of Maximum Intensity Projection of Contrast-Enhanced 3D Turbo-Spin Echo Imaging with Improved Motion-Sensitized Driven-Equilibrium Preparation in the Detection of Brain Metastases, Korean J Radiol. 2017 Jul-Aug;18(4):699-709. English.
5)Blanche B, et al, Post-contrast 3D T1-weighted TSE MR sequences (SPACE, CUBE, VISTA/BRAINVIEW, isoFSE, 3D MVOX): Technical aspects and clinical applications , Journal of Neuroradiology 2020 ; 7, 5, September 2020, Pages 358-368
6)Nagao E, et al. Motion-Sensitized Driven-Equilibrium (MSDE) Turbo Spin-Echo Sequence Increases Radiologists’ Diagnostic Performance in Detection of Brain Metastasis. ISMRM 2010
7)Nagao E, et al. 3D turbo spin-echo sequence with motion-sensitized driven-equilibrium preparation for detection of brain metastases on 3T MR imaging. AJNR Am J Neuroradiol 2011;32:664–670.
自己紹介
つくばセントラル病院 内海 雄一(ウチウミ ユウイチ)
MRI検査に携わって10年になります。日々の検査や勉強をしていく中で、いつのまにかMRIの魅力にはまっていました。学ぶたびに新たな発見があり、毎回無知な自分に気づかされると同時にMRIの可能性に魅了されています。MRIを通じて多くの方々と情報共有できたら嬉しいです。
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