脳腫瘍術前検査はultra-short TEシーケンス(PETRA)におまかせ

はじめに

皆様はじめまして。山口県の宇部興産中央病院で勤務をしております真野と申します。この度、執筆の機会を頂きましたので、僭越ではありますがultra-short TEシーケンスを活用した脳腫瘍術前検査についてご紹介させていただきます。

【ultra-short TEシーケンス;PETRAとは?】

ultra-short TEシーケンスは、FID信号をダイレクトにデータ収集するため極端に短いTEでの取得(μsec)が可能です。また傾斜磁場を緩やかに変動させているため、検査音が小さくSilent(静音)シーケンスとも呼ばれています。

もう一つの特徴は、k-spaceの充填方法です。中心から外側へウニの棘のように放射状(Radial)に充填し、更にSiemens社のPETRAでは、放射状では充填しきれないk-space中心部を別途サンプリング(point-wise)することで、SNR向上を図っています(Fig.1)。

放射状のウニの棘の数(パラメーター名;Radial views)は画質に影響を与える重要なパラメーターのため、後述します。

Fig.1 IRを併用したPETRAのパルスシーケンス

【PETRAの一般的な活用方法】

本シーケンスの一番メジャーな活用法は、脳血管治療後のMRAです。TEが極端に短いため、位相分散の影響を抑え、ステントやコイル等の症例において金属アーチファクトの少ない良好なMRA画像を取得できます1,2)

また最近では、T2値の短い組織の描出目的としてBone imagingにも用いられています3)

【造影頭部3D撮像への応用】

脳腫瘍精査目的で用いる3Dシーケンスは、SPACE(variable FA 3D-TSE)やMPRAGE(IR併用3D-GRE)等が代表的で、MPRAGEは脳腫瘍イメージングプロトコールでのコンセンサスが得られており、脳腫瘍術前検査において有効性が示されています4)
一方で、MPRAGEはSPACEと比べ、脳皮髄コントラストに優れているもののSNRが低く、磁化率アーチファクトの発生がウィークポイントとしてあげられます。

そこで、ここからが本題です。

MPRAGEの欠点を克服する目的としてPETRAに着目し、PETRAにIRパルスを併用する(Fig.1)ことでMPRAGEと同様に脳皮髄コントラストを増強させつつ、歪みの少ない(磁化率アーチファクトに強い)画像を取得することが可能となります。副鼻腔近傍の腫瘍や、術後の金属プレート周辺の腫瘍再発の存在診断にも有用です(Fig.2)。

Fig.2 髄膜腫再発症例 – MPRAGEとPETRAの臨床画像 –

ファントムを用いたPETRAの至適条件(Radial views;RV)の検討を行いましたので、その結果をFig.3、4に示します。
※Radial views(RV):k-spaceのSpoke数(ウニの棘の数)

Fig.3 Radial views(RV)とSNR の関係 – ファントム実験 –
Fig.4 Radial views(RV)と鮮鋭性の関係(ファントム画像) – ファントム実験 –

Radial views(RV)が高いほど鮮鋭性が高くなり、SNRもある程度維持します。よって、IR併用PETRAのRV値を最適化することで、MPRAGEのSNRを克服しつつ鮮鋭性を向上させることができ、磁化率に強い高画質な3D撮像が可能となります5)。但し、撮像時間も延長するので注意が必要です。

本シーケンスを用いることで、術前の画像診断だけでなく、術中ナビゲーションや定位放射線治療のプランニングへの活用にも役立ちます。術中ナビゲーションでは、MPRAGEにおいて副鼻腔による鼻根部の磁化率アーチファクトによりMRI画像と実患者の不一致(ミスレジ)を生じることがありますが、PETRAではそのような心配はありません(Fig.5)。

Fig.5 ナビゲーションで使用するMPRAGEとPETRAの比較

【最後に】

最後までご拝読いただきありがとうございました。本内容が、皆様のお役に立てれば幸いです。

【Reference】

1) Zhang F, Ran Y, Zhu M, et al. The use of pointwise encoding time reduction with radial acquisition MRA to assess middle ce- rebral artery stenosis ore- and post-stent angioplasty: compari- son with 3D time-of-flight MRA and DSA. Front Cardiovasc Med 2021; 8: 739332.

2) Nishikawa A, Kakizawa Y, Wada N, et al. Usefulness of point- wise encoding time reduction with radial acquisition and sub- traction-based magnetic resonance angiography after cerebral aneurysm clipping. World Neurosurg 2021; 9: 100096.

3) Cheng Li, Jeremy F Magland, Xia Zhao, et al. Selective in vivo bone imaging with long-T2 suppressed PETRA MRI. Magn Reson Med.2017;77(3):989-97.

4) Ellingson BM, Bendszus M, Boxerman J, et al. Consensus recommendations for a standardized brain tumor imaging protocol in clinical trials. Neuro-oncol 2015; 17(9): 1188–1198.

5) Mano S. Evaluation of Enhanced 3D Brain Image Using Ultrashort TE Sequence with Inversion Recovery for Preoperative Examination of Brain Tumor: Phantom Study Compared with MPRAGE. JSRT.2022;79(1):52-61.

【ライター紹介】

宇部興産中央病院 真野 忍(まの しのぶ)

現在、ほぼすべてのモダリティに従事しており、ローテーションの一環としてMRI業務に携わっています。MRIは、撮像技術によって医療への貢献度に大きく影響するモダリティの一つであり、日々働き甲斐を感じております。
皆様から得た知識・技術を患者さんへ還元することをモットーに業務に励んでいまきますので、今後とも勉強させてください。

fig.6 著者近影
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吉村 祐樹岡山済生会総合病院 放射線技術科

投稿者プロフィール

DWIとパラメータをいじることが好きです。MRIという名のテレビゲームをひたすら毎日やっている感覚です。このゲームは一生クリアできそうにありませんが、真摯にMRIに向き合っていきたいと思います。

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