マグネットネイル・ジェルネイル装着者へのMRI検査対応例 – アルミで守るネイルと肌:MRI現場の工夫例

高原クリニック イノベーティブスキャンの諸田智章です。

【ネイル付きMRI検査の現状】

近年、マグネットネイルや金属成分を含むジェルネイルをしたままMRI検査を希望される受診者が増えています。
しかし、これらはRF加熱やアーチファクトの原因になる可能性があり、基本的には除去を推奨しています。
一方で、ネイルの除去が難しい・したくないという方も多く、現場で対応に悩むケースもあります。
そこで本記事では、医療用手袋とアルミホイルを使った簡易的な保護方法を紹介します。


この方法は、当院の高原院長が経験した実例をもとに、現代の運用に合わせて改良したものです。
これは、安全性や画質に配慮した上で、やむを得ない場面での“ひとつの工夫”として試行するものです。

Fig.1 アルミホイルと医療用手袋による簡易的な保護の様子

【保護方法の手順】

・まず皮膚とアルミを絶縁するため、ニトリル製の医療用手袋を装着(大きいサイズが良い)
・指先にアルミを軽く添える(密着・一周しない・端を重ねない)
・最後に手袋の手首を折り返してアルミを包み込むように保護

ポイントは、

・アルミが輪状構造を形成しない
・アルミが皮膚に直接触れない
・RF誘導電流のループ化を防ぐ
という3点です。

Fig.2 アルミを巻いたファントム画像

アルミを巻いたファントムを撮像したところ、アルミを当てた部分は信号が落ちるものの、周囲への影響(アーチファクトの波及)は見られませんでした。

Fig.3 アルミを巻いた体幹部MRI画像

実際に、体幹部MRI撮像でも、指先にアルミ保護を行った状態で画質に大きな影響はなく、診断可能な画像が得られました。
ただし、熱感や不快感などの訴えがないことを確認した上で検査を継続しています。

【注意点と限界】

この方法は、あくまで対応の一例であり、すべてのケースに安全性や画質保証ができるものではありません。
また、熱や皮膚温・SNRなどの数値的測定は行っておらず、「効果的かもしれない」と判断された臨床的工夫の紹介にとどまります。
検査中は違和感があれば中止し、状態を確認すること、被検者への事前説明と同意が必須です。実施に際しては、MRI装置の仕様、安全基準、被検者の状態を十分に考慮し、施設責任のもと慎重に判断してください。

【まとめ】

マグネットネイルやジェルネイルを装着したままMRI検査を希望される受診者に対し、どうしても除去が難しい、あるいは除去を望まないというケースがあります。
本稿でご紹介した方法は、そうした状況における一つの実践例であり、保護策としての可能性を持ちます。

もちろん、すべてのケースに適用できるわけではなく、安全性と画質の確認を十分に行ったうえでの限定的な運用が前提です。
今回ご紹介した方法は、あくまでプロトタイプ的な試行であり、今後さらに良い方法や工夫があるかもしれません。
もし同様の取り組みや改善案があれば、ぜひ共有し合いながら、現場の知見として高めていけたら嬉しく思います。MRI現場での小さな工夫の一例として、ご参考になれば幸いです。

【装着手順の動画はこちら】

最後に、実際の保護方法の流れを動画でまとめました。アルミホイルと医療用手袋の装着手順の参考としてご覧ください。

動画リンク:https://www.youtube.com/shorts/hFvyqAwIIjE?feature=share

ジェルネイル(マグネットネイル)にアルミホイルを被せる方法
Fig.4 高原クリニック イノベーティブスキャンのMRI検査室 (筆者:右から3番目)

【技師募集】

当クリニックでは、2026年1月からの勤務が可能な、
MRI大好き診療放射線技師を募集しています。
応募は以下にお願いします。
https://form.os7.biz/f/495e9976/

待遇:常勤の場合、「前年の源泉徴収票・給与明細ベース」以上を保証します(昇給します)。詳細はお問い合わせください。

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Fumio Ishimori医療法人聖麗会 聖麗メモリアル病院 放射線科

投稿者プロフィール

茨城県北の脳外科専門病院にMR専従技師として勤務しています(GEユーザーです)。また都内の脳外科クリニックに月2回ペースで勤務しています(キヤノンユーザーでもあります)。猫を多頭飼いしてます。

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