大雄会第一病院の伊藤祐介です。今回の記事はT1強調画像の撮像法についてあらためて考えてみたいと思います。
T1強調画像の主流はFSE?
皆様の施設ではT1強調画像はどんなシーケンスで撮像していますか? 頭部に関してはSpin Echo法(SE)で撮像している施設がほとんどかと思いますが、それ以外の部位では、Fast Spin Echo法(FSE)で撮像している施設が多いのではないでしょうか。
頭部でSEが採用されているのは、FSEと比較してコントラスト分解能が高いからです。一方で、それ以外の部位でFSEが採用されている理由は、SEよりも短時間撮像ができることです。
では、頭部以外の部位をSEで撮像することにメリットはないのでしょうか? 再考してみたいと思います。
T1強調画像はあくまで「強調」像
図1は、画像コントラストをシミュレーションできるweb siteを用いてT1強調画像をシミュレーションしたものです。仮にTRを500ms、TEを10msにすると、T1強調の要素は41%、T2強調の要素は5%で、最も多いのはプロトン強調の要素となっています。前述の web site にアクセスして頂き、みなさんもシミュレーションして頂いたらご理解頂けるかと思います。
T2強調画像やプロトン密度強調画像は、教科書通りのTRとTEを入力するとそれぞれT2要素、プロトン要素の割合を大きくすることができます。一方で、T1強調画像は図1のように、とても曖昧なコントラストであることが理解できるかと思います。
アーチファクト軽減のためのSpin Echoという選択
T1強調FSEの画像を劣化させてしまう要因の1つに、flowによるアーチファクトが挙げられます。FSEはみなさんご存知の通り、180度再収束パルスを繰り返して照射し、SE信号を複数取得する方法です。FSEでは取得する順番によってTEが変わりますので、後ろの方で取得した信号はTEの長い状態です。この状態ですと、T2強調要素が入り込みやすくなり、血液や脳脊髄液のような水成分が高信号になるためにflowの影響を受けやすくなります。
次にSEを考えてみます。SEではTEは単一であるため、当然ながら設定TEより長いTEが入り込むことはありません。つまり、FSEに比べてT2強調要素が入り込みにくく、flowアーチファクトの影響を軽減できるのではないかと思います。では、実際の臨床画像で仮説を検証していきます。
実際の画像でFSEとSEを比較
図2は頸椎のsagittal画像です。FSEでは脊髄腔の中に高信号の縦線が見えており、C6/7レベルの頸髄が屈曲している部分にも見られます。一方、SEではそのような高信号の部分はありません。
図3は頸椎のaxial画像ですが、FSEでは脳脊髄液の信号が上昇しているのに対し、SEでは正しく低信号として描出されています。
これらのflowに由来するであろうアーチファクトが、SEで撮像することにより軽減できた症例を経験したのでご紹介します。
図4は女性骨盤のaxial画像です。FSEでは子宮筋腫に血管のゴーストアーチファクトが重なっていますが、SEではアーチファクトが軽減されています。なお、図2〜4の画像は、FSEとSEでTRやTEなどは変化させていません。
撮像時間が長くなることへの対策
T1強調画像をSEで撮像することでアーチファクトが軽減できた例を紹介しましたが、当然ながらSEはFSEに比べて撮像時間が長くなります。今回の画像は、富士フイルムヘルスケア社の1.5T-MRI装置で撮像していますが、富士の装置ではSEで高速撮像技術であるparallel imaging(PI)を使用できますので、撮像時間を短縮することが可能です。今回の比較も、FSEと近い撮像時間になるようにSEの撮像時間を調節しています。
私自身、まだ全ての部位で試したわけではありませんので、他にもより有用なケースがあるかもしれません。今後も様々なケースで試してみたいと思います。以上、閲覧いただきありがとうございました。
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