皆様のご施設では足首専用コイルをお持ちでしょうか?
足部MRI検査といえば、骨病変や靭帯損傷など整形外科領域での検査がまず思い浮かぶのではないでしょうか?当院では上記に加え、心臓血管外科医から糖尿病の足病変に対する骨髄炎検索を目的とした検査依頼も多いです。当院はFoot coilを導入していますが、足部腫脹、潰瘍形成による痛み、姿勢保持が難しいなど、さまざまな要因によりFoot coilを使用できないことがあります。その場合はHead coilやFlex coilを使うことになりますが、今回はもう一工夫して撮像することのメリットについて記載します。
Dual coil(Head-coil+Flex coil)の提案
従来、単独使用してきた二つのコイルを組み合わせて撮像(Fig.1)するとSNRはどうなるのでしょうか? つまりFlex coilを足部に巻いた状態でHead coilに足を入れ、両方のコイルエレメントをONにした状態で撮像をします。
Fig.1 Dual coil 概要
Fig.2にFoot coil、Head coil、Dual coil3種類のSNRの測定結果を示します。Dual coilで撮像するとFoot coilにはかないませんが、Head coil単独使用よりもSNRが有意に高い事がわかります。
Fig.2 各コイルにおけるSNR測定
脂肪抑制効果はどうなる?
骨髄炎検索において脂肪抑制併用T2強調画像は非常に重要な情報となります。Dual coilでSNRが良いことはわかりましたが、コイル同士の信号が干渉して脂肪抑制ムラなど発生しそうではありませんか?今回は、あえて周波数選択的脂肪抑制法を用いた検討を行ってみました。撮像対象としてのファントムは、解剖学的に足のように入り組んだ構造・骨・脂肪を含む必要があると考え、豚足を使用しました。豚足をCTで撮影しVR表示したもの、T2WI、脂肪抑制T2WIのAxialをFig.3に示します。
Fig.3 豚足(VR表示) 、T2WI、脂肪抑制T2WI
今回の記事では視覚評価の部分は割愛しますが、脂肪抑制効果が最も悪いスライス・最も良いスライスについて脂肪抑制前後での骨信号・脂肪信号の信号低減率を式1、2より算出しました。
信号低減率Bone(%) = (SIT2Bone – SIT2Fs Bone) / SIT2Bone ×100・・・式1
信号低減率Fat(%) = (SIT2Fat – SIT2Fs Fat) / SIT2Fat ×100 ・・・式2
視覚評価が良好なスライスの信号低減率は、Foot coil、Head coil、Dual coilそれぞれ脂肪:86.0%、95.8%、95.7%、骨:81.6%、79.9%、81.8%となり、各コイルで脂肪、骨ともに大きな差は認めませんでした。一方、視覚評価が悪いスライスではFoot coil、Head coil、Dual coilそれぞれ脂肪:56.5%、95.6%、95.5%、骨:55.5%、58.5%、57.3%となり、脂肪部分においてHead coil、Dual coilで脂肪抑制効果が良好な結果となりました。これは、Head coil、Dual coilでの撮像時には、豚足を静磁場に対し直線性を保つような配置としたことが影響している1)ことも考えられます。
少しの工夫が臨床画像を変えることも?
糖尿病足病変における骨髄炎検索では、T1WIと均一な脂肪抑制T2WIが重要となります。今回の検討ではあえて周波数選択的脂肪抑制法を用いましたが、実臨床ではSTIRでの撮像が少なくても1断面必要とされています2)。つまりSNRに余裕がある手法であれば、必要以上に分解能を落とすなどといったSNRを担保する際に発生するトレードオフを最小限に抑えて撮像することが可能となります。足専用コイルを所有していない施設は多くあるかと思いますので、今回の情報が足部MRIにおいてコイルを選択する際の一つの手法として、少しでも皆様のお役に立てば幸いです。
足を守ることの大切さ
今後も世界的に糖尿病患者は増加することがInternational diabetes federationのデータからも予想されています。また、足の切断範囲が増えれば歩行維持率も低下し、結果として致死的疾患に罹患しやすくなることがわかっています。足の切断範囲を決定する上で画像診断が全てではありませんが、骨髄炎の有無は治療方針を決定する上で重要な情報となります。近年フットケアという言葉が広く知られていますが、我々が提供する画像もその一助になるはずです。
<参考文献>
1)薄井 裕美, 他. 足関節MRI撮像におけるポジショニングによる脂肪抑制効果の検討.日本診療放射線技師会誌, 66 (5) 2019
2)福田健志, 画像所見からみた足底痛をきたす疾患. MB Orthopaedics36(3), 2023.
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