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★「音も重要なパラメータ!静音シーケンスを活用しよう」
- 2025/1/17
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<新企画>「撮像のワンポイントアドバイス」
★~★★★までの難易度を設定し、MRIにおける基本的な注意点や撮像のポイントなどをまとめていくコンテンツです。初学者の方やローテーターの方など是非ご一読ください!
今回の「撮像のワンポイントアドバイス」の難易度は★ひとつです。
国立成育医療研究センターの染森太三です。
小児への具体的なワンポイントアドバイスとして、SiemensのQuietを例に「静音シーケンス」についてお話します。
ご存じの通り、MRI検査には大きな音が付き物です。「鎮静検査中、音で覚醒してしまった」「音が大きくびっくりして泣いてしまった」という状況を経験された方も多いでしょう。小児や音に敏感な方への負担軽減として静音シーケンスがありますので、その有効的な場面を考えてみましょう。
静音シーケンスの有効活用
例えば、初めに撮像するLocalizer。Siemensプリセットの頭部Localizer「AAH scout」は中々の音量です。
中身は3D-GREシーケンスです。3D-GREシーケンスにQuietを適用し、静音シーケンスで代替できますので、当院ではLocalizerはQuietを適用した2D or 3D-GREに置き換えています。
これだけで子ども達が鎮静から起きてしまう、覚醒でびっくりして嫌になってしまうリスクを低減できませんか?不安の強い子ども達の覚醒検査では、静音シーケンスで、徐々に音が大きくなるような組み立てをした方が、MRI検査室の環境に慣れやすく、失敗しにくいと思いませんか?
静音化のパラメータ調整
静音に変更できるシーケンスは、Acoustic Noise Reduction(以下ANR)をonにすることでQuietモードとなり、prescanも静音化されます。ここまではどの静音化できるシーケンスも同じですが、この先の調整はSE、GRE、TSEシーケンスによって異なります。
① SEシーケンス
ANR-offでもRF pulse typeとGradient Modeを下げることで音量は下がりますが、ANR-onにするとより効果的に静音化されます。最短TR&TEより設定TR&TEを延長することで、僅かですが更に静音化することが可能です。
しかし、設定に幅があるシーケンスではないので、現実的な範囲で大きく静音化することは難しいのが現状です。
② GREシーケンス
ANR-onでは、SEシーケンスと異なりRF pulse typeとGradient Modeを強くすることで、最短TR&TEを小さくし、設定TR&TEに余裕を作ることでより静音化されます。つまり、最短TR&TEを短くするような設定が有効ということです。
具体的には、TEを短くできる設定として、
・RF pulse type、Gradient Mode → fast
・Asymmetric Echo → on
・Bandwidthを広げる(SE、TSEも有効)
また3Dでは
・Excitation → non-sel.
・Flow Compensation → None
にすることも有効です。
③ TSEシーケンス
ANR-on、Echo Spacingに☑を入れ、最短の値より少なくとも+1.0程度の値に設定すると効果的に静音化され、更に長い値を入れるとより静音化されます。
加えてSEシーケンスと同様にRF pulse typeとGradient Modeを弱めると静音化されますが、その分ベースの最短Echo Spacingが延長してしまうので、更に+1.0する必要があります。
注意点として、Echo Spacingが長すぎるとblurが目立ちますので、当院ではEcho Spacingは12台までとし、13.0は超えないように設定しています。
最後に
静音化の設定はある程度でdBが頭打ちとなり、さらに静音化するように設定すると音が低くなっていきます。同じくらいのdBでも人間の耳は高い音の方がうるさく聞こえ、低い音の方が静かに聞こえます。勿論MRIのパラメータはトレードオフですので、音を優先すると何かを犠牲にします。
全てを説明しきれておりませんが、細かい設定を突き詰めるには実際に色々と試し、音とご施設で許容される画像と撮像時間のバランスを探していただくしかありません。
音一つで子どもが検査を嫌いになってしまった、静音だったら覚醒しなかったかもしれない、そういうケースを沢山経験しております。
小児を検査する際は、MRIを嫌いにさせないように音も意識して臨んでいただけたら幸いです。
【ライター紹介】
国立成育医療研究センター 染森太三
専門は小児、胎児といったニッチな世界の住人です。東京MAG研、胎児MRI研究会に携わらせていただいています。またNPO法人Medical Playにも所属し、医療者のみならず患児・ご家族にも小児MRIのことを広く知ってもらうことで、子ども達にとってMRIがもっともっと身近で気軽なものであるように頑張っています。
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