MRCPの役割の一つとして「胆嚢管の描出」は非常に重要です。今回の記事では、この点に絞ってお話しします。
MRCP検査の目的とは?
MRCPで胆嚢管を描出することの意義の一つは、視野の狭い腹腔鏡下胆嚢摘出術(ラパコレ)において、術前に胆嚢管の位置を示すことです。ラパコレにおいて、胆嚢管の総胆管への合流方向や変異は重要な情報です。 術前に胆嚢管の位置や走行を示すことで、術中胆道損傷を防ぐことができます。胆道損傷の原因の多くは解剖学的誤認である1)と報告されています。
みなさんに質問します。
『胆嚢管を描出し、きちんと確認して検査を終了していますか?』
私もこの質問をされるとドキッとします。もちろん、すべてのMRCP検査において胆嚢管を描出する必要はありませんが、上記の知識を踏まえた上で、MRCP検査に臨むことがMRIオペレーターには必要です。
濃縮胆汁は胆嚢管の信号を消失する!
そこで、MRIオペレーターを悩ます問題が「濃縮胆汁」です。濃縮胆汁はT1値が短縮し(図1)、T2WIでは信号が低下するため、heavy T2WIのMRCPでは胆嚢の高信号が消失してしまいます。こうなると、胆嚢管を描出することができません。
そのような場合、まずはシークエンスを変えてみましょう。
MRCPには多くのシークエンスがあり、Graseやbalanced SSFPを利用したものが濃縮胆汁には有用です。
MRIには「引き出し」が非常に重要で、routineの方法でうまくいかないケースに「引き出し」の多さが検査成功の確率を高めます。
しかし、新しいシークエンスを使えない施設もあるかと思います。その際には、腹臥位MRCPを「引き出し」の一つに加えてみてはどうでしょう。
腹臥位MRCPという選択
濃縮胆汁は通常の胆汁よりも比重が重いため、仰臥位になると「背側」に集まります。そして、胆嚢管も多くの場合、総胆管の背側を走行するため、濃縮胆汁が溜まりT2短縮を起こします。
このため、図2の黄色点線に示すようにheavy T2WIのMRCPでは胆嚢管や総胆管が描出不良となります。
そこで、腹臥位にして濃縮胆汁を腹側に移動させることで(図3)、背側に位置する胆嚢管から濃縮胆汁が腹側へ移動し、胆嚢管にある胆汁のT2値が延長し、heavy T2WIのMRCPで高信号に描出することができます(図4)。
注意点として、胆嚢頚部から胆嚢管が虚脱している場合や、胆石で嵌頓している場合などは描出が困難です。腹臥位にする際は、寝台から患者さんが落下しないように気をつけてくださいね。
ライター紹介
福岡県の北九州市立医療センターの長島利一郎と申します。
20年近くMRIに携わっています。
ずっと古い装置を扱ってきて、最近新しい装置が導入されました。
若い頃にMRIで”こんなことができたらいいなぁ”と思っていたことが、
今の技術で可能になること、拡がりを持つことを実感しています。
色々な発信ができればと思っております。
参考文献
(1) 島田 謙,高橋 毅,板橋浩一,ほか.腹腔鏡下胆 嚢摘出術における胆道損傷の原因と対策.胆道 2001;7:479―567
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