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BPAS (2): 椎骨動脈解離のMRI – 画像上の分類と経過について
- 2014/11/3
- Any Modality, ミニレクチャー
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椎骨動脈解離とは?
今回は(1)でも少々触れましたが、椎骨動脈(ついこつどうみゃく)の解離(かいり)についてさらに詳しく説明します。「解離」は、一般用語で用いられている「乖離(する)」ではなくて、何層もの壁でできているチューブの、層と層との間に血液が入り込んで剥がれ破けることを意味しています。
椎骨動脈解離(VAD; VA dissecting)とは、椎骨動脈壁の解離により、血管壁内に血液が入り込み偽腔を形成した状態のことです。
解離は中膜層で生じ、①外膜に近い膜で起こる場合と、②内弾性板と中膜の間で起こる場合があります。前者は嚢状の拡張を、後者は狭小化を呈します。臨床像は頭痛は必ずしも突発性ではなく、拍動性の頭痛、頭重感、肩や頚が凝ったような感じや、何となく頭が痛い、など訴えは様々で、頭蓋内椎骨脳底動脈瘤のうち、約30%を占めます。
椎骨動脈解離の経過とMRA所見
MRAの所見は、次の3つのタイプに大別されます。
【疫学】
・発症年齢は40-50歳代にピークを認めます。
・男性に多い。
・特徴:出血例・脳梗塞例ともに、先行する頭痛・頭頸部痛がみられます。
・出血例ではクモ膜下出血として発症します。
・脳梗塞発症例ではWallenberg症候群(延髄外側症候群)【注1】や脳幹梗塞を呈します。
【注1】Wallenberg症候群(延髄外側症候群)
脳幹障害のうちの一つで、延髄外側の梗塞によって生じる症候群。
主に椎骨動脈系の後下小脳動脈の閉塞によってその血管領域である延髄外側が梗塞に陥ることで起こる一連の症状。
- 症状
めまいや交代性麻痺など特異な症状を呈する。
嘔吐、悪心、めまい、眼振、嚥下障害、構音障害、嗄声、味覚障害 - 障害側と同側に
小脳症状、顔面の温痛覚障害、ホルネル症候群 - 障害側と対側に
頚部以下、体幹・上下肢の温痛覚障害
【ゴルフ頭痛】
ゴルフが椎骨動脈解離の原因となることもあり、この頭痛のことを「ゴルフ頭痛」と呼ぶこともあります。例えば、ドライバーで気持ちよく球を打った瞬間、後頭部に激痛が起こり、やがてめまいや吐き気、ふらつきが現れます。
・首を急にひねることによる椎骨動脈の解離が原因。
・国立仙台病院脳卒中センターで、1998-2000年の2年間で、この症例を4例経験した(3人は30歳代、1人は50歳代)。
・原因は「球を打った直後に首を急にひねり、球の方向を見る動き」ではないかとされる。
・「首をしっかり止めてスイングする」のが良いそうです。
ゴルフの他には「急に振り向いた拍子」「カイロプラクティックで施術者にひねられた」「軽度の頚部外傷」「日頃から首をひねって音を出す癖がある」など様々ですが、いずれも「頚部への急激な外力」が原因となります。
【経過とMR画像】
椎骨動脈解離は、約半数が自然治癒(remodeling)しますが、閉塞、不変、動脈瘤形成など多彩な変化を取るため、長期的なフォローアップが必要です。
おわりに
今回ご紹介した疾病の勉強に関しては、故野々垣洋一先生(ののがき脳神経外科クリニック)からご教示いただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。 http://www.nonogaki-clinic.com/contents/01_1.html
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