はじめに
健診会 東京メディカルクリニックの諸田智章です。
『頚椎CTLI』についてご紹介いたします。JSMRM2023 (軽井沢) で報告した基礎的な検討内容を中心に共有させていただきます。
CTLIの第一印象
CT like images (以下、CTLI) にはいくつか手法がありますが、今回は3D Multi-Echo Gradient-Echo法を用いています。これは複数のin phase画像を加算し、最後に白黒反転させて画像を得る方法です (Fig.1)。
骨の輪郭や腱、靭帯のコントラストが高い画像が得られるとされています。ある時、汎用的な撮像条件でCTLIを撮像した際、CT画像で高信号にならない自由水がCTLIで高信号になっていたことが気になって仕方がありませんでした。
もちろん、MRIとCTとでは捉えているものが違うため同じ画像とはなりませんが、脳脊髄液の信号を抑制することで脳脊髄液と脊髄の信号がフラットになります。骨皮質やOPLLなどの石灰化とコントラストがつくことを目標とし、自施設で検討を行いました。
検討内容
TRとFlip Angle (以下、FA) について検討を行いましたが、TRによる違い (22、25、28、31ms) があまり見られなかったためここでは割愛し、TRは最短の22msとして、FAの変更のみに絞って話を進めます。
豚の骨と肉、貝殻、生理食塩水を用いたファントムスタディで条件を絞った後、ボランティアスタディを行い、それぞれ計測値からContrastを算出しました。
ファントムスタディから、FAを6°や9°と低く設定した方がCTに近づき、骨や石灰成分を強調する結果となりました (Fig.2)。ボランティアスタディからも同様に、FAを小さくした方が皮質骨-脳脊髄液のコントラストは良くなりました (Fig.3)。FA6°よりさらにFAを下げるとどうなるかを確認するため、FA3°を新たに追加検討しました (学会会場での親切なご質問にこの場を借りてお礼申し上げます)。
結論からすると、目標にしていた脳脊髄液の信号が低下するFAは6°となりました。これは脳脊髄液のErnst角と一致します (TR 22ms)。CTLIは加算後の画像を白黒反転するため、反転前の信号値が最大となるところがCTLIでは抑制されました。さらにFAが低い3°ですと、脊髄の信号が脳脊髄液よりも上がってきてしまうため余分なものが強調されてしまい、両者の信号がフラットになりません (Fig.3)。
Limitation
・本検討は骨外がターゲットであるため骨内の評価はできていない
・さらに細かい単位のFAの絞り込みはしていない
・Flowの影響は考慮していない
・靭帯と骨化との鑑別はできない
臨床症例
OPLL症例をお示しします (Fig.4)。T2WIとT1WIでは後縦靭帯あたりに低信号部があることはわかりますが、骨化であるかはこの画像だけではわかりにくいです。しかし、CTLIを追加することで、後縦靭帯の骨化が一目でわかりやすく描出できた症例です。さらに前縦靭帯の肥厚・骨化も描出されています。
次に、外傷後の骨折症例もお示しします (Fig.5)。ルーチンの3mm 2D撮像で損傷を疑い、CTLIとMPR処理を追加することで、骨折をMRIのみで明瞭に描出できた症例です。1mm 3D収集であるため撮像後に任意の角度で観察が可能です。
撮像時間を約3分に抑えられたCTLIを追加することにより、MRI検査の付加価値を高めてくれると思っています。
おわりに
本検討はシーメンス社製1.5T装置での結果ですが、特殊なオプションは一切用いておりません。3DのGradient Echoが撮れる装置であれば、ベンダーの制約はない?と考えております。
当院の1.5T撮像条件を開示しますので参考になれば嬉しいです (Fig.6) 。
今回は脳脊髄液周囲のお話でした。撮像領域や目的に応じてCTLI撮像条件をフィッティングする必要があると考えています。
CTLIはMRI検査にさらなる付加価値を持たせる撮像だと思います。ぜひご活用していただき、ご意見などございましたら共有できると幸いです。
ライター紹介
健診会 東京メディカルクリニック 諸田智章
大学卒業後に埼玉県の救急病院でかけがえのない10年を経て、ご縁があり2021年に当院に入職しました。MRIはずっとわからないことだらけですが、少しわかった時や創意工夫により上手く撮れた時の達成感がクセになります。何年経ってもずっと少年の心でいられるほどMRIの魅力にどっぷりはまっています。
これからも楽しく学びつつ、みなさんと繋がり、社会に貢献できるよう努めます。
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