はじめに「そのMRCP、もう少し綺麗にできませんか?」
みなさまのご施設でも呼吸同期MRI、特にMRCPなどの検査は盛んに行われているかと思います。呼吸の影響が加わる分、撮像に難渋し、Poor studyで終了という苦い経験は誰しもあるのではないでしょうか。
同じルーチンを走らせているにも関わらず撮像に成功、失敗するのはなぜ?
もしかして、検査前のワンステップを省いてしまっていませんか。
画質は「スキャン前に」すでに決まっている?
検査成功への道筋は2つあります(図1)。
・患者さんへの検査説明、前処置などの準備(スキャン前)
・撮像対象へ合わせたパラメータの最適化(スキャン中)
このうち、基礎部分である前者を丁寧に行うことで、パラメータ調整との相乗効果により、良い検査ができると考えています。特に、同期撮像では患者さんのコンディションが画質へ直結するため、この基礎固めが重要です。
今回、呼吸同期成功に向けて「準備・Preparation」にフォーカスを当てて、解説をします。
〜如何に患者さんと検査内容を共有するか〜
検査説明の目的は、「ただ検査台に寝転がって検査を受ける」から「検査成功へのタスクを被検者自身にも課す」という検査を始める前の意識改革です(図2)。
具体的には検査前、患者さんのポジショニングの際に以下の説明を行っています。
・呼吸の仕方により画質が変わること
・呼吸に合わせて写真を撮っているため、息を止める指示がない場合でも呼吸を乱さないこと
・深呼吸をしないように、浅い呼吸を続けること
・可能であれば鼻呼吸が望ましいこと
・検査終了まで絶対に眠らないこと
・おおよその検査時間を伝え、撮像時間延長は画質低下につながること
上記に加え、検査開始後には同期撮像の直前にスキャンを一旦停止し、次のスキャンが呼吸同期であるというアナウンスを行っています。
呼吸の練習を事前にしておくことも効果的です(図3)。
「(各スキャン間の)音が静かなときは撮像を行っていません。この間は深呼吸や咳払いOKです」など、検査中のヒントを与えておくのもよいでしょう。
「しっかり呼吸をしてください」という声かけは不安定な呼吸を誘発する可能性があるため、お勧めしません。
〜呼吸制御のための道具を使う〜
呼吸変動を物理的に制限することも効果的です。
当院の胸腹部MRIでは原則、ベルトテクニックとして腹部バンドを使用しています。
効果的に呼吸変動の制限を行うため、以下の2点に注意をしています。
・使用するバンド
・バンドを巻く位置
使用するバンドの構造は、幅の細いものではなく、広いものを使用します(図4)。性別、体格によりバンドのサイズを使い分けましょう。
経年劣化によりゴムの巻きつけやマジックテープが不十分なものは効果が半減しますので、定期的にメンテナンス・交換をお勧めします。
バンドの巻きつけは、「呼気」で「バンド下縁が腸骨陵上縁の位置」でおこないます。
理由は、上腹部臓器が下方へシフトするスペースを物理的に制限し、臓器の上下運動を低減させるためです(図5)。
ベルトテクニックにより呼吸変動の減少や呼吸同期効率の改善が見込まれますが、すべての患者さんに対して有効ではなく、体型によって効果に差が出ます(肥満体型では効果が期待できません)。
また、イレギュラーな呼吸パターンの改善は見込まれません。
そのため、「ベルトテクニック・検査説明」の双方の合わせ技で効果を発揮するという認識が大切です。
さいごに
今回、呼吸同期MRIでのノンテクニカルスキルとして「検査準備・Preparation」について概説しました。
誰でも、どの施設でも実践できますので、皆さまも検査前のワークフローを少し見返してみてはいかかでしょうか。
ライター紹介
日本赤十字社愛知医療センター名古屋第一病院の村井康史です。技師14年目です。
私は「得体の知れないものに興味を持つ」という性格で、MRIは完全に私の心を鷲掴みにしました。
相変わらずMRIへの理解は進んでいませんが、臨床での楽しみ方はずいぶん引き出せたと思います。最近はMRIの面白さを新人さんやローテーター、初学者のみなさんに、どのように伝えるかを考えています。
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