全身MRIが12分台の超短時間に!キヤノンのDLR技術「AiCE」の魅力を語ります!

はじめに

皆さんこんにちは。
さいたま市立病院 中央放射線科の佐藤吉海です。MRI使用歴は約12年です。
今回は、令和2年度の診療報酬改定において創設された全身MRI撮影加算について、当院の検査運用を紹介します。近年Deep Learning Reconstruction (DLR)が注目されている中、当院ではキヤノンのDLR技術「AiCE」を活用して、全身MRIを12分台の超短時間で撮像しています。「全身MRIは検査時間が長く、オーダーがなかなか受けにくい…」という悩みを解決してくれるAiCEの魅力を語ります。

新病院にAiCE搭載の最新MRIを導入

昨年12月にオープンした新病院に、AiCEを搭載したMRI装置「Vantage Orian / X Grade (1.5T)」と「Vantage Galan 3T / Focus XG Edition (3.0T)」が新しく導入されました。AiCE搭載のMRI装置が臨床機として稼働するのは当院が世界で初めてです。
AiCEは、ディープラーニングにより低いSNRの画像からノイズのみを選択的に除去し、高いSNRの画像を再構成する技術です。AiCEにより積算回数を減らしてもSNRを担保できるので、大幅なスキャン時間の短縮が可能です。

DWIBSのスキャン時間が約3分の1に短縮

DWIBS検査においてもAiCEがとても有効です。パラメーターは診断科の先生方と検討し、読影に支障が出ないレベルでの最短時間に設定しています。DWIBS検査は主に1.5TのOrianで実施していますが、現在は1ステップあたりのスキャン時間は59秒と超短時間で撮像しています。
下図は、一番左がAiCEを併用した積算1回の59秒で撮像した画像です。これに対して、AiCEがない場合に積算回数を何回あげるとAiCEの画像と同様になるか、という検討をしてみました。今回は、定量評価ではなく視覚評価ですが、先生方の印象では「積算3回の画像と同じくらい」という結果でした。つまり、AiCEを用いたことでDWIBSのスキャン時間が約3分の1に短縮されていることになります。1ステップあたり1分以下の短時間でDWIBSが撮像できるなんて驚きのスピードではないでしょうか?

全身MRIを12分台の超短時間で

AiCEは、この手の最新技術によくみられる撮像部位・シーケンス・コイルなどの制約がほぼなく、適用に悩むことがない点に使いやすさを感じています。全身MRIにおいても全コントラストに適用可能であり、下図のボランティア画像のように3ステップで合計12分48秒の超短時間で撮像が可能です。通常は全身MRI検査に2倍程度の時間がかかることが多いと思いますが、AiCEがあればこれだけの短時間で撮像ができます。

下図は、前立腺癌の放射線治療後、リンパ節転移の症例です。実際の臨床においてもボランティアと同様、撮像時間は12分48秒です。セッティングを含めた検査全体でも25分程度の短時間で実施できました。赤い矢印と青い矢印が病変部ですが、T1強調画像やSTIRと一致した所見がDWIBSにおいてもみられます。このようにAiCEを用いることで、診断能はそのままに検査時間を大幅に短縮することができます。診療科の先生方からも「検査時間が短くなり、全身MRIのオーダーが出しやすくなった」という声があがっており、実際に検査数も週に2~3件程度とどんどん増えてきています。

AiCEの魅力は時間短縮だけじゃない

AiCEは今回ご紹介した時間短縮への活用だけでなく、高分解能の方向にも使えるなど応用範囲がとても広いです。当院の初期使用経験がキヤノンのHP(リンク)に掲載されています。AiCEには「一度使ったらもう戻れない!」と思うほどの魅力がありますので、興味のある方はぜひご覧ください。

Editor’s Comment

DWIBSは加算回数を可能な限り増やし、SNRの向上と、動きを平均化し病変の描出能を高めます。
『前立腺癌の骨転移検出のための全身MRI撮像の細則』に則り撮像するのであれば、DWIBSの他に他の撮像もおこないます。
骨転移のみを描出する目的であれば、脊椎は動きの影響が小さいので、少ない加算回数でデノイズした本法も一つの考え方だと思います。
動きの大きい臓器を評価する場合はより多くの加算回数は必要であると考えます

自己紹介

私は、学生時代の実習先が浦和市立病院(現さいたま市立病院)で、そこで初めて藤田さん(現技師長)にお会いしました。実習内容は治療と核医学でしたが、MRIを担当していた藤田さんに引き込まれ、実習とは関係ないMRIで遊ばせていただきました。その時から藤田さんと一緒にMRI装置を触るのが楽しくなり、何とかさいたま市立病院に入職したく思っていました。そして、2002年に念願のさいたま市立病院に入職し、藤田さんとMRIに再会できました。入職1年目からは、当然MRIには配置してもらえませんでしたが、担当の仕事が終わってから、すぐに藤田さんのもとに行き、MRIの勉強をしていました。いろんな実験を一緒にやった楽しい思い出もあり、実験等で様々なトラブルを起こしてしまいましたが、すべて藤田さんが揉み消してくれました( ◠‿◠ ) 藤田さんとは、そんな時間を過ごして、MRI検査の大切さについて教えていただきました。そして、MRIに関して自由にやらせてくれる環境を与えていただき、10年間も大学院に行くことや、夜から朝方まで実験しても許してくれました。そんな藤田さんと家族には感謝の気持ちでいっぱいです。

 

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