ITEM2019(2) ~ Philips編

皆さんこんにちは。虎の門病院の福澤圭と申します。

編集者の古河さんからのご依頼で、今年のフィリップス・ジャパン(以下、フィリップス)のブース取材を担当させて頂きました。

今年の4月3日にプレスリリースされたばかりの最新機種:Ingenia Ambition 1.5Tの情報を中心にお伝えします!

PHILIPSブース前にてパノラマ撮影(ひょっこり写っているのが筆者)

今回、ブース取材にご協力いただいたのは皆さんご存知の敏腕アプリ・中村理宜さんです。

Ambitionの装置的特徴や搭載されているR.5.6のソフトウェアのアプリケーション等について、詳細に解説して頂きました。

Ambition前で中村さん(右)と撮影

驚きのヘリウムフリー!BlueSealマグネット

BlueSealマグネットの液体ヘリウム循環方法(左が従来法、右がBlueSeal)

「Ingenia Ambition 1.5T」の最大の特徴はヘリウムフリーを実現したBlueSealマグネットです。

従来の一般的な超電導MRI装置ではおよそ1500リットルの液体ヘリウムが使用されていましたが、BlueSealマグネットではなんと7リットルしか使っていないそうです!

たったそれだけで超電導状態の維持は大丈夫なのか?という率直な疑問を持ちましたが、図のようにBlueSealマグネットでは、超電導磁石に巻き付くような形で液体ヘリウムを循環させるMicro-cloolingという手法が特徴的で、これにより十分な冷却ができるそうです。

この画期的なヘリウムフリーのメリットをまとめます。

・ 世界的なヘリウム不足・価格の高騰へ対応(エコロジーに貢献)

・ 消磁からの復旧がスムーズ

・ 装置重量が約900kg軽量化、クエンチパイプが不要なため据付の自由度がアップ

特に、消磁に関しては「Easy-Switch Solution」というサービス機能が搭載されており、予期せぬ吸着事故が発生した場合に消磁を行っても、ヘリウム充填が不要なため、励磁作業がスムーズに行え、コストも抑えることができるそうです。

例えば生命に関わるような吸着事故ではない場合、Easy-Switchによって1時間程度の時間で磁場を落とし、その後およそ1日で励磁が完了するそうです。

また、チラーの停止などによって、万が一ヘリウムが気化したとしても、少量であるため一番上に配置されているコールドヘッド内に全て収まりクエンチの外部排気は起こらないそうです。

こういったトラブルは起こらないに越したことはありませんが、色々なリスク管理の面で重要なことだと感じました!

 

同期デバイスフリー..だけじゃない!「Vital-Eye」はとっても優秀

 

Vital-Eye (PhilipsのHPより抜粋)

Ingenia-Ambitionより搭載されている「Vital-Eye」は、ガントリ内に搭載された高精細赤外線カメラによって患者さんの呼吸信号を検知する機能です。

これによって、従来の呼吸モニターを装着する必要がなくなります。

さらに、Vital-Eyeの優れた点は、より正確かつ確実に呼吸の動きを検知できることです。

Vital-Eye 動きを捉える精度に関する研究結果

写真にある研究(ISMRM2018 #2528)では、10例のボランティアでベルトセンサーとVital-Eyeでの信号検出精度を比較しており、ダイナミックbTFEで検出したリアルタイムの動き情報と比べると、Vital-Eyeの方がより正確に動きを捉えていたとの結果が示されていました。

私自身、腹部のモニターを使った同期撮像の際に、MR的に捉えたい動きと腹壁の動きのミスマッチが気になる時が多々あります。

これらを解決する技術であると思います!

 

覚えきれない…新しいアプリケーションの数々

R.5.6より搭載されるアプリケーション

R.5.6より搭載されるアプリケーションについて、中村さんにご解説頂きました。

私が特に印象に残ったものを中心に、紹介させて頂きます。

 

・DWI TSE XD

SPLICE (Split-echo acquisition of TSE signals)は、従来のTSE-DWIでは収集していなかったStimulated echo (STE)を収集することで、TSE-DWIの欠点であった低SNRを解決した方法です。

STEを単純に収集するだけでは、SEとの干渉が起こるため、別々に収集してイメージベースで合成するというところが重要だそうです。

磁化率の影響がありそうな部位のDWIでは、非常に有用だと感じました。

 

・IRIS ZOOM

位相方向に分割したマルチショットEPI-DWIで、navigator-echoによってshot毎の位相のずれを補正する方法で、歪みに強いDWIが可能となります。

Echo factorと位相エンコード数から分割数が変化する方法です。

 

・bFFE XD

Balancedシーケンス特有のバンディングアーチファクトを解決する手法として、従来よりphase cycleを利用した方法があり、phase cycle angle 360°/NSAでバンディングアーチファクトの間隔をコントロールしていましたが、偶数加算しか使えないなどの制限がありました。

bFFE XDではNSAの自由度が増したことで、バンディングアーチファクトをかなり抑制することが出来ていました。

3TのCP-AngleのbFFEや手根管のbFFEの画像が提示されており、非常に高精細かつアーチファクトのない画像でした。

 

・Cardiac 3D-Non-Selective

3D-Non-Selectiveではblock RFパルスによる短時間励起が可能となり、3D-TFEなどシーケンスで利用できるそうです。

これによって選択励起傾斜磁場やリワインダー傾斜磁場の印加が不要となるため、例えばBalanced TFEシーケンスにおいてTR/TEを2ms/1.1ms程度まで短縮することが実現されていました。

一番驚いたのは3TでBalancedシーケンスによるCoronary MRAの画像でバンディングなどのアーチファクトがなく、またTEが1.1のout of phaseとなることで、脂肪抑制効果も得られていました。

SARの低減によりFAを上げられるなどメリットの多い技術だと思いました!

その他、MRS-XD, MEGA, Neuro Science Ex, などの技術も解説して頂きました。

非常に魅力的なアプリケーションが多く、今後、これらの臨床応用の成果に関する情報が待ち遠しく感じました!

以上、フィリップスレポートでした。

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