RADっていいとも 素敵な仲間とのペンリレー (27) 上山 毅

題名 ~中道を生きる~

自分の写真

『自己紹介』

こんにちは。大阪市立大学医学部附属病院の木村大輔さんから紹介いただきました、上山毅(うえやまつよし)と申します。京都出身で大阪大学から大阪大学大学院と進み、現在は大阪府にあります彩都友紘会(さいとゆうこうかい)病院に勤めております。

『仏陀の教え』

私の趣味は、お寺を巡ることです。私は煩悩の数が人よりも多く(おそらく108個以上)ありますので、少しでも煩悩が減るように、お寺に足を運び、御朱印を集めています。

朱印

仏教の言葉に「中道」という言葉があります。 この言葉にはいろいろな解説がありますが、一般的には「極端な偏りがないこと」でしょうか。私はこの「中道」の教えを大事にしており、頑張り過ぎず、怠け過ぎずに勉強を続けたいと思っています。

『仏陀の教えとMRI』

「中道」の考え方は、MRIを撮像する時も大事だなぁと感じております。(少し強引なこじつけですが)MRIにおいてパラメータの設定をする際、“極端な偏り”がありますと、良い画像が得られないですね。複数のパラメータが互いに依存しているなかで、適度なバランスをとることが大事かと思います。

また「中道」の持つ深い意味は、苦難と快楽、保守と革新、民主主義と社会主義など二元論の世界に振りまわされないように生きることであります。そして、ただ単純に中間・真ん中がよいということではなく、“俯瞰的”に偏りの両端が見えた上で、適切な正しい判断をすることのようです。

MRIでは、デフォルトのパラメータ設定を準備していますが、デフォルトの設定が必ず正しいとは言えません。特に患者の容態や疾患の状態に応じてパラメータの調整が必要と感じます。MRIにおける“俯瞰的”な見かたとは、パラメータの理解だけでなく俯瞰的に臨床現場を把握し、適切な状況判断ができることなのでしょう。偉大な先輩①は「MRIに精通している人は、日頃から“落としどころ”を判断する訓練ができている」と言っていました。MRIでは常にいろんなトレードオフの駆け引きばかりですので、なるほどなぁと敬服しました。そしてMRI好きの多くは、この状況判断の奥深さに魅了されていると思います。様々な会議の席でもMRIの達者な方達が議案をスマートにまとめている風景をみてきたような気がします。

『仏陀の教えとMRIと株・為替』

しかしながら、私には「中道」の教えによるところの“俯瞰的”な物事の見かたというのは難しいです。適切なつもりでも、“テキトー”なことが多いです。特に株・為替相場ですね。

私は数字遊びがとても好きで、趣味で株価や為替のチャートを統計的に解析します。意外とMRIで得た知識も役に立ちます。(またまた強引なこじつけですが)株価・為替の変動はMR信号に似ていて、ある程度のノイズをもった大きな波と解釈できます。したがってMRIと同様に、一般的に株価や為替の変動はガウス分布で想定します。また波を周波数解析して、波の周期性をとらえることもあります。

しかし、波の始まりは必ずノイズに埋もれていますので、変動を見逃しやすいです。つまり、株・為替相場においてもMRIと同様に低いSNRは厄介ということです。また小さな波が観察できたとしても一過性の変動に過ぎず、またノイズレベルに落ち着くこともあります。これは専門用語で“だまし”といいます。MRIで言うところの“アーチファクト”でしょう。

ドル円

アーチファクトはMRIでも株・為替相場でも厄介です。偉大な先輩②は、「アーチファクトもMR信号である」と言っていました。厄介なアーチファクトは偶然のエラーではなく、意図していないタイミングで位相が揃った(または分散した)にすぎない、と理解しています。つまりは操作者が意図していないだけで、アーチファクトは自然物理に従い必然的に磁気共鳴現象が起こった結果であるとのことです。

株・為替相場においても“だまし”というアーチファクトが頻繁にみられますが、世界中の経済政策や経済指標の発表のタイミングが重なる時に起こっていますので、必然的に起こった“だまし”といえます。つまり、数字だけ眺めていてもダメですね。ここでも“俯瞰的”な見かたが必要であり、世界の経済を理解していないといけないようです。

『煩悩が減りそうにない』

しかし、私はいつも判断を誤り、損切りの連続でとても惨めな思いばかりしております。「中道」とは“二元論で考えるな!”ということですが、私は値が上がったか下がったかの二元論で頭がいっぱいになり、そして俯瞰的に相場を理解せずに買い/売りの設定をしています。全く「中道」の教えを実践できない日が続きます。お寺を巡ってお賽銭をいれても「相場で勝てますように」と願います。そもそもお寺のお賽銭の意味は「欲を捨てる」という一つの修行です。私は根本的に間違っているのです。しかしそのことに気づいているものの、どうにもならないのです。煩悩が減ることはなく、むしろ増えているのかも・・・「中道を生きる」ことができた頃には、既に相場からは手を引いていると思われます。

『次の人は・・・』

次のバトンは、東京女子医科大学東医療センターの小島慎也さんです。小島さんは画像再構成の知識が豊富にあり、MR信号を深く理解している印象をもっています。また、日本放射線技術学会では研究奨励賞を受賞されておりとても優秀な方ですね。学会会場で小島さんの研究の成果を拝見するのが私の毎年の楽しみとなっております。お会いするたび、私よりも数字に強いなぁと脱帽しています。小島さん、よろしくお願いします。

RADっていいとも

 

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Takahashi Mitsuyuki国家公務員共済組合連合会横浜栄共済病院放射線技術科

投稿者プロフィール

診療放射線技師歴はなんと37年となりました。技師人生も最終章ですね。現在は病院の技師長職を行っています。お昼の食事交代にMRI業務をおこなっています。まだまだ現役ばりばりばりです(笑)。宜しくお願いします。

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