「ちょっとHeavy T2 IDEAL」で腕神経叢を描出する(動画付き)

一般的に、腕神経叢の描出に用いられるシーケンスと言えば、DWIやSTIRを使っている施設が多いと思いますが、今回は「ちょっとHeavy T2 IDEAL」を使った腕神経叢撮像の紹介をします。

IDEALとは?

水と脂肪のケミカルシフトを利用して水画像と脂肪画像を生成する手法で、3 Point Dixon法を応用した技術です。従来のDixon法とは異なり、IDEALでは-30度、90度、120度と非対称になるようなTEを用いることによって安定した水、脂肪分離が可能です。

なぜIDEALなのか??

「ちょっとHeavy T2 IDEAL」を検討するまで使用していたSTIRでは、腕神経叢と背景信号とのコントラストはあるが、SNRの悪さを補うために分解能、または撮像時間が犠牲になっていました(図1)。そのため、もっと短時間でコントラスト良く、分解能も担保できる画像が撮れないかと、物足りない日々を過ごしていました。

図1 STIRによる腕神経叢の描出

そこで、均一な脂肪抑制かつ分解能の低下を招かない撮像シーケンスの検討をしました。まず、均一な脂肪抑制画像として思いついたT2 IDEALを何も工夫せずに撮像してみました。すると、腕神経叢が良く描出された画像が得られたのですが、背景信号と腕神経叢のコントラストが物足りませんでした(図2)。

図2 IDEALを用いた第1回目のボランティア画像

それならば、ということで背景信号をさらに抑制するために、TEを延長したHeavy T2 IDEALの作成を試みました。

ちょっとHeavy T2 IDEALへの歩み

検討したTEは50msから300msまでで、50msずつ変化させた画像を図3に示します。

 

図3 TEの変化による腕神経叢の見え方の違い

TEを延長することによって背景信号が抑えられ、腕神経叢がより強調されます。しかし、Heavy T2にしすぎると背景信号と共に腕神経の信号も低下してしまい、最も重要な腕神経叢の描出能が低下してしまいます。特に図3の矢印の細い腕神経に注目してください。この細い腕神経の拡大図を図4に示します。

図4 細い腕神経の拡大図

低いTEでは背景信号に埋もれてしまい、腕神経が途切れて見えてしまっていますが、TEを上げることによって背景信号がしっかり抑制され、細い腕神経まで描出されている様子がわかります。実際、この細い腕神経と筋肉にROIを設定し、組織間測定法でCNRを算出すると、TE 200msまではCNRが上昇し、250ms以上のTEでは、TEの延長に伴ってCNRは低下していくことがわかります(図5)。従って、最も高いCNRが得られているTE 200ms付近が最適TEだと考えられます。

 

図5 組織間測定法によるCNR

IDEALの敵、ブラーリング

IDEALは一度の撮像で安定した脂肪抑制画像とケミカルシフトによる位置ずれのないin-phase画像が同時に得られる非常に便利なシーケンスです。しかしIDEALはその原理上、3つの異なるTEを用いているためecho spaceの延長が生じ、しばしばブラーリングによる画質の低下が問題となります。このブラーリングを効率よく抑制するには、受信Band Width(以下BW)やEcho Train Length(以下ETL)の調整に加え、Parallel Imaging(ASSET)を使用することが簡便で最も有効です。ブラーリングはecho spaceとETL数及び位相マトリクス数に比例します。従って、ASSETを用いてk-spaceの位相エンコードステップを間引くことにより効率よくブラーリングを抑制することが出来ます。図6はT2 IDEALのASSETファクタと受信BWを変化させた実際のファントム画像です。この画像からもわかるように、ASSETを使用することでブラーリングが抑えられていることがわかります。さらに受信BWを広くし、ETLを少なくすることでよりブラーリングの影響を抑えることができます。

図6 ブラーリングの改善 (RadFan GEM flexコイルの威力やいかに!? より引用)

「ちょっとHeavy T2 IDEAL」では、ASSETは3.0を設定しています。また、BWは50kHz、ETLは10に設定することでブラーリングによる画質低下を出来るだけ排除しています。

Reformatでより明瞭に

スライス厚は2.0mm、スライスギャップは0mmに設定することでReformatも可能にしました。腕神経叢が明瞭に描出される任意の角度に合わせ、スライス厚は10mm、スライス移動は2mmにし、Thin slice MIPを作成することによって腕神経叢を非常に明瞭に描出することが出来ます(図7)。

図7 ちょっとHeavy T2 IDEALで撮像した腕神経叢(リンクをクリックすると動画をご覧いただけます)

今回検討したMRI装置はGE Healthcare社製のDiscovery MR750wですが、IDEALはVersion 15の装置から使用できるので、かなり多くの施設で利用できる撮像法です。最後に考案した「ちょっとHeavy T2 IDEAL」のプロトコルを記載します。腕神経叢描出のオーダーが来たら、ぜひお試しください。

図8 ちょっとHeavy T2 IDEALの撮像シーケンス

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Hori Hiroki森山脳神経センター病院 FUSセンター

投稿者プロフィール

MR guided Focus Ultrasound(FUS)というMRIガイド下で行われる治療に関する研究を特に行っています。
「FUSと言えば堀」、「堀と言えばFUS」と呼ばれる男になれるように日々精進しています。

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