順天堂大学医学部附属順天堂医院の古河勇樹です。
2年ぶりにフィリップス・ジャパン(以下、フィリップス)のブース取材を行ないましたので、最新MRI情報をお伝えしたいと思います。
多くの人がブース会場に参加され、コロナ禍前に戻ったような賑わいをみせていました。
今回、ブース取材にご協力いただいたのはマーケティングの内海さんです。違和感をもった方は、なかなかのMRI通であると思います(笑)。
今回のフィリップスブースでは新装置が展示されていました。2021年のRSNA (Radiological Society of North America)で発表され2022年9月に米国では販売が開始されていた「MR 7700」です。
MR 7700は寝台やコイルなどの設計や外観は、従来のIngenia Elition 3.0Tと大きな変更がありませんが、Elitionで採用されたグラディエントシステム(Vegaグラディエント)が進化し高い精度(Fidelity:99.97%)を実現しながら、65 mT/m の勾配強度と 220 T/m/s のスルーレートを達成しています。それにより高分解に耐えうる高い信号比、解像度の向上が得られるとのことでした。
そして最大の特徴は、1Hだけでなく6核種(31P, 13C, 23Na, 19F, 129Xe)の分子イメージングが、臨床機として搭載されたことです。従来、1H(プロトン)以外の核種を撮像する場合、サードパーティ製の核種専用コイルなどを使用する必要がありました。
MR 7700はMulti Nucleiに対応したコイルを使用することで、臨床の検査をしながら、追加撮像として分子イメージングが可能な装置として開発されています。(Multi Nuclei対応コイルは薬事未承認)
医療機関での研究では、研究シーケンスを追加撮像として行うことで、研究参加者の門戸を広げることが一般的で、コイル変更なしに行える点は非常に有用です。また、プロトンイメージを分子イメージのソース画像として利用できるなども考えられ、研究用の装置として、これ以上の装置は現状では存在しないといっても過言ではありません。
SmartSpeed
前回、ITEM2022の記事で内容の詳細は紹介されていますが、今回は様々な臨床応用例が紹介されていました。
SmartSpeedを使用しても定量評価に影響がないことが検証されており、安心して使用できるという印象を強く感じました。SmartQuant NeuroとしてSmartSpeedを使ったMDME(Multi Delay Multi Echo)の撮像時間短縮とミエリンの定量評価を併せたアプリケーション「SmartQuant Nero」が新たに発表されていました。
MR Workspace (R11からの次世代操作コンソール)
2011年に発売されたIngenia から開始されたRelease 4.0、その後Achievaなどの機種も内包したRelease 5.0、そして今回新しいUIとして「MR Workspace」が発表されました。
大きな特徴として「27インチの大画面4Kモニタ」、「直観的操作」、「検査スループットの向上」が挙げられ、画像が主役のデザインとなっています。
こちらの画像は実際のプランニング画面ですが、画面のほとんどが、プランニング用の3断面画像で占められていることが分かります。
ExamCradは画面下にまとめられ、主に使われるパラメターは簡単に変更可能になっています。細かい設定を変更したい場合は、別Windowで従来通りの変更が可能になっています。
Release 3.0から4.0の変更も大きいものでしたが、今回はその時を上回る様々な機能が追加され、非常に強化されたという印象が強かったです。細かいところもありますが、強化された機能を一つ一つ解説していきたいと思います。
① 患者登録時のExamCards登録
患者登録時にExamCardsを事前に登録できるようになりました。これは他社では可能であった機能で、患者切り替えのロス時間を如何に抑えていくかが問われる現在においては非常に有用です。管理者が事前にシーケンスを用意して、慣れない操作者のミスを防ぐなどにも応用できる、地味ですが重要な機能です。
② 四肢セットアップ方法の可視化
こちらも非常に地味ですが、四肢のセットアップにおける装置側に入力する体位の選択が視覚的に行えるようになりました。
他社も含め、基本的な体位は「解剖学的正位」(直立した状態で手掌を前に向け、指を伸ばしたかたち:画像左)を基本として、挙上した場合は「Feet fast」(足から装置に)の設定にするなどの配慮が必要となっており、慣れていないオペレーターを悩ませる種になっていました。「MR Workspace」では視覚的に選択できるように「解剖学的正位」から「手のひらを体につける」「挙上」などをクリックで切り替えできるようになっています。これって非常に画期的であり目から鱗でした・・・・。
③ 3D、MPR処理の同時並行作業
従来PhilipsのUIではMIPやMPRなどの作業では、1つの作業しか展開できず、どうしても作業途中で切り替えなくてはいけない場合は、泣く泣く作業を中断し、最初から作業をするしかありませんでした。「MR Workspace」では複数の同時処理が可能になっており非常に助かる機能となっていました。
④ 画像の視覚的転送
画像のレビュー画面からPACS送信が可能になりました。今まではレビュー画面からシーケンス番号を記憶し、患者ストレージの画面から画像を送信する作業が必要でした。今回からは、視覚的に判断してそのまま転送できる機能が追加されました。こちらも地味ですが重要な機能です。
⑤ 患者ストック数の増加
従来PhilipsのUIでは、ストックできる患者は検査中のものを含め3患者のみでしたが、その制限が事実上なくなりました。展開が多すぎると処理が重くなるようですが 、5人くらいは全く問題が無いようで、全ての後処理が完了したのちに患者を閉じるという作業がスムーズに行えるとともに、後処理や送信忘れを防ぐ効果が期待でき非常に有用な機能であると思います。
⑥ Auto View機能の強化
Auto View画面による画像確認が強化され、全ての画像を確認できるようになりました。シーケンス毎の移動が可能で撮像の範囲と大まかな画像を確認するには非常に有用です。
これは他社で可能な機種があり、便利だな~と感じていたところに「MR Workspace」への導入で、他社の強みを全て取り入れてきたなと強く感じます。
非常に細かく地味に感じる点かもしれませんが。今回のUIは他社と比べPhilipsが弱点だなと感じる点が全て強化されているように思います。
使うのが非常に興味深く、わくわくしますね。
以上、フィリップスレポートでした。
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