はじめまして。
MRIfan.net新編集委員の昭和大学藤が丘病院の秋葉 泰紀と申します。
今回は、骨盤臓器脱検査におけるCine画像についてご紹介いたします。
骨盤臓器脱とは
聞き慣れない方も多いかもしれませんが、骨盤臓器脱とは、骨盤内の臓器が腟に向かって落ちてくる病態です。骨盤臓器脱には様々な種類があり、子宮を支えるじん帯が緩むことでおこる子宮脱、子宮筋腫などで子宮を切除した場合に腟円蓋または腟断端が下垂する腟断端脱、腟の前側にある筋膜が緩むことで起こる膀胱瘤、そして、膣の後ろ側にある筋膜が緩むことで起こる直腸瘤などがあります。これらは、合併して起こることもあります。
骨盤臓器脱は腹圧が強くかかる動作・習慣においてもリスクを高めます。
臓器は重力によって下垂するので、寝ているときは症状がなく、起きている間、特に午後から夕方になると症状が重くなるのも特徴です。
臓器脱の程度は、骨盤MRI画像で評価することが可能です。臓器脱が下垂している状態でグレード分類が異なるため、臓器脱が起きている状態の画像を得ることが重要となります。
骨盤臓器脱の撮像はどのような設定にしていますか?
選択肢として色々なシーケンスがあるかと思いますが、ここでは2D FIESTAを用いる方法をご紹介します。設定は静止画ですが、同じ断面を撮像し続けることで臓器脱の状態をCineのような動画像で得られます。しかも同期は不要のため簡便です。
2D FIESTAの設定は、まず正中にSagittal断面を1枚設定します。その後、2D FIESTAでMulti Phase設定にし、Phase数を増やします。Phase間のDelayは最短の時間を入力します(Fig. 1)。これで撮像を開始すれば、撮像中に患者さんにいきんでもらうだけで、Cineのような動画像が得られます。
骨盤臓器脱の状態を撮像するコツ(声かけ)
Multi Phaseでの撮像中に声かけを行うため、検査前の説明がとても大切であり、患者さんに検査を理解してもらうことが重要です。撮像中に「いきんでください」と声かけを行い、いきんでもらいますが、一回だけの声かけではなかなか臓器脱が起こりません。そこで、撮像中に「いきんでください」と何度も声かけが入ることを先に説明し、その声かけが聞こえた場合は、さらにいきんでもらうことで臓器脱の状態を撮像することができます。グレード決定のための計測は、臓器脱が最大下垂した画像を選択して行います。
以下に、この方法で撮像した骨盤臓器脱の症例を掲載いたします(Fig. 2〜5、矢印)。
こちらの記事が皆様のご参考になれば幸いです。
ライター紹介
昭和大学藤が丘病院の秋葉 泰紀(あきば たいき)と申します。MRI歴は8年目になります。
MRIは難しいとの固定概念があり苦手でしたが、綺麗な画像を撮像できた時の感動が忘れられず、今ではMRIが楽しいと日々感じております。学会や勉強会の際には、気軽にお声かけいただけましたら幸いです。よろしくお願い致します。
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