はじめに
MRIfan.net新編集委員となりました岡山済生会総合病院の吉村祐樹です。
上腹部の拡散強調画像の撮像には通常、Single Shot-EPI(以下、SS-EPI)が使用されることが多いと思います。しかし、肺や消化管の空気の影響により歪みを生じ、描出不良となることがあります。今回は歪みの低減を目的にRESOLVEを用いた膵の撮像に関して、パラメータの設定やその有用性についてご紹介したいと思います。
RESOLVEとは
RESOLVEとはk空間を周波数方向にセグメント化したMulti Shot-EPIで、SIEMENS特有のシーケンスです。SS-EPIと比較してEcho Spaceが短縮するため、歪みを低減することができます。更に、位相分散の低下によりSNRの上昇や高分解能化ができます。また、周波数方向の部分フーリエ法であるReadout Partial Fourierを使用することで、撮像時間の短縮も可能となります。
RESOLVEは、頭部や骨盤部(前立腺、子宮、卵巣)、四肢といった動きにくい部位で使用されることが多く、上腹部のように動く部位ではうまく撮像することができません。理由は、Multi Shot化されることで呼吸により異なる位置のデータがk空間に充填されるためです。また、RESOLVEはセグメント間の位相補正用に2ndエコーを取得しているため、イメージング用の1stエコーとの時間差により補正がうまくいかないことも理由の一つと考えられます。
パラメータ設定の要点
では、どのようにして膵(上腹部)の撮像ができるようになったのか。ポイントは3つで、セグメント数、MPG印加方法、加算回数が重要なパラメータとなります。
使用装置はSkyra 3T(XA30バージョン)で、自由呼吸下にて撮像しました。
まず、セグメント数は最小の3とし、Readout Partial Fourierを使用して2セグメント分のエコーの充填をします。これにより、呼吸による異なる位置の充填回数を減らすことができ、体動を低減します。セグメント数の増加は体動が顕著に現れます。
次に、MPG印加方法は3D Diagonalの1軸撮像とします。通常、3 Scan Traceの3軸合成を使用することが多いのですが、膵(上腹部の臓器)は拡散の異方性が少なく、1軸の撮像が可能と言われています。また、3 Scan Traceで加算を増やしたときと比較し、3D Diagonalで加算を増やしたときの方が理論上、SNRが上昇することが知られています。更に、撮像時間の調整の観点からも使い勝手が良いです。
最後に、加算回数はLow b、High b共に大きく設定することで良好なADCmapを取得できます(今回は両方14)。通常であれば、SNRの観点からLow bは小さく、High bは大きく設定します。しかし、膵のように動く部位に関しては、信号強度の高いLow bでも加算回数を大きく設定し、体動による影響を平均化する必要があります。
以下に本手法で得られた画像と撮像条件を示します。
臨床画像
ここからはSS-EPIと比較した際のRESOLVEの画像を示します。
図の上段と中段では、それぞれ消化管の空気と胃がん術後のクリップによる歪みが改善し、膵の描出範囲が増えていることがわかると思います。また、下段は正常な膵実質と膵がんとのコントラストが向上し、病変の視認性が良くなっています。膵がんは淡く高信号になることも多いため病変の同定に役立つと考えます。
おわりに
今回は膵をターゲットにしたRESOLVEを紹介しました。自由呼吸下での撮像のためどうしても体動の影響が出てしまうことがありますが、その場合は上腹部をベルトで縛り、固定することで体動の影響を低減できます。また、パラメータの調整次第では更なる画質の向上や、肝や腎の撮像も可能になると考えます。是非、皆様にトライして頂けると嬉しいです。
コメント
トラックバックは利用できません。
コメント (0)
この記事へのコメントはありません。