はじめに
大分大学医学部附属病院の岩尾佳幸です。自由呼吸、非同期、非造影にて血管の撮像を行うRadial GREというシーケンスについてご紹介いたします。
Radial GREとは
Radial GREは、2D-gradient echo(GRE)法であるFLASHを、Radial収集を用いて撮像するシーケンスです。Radial収集はk空間を放射状に充填するため動きに強いデータ収集法として知られています。血管を高信号に描出できるGREとRadial収集を組み合わせることにより、自由呼吸、非同期による血管の撮像が可能となります。また、Radial GREは動きの影響を受けにくいという特徴以外にも、
・任意の撮像断面の設定が可能であり、目的の血管に応じた撮像設定が可能
・2D撮像のため、任意のスライス枚数の設定が可能
・スライスギャップをオーバーラップさせることで、MPR表示が可能
といった特徴があります。このシーケンスはダミーパルス、脂肪抑制、GREによって構成され、データ収集にはRadial収集を使用します。
動きの影響やコントラストの調整に必要な主なパラメータとして、
① Radial view数:1枚の画像を作成するために必要な全spoke数
② Segment数:1shotあたりのspoke数
③ Flip angle:GREのFlip angle
の3つがあります。
撮像パラメータによる影響
① Radial view数
Radial view数が多い方がエイリアシングアーチファクト抑制効果は高く、動きの影響を平均化することができ、SNRの向上も期待できます。しかし、撮像時間は長くなります。
② Segment数
Segment数が多い場合には、脂肪抑制パルスに対してデータ収集時間が長くなり、脂肪信号は回復します。また、 1shotあたりのsegment数が極端に少ない場合(例;10segment×80shot=800views)、もしくは、segment数が多くshot数が少ない場合(例;400segment×2shot=800views)にはストリークアーチファクトが発生します。
③ Flip angle (FA)
スライス面内を平行に走行する血管と、スライス面内に流入する血管とで影響が異なります。面内を平行に走行する血管ではFAが高い場合、飽和効果により末梢の血管の信号低下が発生します。一方、スライス面内に流入する血管では、高いFAの場合、inflow効果のため血管信号は高くなります。
当院での撮像条件を示します。
装置やバージョンによってオプションが必要な場合がありますが、この撮像法はシーメンス社製のMRI装置であれば、シーケンスを作成することが可能です。こちらのURLからも条件設定についてご確認いただけます(URLの公開はシーメンス許諾済み)。
当院におけるRadial GREの臨床例
臨床例1:縦隔型肺腺癌に伴う上大静脈症候群
奇静脈弓から上大静脈、右房上縁にかけ腫瘍栓が確認できます。病変部に対しin-flow効果を最大限利用するために横断像撮像を行い、上大静脈(▲部分)にわずかに血流があることが確認できます。
臨床例2:右肺静脈部分灌流異常症(▲)・左上大静脈遺残(↑)
学校検診で右胸心を指摘されたため心大血管の構造評価のためにMRIを実施。小児症例では、自由呼吸・非同期・非造影にて撮像できるRadial GREが有用となります。呼吸や拍動、さらに磁化率の影響を受けやすい胸部の血管を撮像する場合や、小児症例など、シーケンスの選択に悩む検査依頼があった場合には、第一選択としてRadial GREを撮像しています。状況に応じ、MPRやthin MIP表示による画像を作成し提供しています。また、大動脈疾患において、腎機能低下やアレルギーにより造影CT検査が受けられない場合の手術前後にもRadial GREを撮像します。
上図は腹部大動脈ステントグラフト内挿術後の経過観察に撮像された画像ですが、腹部大動脈分枝はいずれも描出されています。
最後に
今回ご紹介したRadial GREは、2019年のSIEMENS社の画像コンテストfit TAKUMI Galleryにおいて報告したシーケンスです。今回、このような大変貴重な機会をいただき、ありがとうございました。Radial GREに興味を持っていただいた方に、少しでも参考になれば幸いです。
ライター紹介
大分大学医学部附属病院 岩尾佳幸
技師歴19年、職歴は3施設目、現在は出身地の大分に戻り、現職となります。皆様方と同様に私もMRIの世界に魅了された一人です。 MRIの複雑さには悩まされることもありますが、その過程で学び、成長することが楽しみとなっています。この記事投稿が皆様方との交流のきっかけになれば幸いです。
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