「世界最速最強T2スターへの道」

はじめに

MRIfan.netの読者の皆さま、2度目の投稿となります新別府病院の加藤と申します。
今回は2019年 Signa甲子園本選に演題名「世界最速最強T2スターへの道」で出場した、頭部の超高速 ” Multi-shot GRE-EPI T2* ” について紹介させていただきます。

「歪み」についての固定観念

まず本題に入る前に、多くの皆さんが勘違いしている歪みについて述べたいと思います。歪みには大きく分類すると、装置側の要因と被写体側の要因があります。装置側の要因としては。静磁場の不均一、傾斜磁場のLinearity不足やMPGなどによる渦電流があります。被写体側の要因としては、強磁性体などによる磁場の不均一があります。今回はシーケンス的にもまた20cm程度のFOVということから、装置側の影響はほとんど問題なく、被写体側の影響が問題となりました。一般的にEPI法は歪みが大きい、SE法よりもGRE法のほうが歪みは大きいと言われているため、GRE-EPIを使うという発想はなかなか出てこないのと思います。

そういう自分も30年近く勘違いしていたのですが、数年前Body DWI研究会で横浜栄病院の高橋さんの歪みについての講演で衝撃を受け、歪みの原理を考え直してみました。磁化率による歪には、位相エンコーディングにかかる時間と傾斜磁場と相関するもので、SE系の180°パルスは関与する余地はないことが分かりました。

では、なぜこれまでSE法よりもGRE法のほうが歪みが大きいと言われてきたのか。それはおそらく、GRE法は実際の歪みに、磁化率の不均一で生じる磁化率効果(T2*効果)による信号低下を混同したことだと考えます。そして、磁化率による位相分散の位相と、傾斜磁場による位相を混同していることが大きな要因ではないでしょうか。

背景

本題に戻りますが、頚動脈ステント留置術(CAS)後または頚動脈内膜切除術(CEA)後の過灌流症候群による出血のリスクを予測することや、超急性期脳梗塞症例において閉塞起点となる血栓を描出することは、治療方針を決定するうえで非常に有用です。T2 *強調画像は、出血の原因となる微小出血やsusceptibility vessel sign(SVS)を視覚化できる有望な方法です。しかし、このスキャンシーケンスを増やすには検査時間を延長する必要があります。特に一分一秒を争う急性脳梗塞では、検査時間の延長は深刻な問題です。そこでT2 *WIを短時間で撮像する方法がないかと考えてみました。最も速い撮像法といえばGRE-EPIですが、歪みが大きいので歪み抑制が必須です。我々はGRE-EPI T2 *WIをMulti-shotにすることで歪みのないT2 *WIを短時間で取得できるはずだと考えました。

世界最速T2スターへの道

まずGRE-EPIとGREの歪みの比を計算してみました(Fig.1)。

Fig. 1

 

 

 

 

 

 

 

 

当院の条件ではGRE-EPI は7倍の歪みでした。(空間分解能は同じにしています。歪む方向がGREは周波数方向、GRE-EPI は位相方向なのでどちらかの画像をswapし歪む方向を合わせます。blip時間は無視しています。)実際に健常ボランティアの脳幹部で視覚評価をしてみると、scan timeを考慮して4shotでも十分であると考えました。(Fig.2)

Fig. 2

 

 

 

 

 

 

 

 

Fig.3はMultiple microbleedsの症例です。SNRはやや劣りますがMultiple microbleedsの描出能は同等です。116人の患者619個のMultiple microbleedsを検証した結果、99%以上一致しました。

Fig. 3

 

 

 

 

 

 

 

 

Fig.4は超急性期脳梗塞症例です。Susceptibility Vessel Signが僅か8秒で良好に描出されています。一分一秒を争う超急性期脳梗塞症例では非常に有用です。

Fig. 4

 

 

 

 

 

 

 

 

 

また短時間撮像の利点を活かすことでTE20, 40の2種類を1分以内で撮像可能となり、Long TEによってMicrobleedsをより強調することが出来ます。 (Fig.5)。

Fig. 5

 

 

 

 

 

 

 

 

 

世界最強(最狭) T2スターへの道

次に「世界最強(最狭)T2スター」として、slice厚2.1mm(当院装置の最狭)に挑戦しました。

これにはGRE-EPI T2 *WIのSNRが低い(Fig.6)という唯一の弱点を克服する必要があります。

Fig. 6

 

 

 

 

 

 

 

 

加算回数を増やせばSNRは高くなりますが、そのために撮像時間を延長してはオシャレではありません(Fig.7)。

そこで我々は更なる工夫によって、撮像時間の延長なしでslice厚2.1mmを実現しました。

Fig. 7

 

 

 

 

 

 

 

 

 

一般的にT2*WI はLow flip Angleと思われがちですが、これは撮像時間を短縮するために仕方なくやっているのです。slice厚2.1mmで全脳をカバーするとTRは6000ms程度になり、Low flip Angleにしなくても、ほとんどの組織で縦磁化がほぼ回復します。そのためLow flip Angleにする理由やメリットはなく、むしろ信号をlossするだけです。健常ボランティアでflip Angle(FA)とSNRの関係を調べてみると、FA90°のSNRはFA40°の加算回数2~3倍相当でした(Fig.8)。また、コントラストもCSF以外はほとんど変化ありません(Fig.9)。これで撮像時間を延長せずにslice厚2.1mmが実現可能となります。

Fig. 8

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fig. 9

 

 

 

 

 

 

 

 

 

Fig.10にMultiple microbleedsの症例を提示します。

Fig. 10

 

 

 

 

 

 

 

 

撮像時間1分31秒のGRE T2*WIに対して、GRE-EPI T2*WIは35秒となり、3分の1の撮像時間にもかかわらず、描出能も明らかに向上しています。撮像条件をFig.11に提示します。この手法はどのメーカーのMRI装置でも撮像可能でほとんどデメリットがありませんので、是非皆さんやってみてください。

Fig. 11

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ライター紹介

皆さん、こんにちは。新別府病院 加藤 広士(かとう ひろし)と申します。

技師歴36年、MRI歴33年の生きた化石です。50歳にしてMR完全攻略している予定だったのですが、現実は甘くはないですね。25年ほどToshiba Userでしたが、縁あって8年ほど前よりGE Userとなりました。Toshiba時代には運よく画論で最優秀賞、優秀賞をとることが出来たので、「画論で金、Signa甲子園で金」を狙って毎年Signa甲子園にエントリーして、4回(病院としては5回)の本選出場はしていますが、どうしても金銀銅には手が届きません。残り少ない技師生命ですが、最年長受賞を目指して今年もウルトラCを画策中です。

Deputy Editor’s Comments

GRE-EPIによるT2*強調撮影は、短時間に磁化率効果に鋭敏な画像が得られ、脳内ではヘム鉄に加えてフェリチンの検出にも優れています。ただし、磁化率効果に鋭敏ということは、metal artifactも強くなります。当院では、T2スター強調画像は基本GRE-EPI(撮影時間30秒)ですが、義歯などによるmetal artifactが強力な場合は、あえてGRE(撮影時間1分)を追加で撮影します。磁化率強調とシーケンスの関係や、GRE-EPI-T2*WIで実際に撮影した画像など、過去に自分がまとめた記事がありますので、初学者の方はよろしければお読みください。

[石森]

 

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Takahashi Mitsuyuki国家公務員共済組合連合会横浜栄共済病院放射線技術科

投稿者プロフィール

診療放射線技師歴はとうとう33年となりました。現在は病院の技師長職を行っています。お昼の食事交代にMRI業務をおこなっています。ようやくSigna Worksが使える環境になりました。興奮しています。今でもMRIをやっていると、新しい発見があります。そして興奮します(笑) 。このブログを通して少しでもMRIの魅力を皆さまにお伝えしたいと思います。そして、皆さんと是非繋がっていきたいと思います。宜しくお願いします。

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