ITEM2025レポート〜Philips編〜

唐津赤十字病院の立川です。
昨年に引き続き、今年もITEMに参加し、Philipsブースの取材を行いましたので、ご報告させていただきます。
私(右から2番目)と市立函館病院の畠山さん(左)、昭和医科大学江東豊洲病院の秋葉さん(左から2番目)の3人で訪問しました。
濱野さま(右)に取材のご対応いただき、大変詳細に教えていただきました。ありがとうございました!!

次世代のWide-Bore 1.5T MRI「BlueSeal」

現在、世界で1700台以上、日本では120台以上稼働している、液体ヘリウムが7リットルのヘリウムフリータイプの「BlueSealマグネット」。
今回、このBlueSealマグネットを搭載し、イメージングから読影支援まで、シームレスにAIでリンクした次世代の70cmワイドボアの1.5T MRI装置の登場です。装置名は「BlueSeal」。
マグネットの名前がそのまま製品名になっているあたり、この装置への大きな期待がうかがえます。

新しい機能として、効率良くスタンバイモードに移行して消費電力を低減できる「PowerSave+」が搭載されています。電気代を年間100〜120万円も節約できるそうで、非常にエコにも力を入れているなと感じました。

SmartReadingにより撮像から読影支援までAIがサポート

「イメージングから読影支援までシームレスにAIでリンク」とはどういうことかというと、読影支援ソフトウェアにコンソールからアクセスできるようになっています (MRI装置とクラウドがダイレクトに繋がっている)。
通常、読影支援ソフトウェアで解析するにあたり、撮像パラメータが変わると解析結果が変わる可能性は十分起こり得ます。

そこで、例えば、ARIAの評価や前立腺のPI-RADSなど、様々な診療/撮像ガイドラインがありますが、SmartReadingという技術では、まず、撮像前に適切なプロトコルになっているかを確認してくれて、操作者が変えてはいけないパラメータを変えないように支援してくれます。
さらに、撮り終わった後の画像のチェックもAIが行ってくれるようになります。
これにより、患者さんを退出させた後に撮像した画像で解析できなかったなどのトラブルを防ぐことができます。

これらの機能は、ローテーターの多いご施設や、指導する側のMRIの責任者の方々をサポートしてくれる非常に良い機能だと思います。
また、読影支援ソフトウェアの解析結果はコンソールに戻ってくるようにできたり、そのままPACSに転送することも可能です。

Dual AIエンジンを搭載した新たなSmartSpeed Preciseが登場

『Dual AIで高速化と高画質化の全てを実現する「All-in-One」 AIイメージング』と発表されていたSmartSpeed Precise。
「これまでの高速化のAI-CSに、超解像のAIをくっつけただけではない」ようです。
まず、高画質化を学習した新しい「Precise Image Net」エンジンが最大のアウトプットができるように、これまでの高倍速を可能にしているCompressed SENSEのサンプリング技術と、高速化を学習したSmartSpeed AIのエンジンの設計をやり直したうえで、1つの再構成パイプラインに今までの技術を最適化して繋げているとのことでした。

分解能を高くした時に出るノイズ、高速化した時に出るg-factorノイズ、折り返しアーチファクトは、今までのAdaptive-CS-NET(SmartSpeedのAIエンジン)やCompressed SENSEの最適化されたサンプリング、Iterative SENSEの繰り返し再構成により除去した上で、1番高い画質のデータを最後のPreciseのAIエンジンに繋げて、リンギングアーチファクトの除去や高精細化を行っていくという流れのコンセプトで作られているようです。

実際の画像も提示されていましたが、0.5×0.5×2.0mmのSTIR画像や、頭部の高分解能のT2強調画像ともに、とても1.5Tの画像とは思えないほど、SNRが担保されたシャープで高精細な画像が得られていました。コントラストが良い1.5Tにここまでの高精細の画像が得られると3.0Tの必要性を問う声も出てきそうですね。

しかし、3.0Tはさらなるステージに進んでいました。
手関節における0.1mm×0.1mm×1mmの再構成分解能、もはやマイクロコイルでしか到達できなかった分解能が広範囲かつ短時間で可能になっていました。

高速化の最大倍速は64倍、最大マトリクスはnon-zero fillingで2048マトリクス、デノイズの強度は0~100%と任意に設定でき、適応シーケンスも97%と広範に対応できるのもSmartSpeedの魅力だなと感じました。

新しい次世代ユーザーインターフェースMR Workspace R12

基本的な画面はR5の見慣れた画面に戻りました。
Examcardのスキャンプロトコルの並びが縦に戻ります!
R12ではR5の良い部分が復活した一方で、アイコンが直感的で分かりやすい部分はR11の良い部分を継承しています。詳細パラメータだけでなく簡易パラメータも表記されているので、どなたでも使いやすいと思います。

最大6画面でプランニングすることもでき、検査の内容に合わせて自由度の高いレイアウトが選択できます。
さらには、1つの画面を大きくすることができ、全脊椎や全身の撮像時のプランニングが非常に楽になります。

また、R12には新しくEasy Scan Planという機能が搭載されています。
3D Surveyを最初に撮像することで、プラン画面でダブルオブリークなどの様々な角度に設定でき、事前に撮像後の断面の画像を確認することができます。
心臓ではいきなりShort Axisの撮像ができたり、四肢では今まで何回も位置合わせ画像を撮って断面を合わせていたのが、3D Surveyを1回撮るだけで十分になります。
3D Surveyのシーケンスも自由度が高く、mDIXONの1mm iso voxelを20secで撮ることができる点や、通常のGREでも撮れる点は、とても使いやすく非常に有用だと感じました。

さらには、各Station間の画像を合成(結合)するMobiViewが強化されたNext Generation MobiViewが搭載されています。
これまでのMobiViewのauto機能では各Station間の濃度調整がうまくいかず、正直使えない部分が多かったですが、R12では全身MRI・全脊椎・広範囲のMRAなどのMobiViewによる自動濃度合わせが高精度に行われるとのことでした。

特に、Whole Body DWIの後処理時間が90%短縮されるとのことで、マルチステーションMIPや画像結合、白黒反転、画像濃度調整、画像転送の全てがクリックなしで実現できるようです。
これは、ローテーターだけでなく、多くのユーザーが歓喜するのではないでしょうか?
当院では一刻も早くこの機能が欲しいと思いました(笑)。

その他にも多くのアプリケーションやコイル等が展示されていました

その他には、3D Synthetic MRにSmartSpeedを併用できるSmartQuant Neuro 3Dが初展示されていました。
撮像時間が長い3D Synthetic MR (3D-QALAS)がSmartSpeedで3分以下となると、臨床運用だけでなく、非常に多くの研究が行われるのではないでしょうか?

さらに、昨年のSmart Fit coilの続報として、膝の軽量コイルのSmart Fit Knee 3.0Tが展示されていました。
非常に軽量で、コイルの着脱もシンプルに行えるようになっていました。
コイル上面に穴があいており、中が見えるようになっているので、コイルを被せた後にも位置の微調整ができる点も嬉しいポイントかと思います。

また、3.0TのVega Gradient & Multi NucleiやPediatric Coachingが今年も展示されていましたが、詳細は昨年のITEM2024 〜Philips編〜もご覧いただけると幸いです。

おわりに

今年は、非常に多くの新しい技術が発表されていて、SmartSpeed PreciseはじめR12やSmartReadingなど、多くのユーザーの期待に応えた内容ばかりでとても感激しました!
Pediatric Coachingも導入する施設が増えて、鎮静しない小児MRIが増えると良いなと思います。

とにかく早く使ってみたい!というのが率直な感想で、今後使うのが非常に楽しみでとてもワクワクしました!ITEMに参加出来なかった皆さんに少しでも参考になりましたら幸いです。

以上、PhilipsブースからのITEM2025レポートでした!

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Tachikawa Yoshihiko唐津赤十字病院 医療技術部 放射線課

投稿者プロフィール

MRIの魅力に完全に沼っています。
新しいアイディアを生むために、先人の方々の創意工夫から学んだ知識と想像力を活かし、固定概念に捉われすぎないように心がけています。今後もMRIを通じて出会う方々との繋がりを大切にしながら、皆様にとって少しでも有益な情報を発信していけるように精進いたします。

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