★★体内金属周辺におけるDWIの脂肪抑制方法の違いが病変描出に与える影響

<新企画>「撮像のワンポイントアドバイス」

★~★★★までの難易度を設定し、MRIにおける基本的な注意点や撮像のポイントなどをまとめていくコンテンツです。初学者の方やローテーターの方など是非ご一読ください!

今回の「撮像のワンポイントアドバイス」の難易度は★ふたつです。

東海大学医学部付属八王子病院の大塚勇平(おおつかゆうへい)です。
皆さん、日々の検査の中で、DWIを撮像した場合、体内金属の影響で上手く撮れなかった・みれなかった経験はないでしょうか?今回は、そのような場合の解決策についてまとめてみました。

DWIの脂肪抑制におけるピットフォールとは?

拡散強調画像の脂肪抑制方法はいくつかあります。それぞれの長所や短所を理解した上で、見たい部位や疾患に応じて選択をする必要があります。それぞれの方法における脂肪抑制効果率および特徴について図1に示します。多くの場合、ルーチンで使用されているDWIでは、選択水励起であるSSRFや、周波数選択的なCHESS、さらにはSPIRなどの脂肪抑制法が選択されているかと思います。これは、脂肪抑制効果率が高いうえに、撮像時間の延長が少ないことが理由であると考えます。

日常診療では、この手法で上手く脂肪抑制のかかるDWIが撮像出来ており、問題は無いとは思います。しかしながら、我々MRIオペレーターは脂肪抑制法別の短所についても理解していないと、イレギュラーケースに遭遇した場合に対処できません。むしろ、気付かない可能性もあります。その理解しておくべき脂肪抑制法の短所というのが「B0不均一の影響」です。

図1. DWIにおける脂肪抑制法の違いによる脂肪抑制効果率および特徴

体内金属によるB0不均一の解決策として…

B0不均一の影響については、
①z軸方向に大きなFOVで撮像する場合や大量のスライス枚数で撮像する場合
②空気の影響を受けやすい頚胸部領域の撮像や体内金属の周辺を撮像する場合
に考慮しなければなりません。上記の①、②の場合においては、磁場不均一の影響を受けにくいSTIRを選択してDWIを撮像することが望ましいと考えます。

実際の症例から考えていきます。こちらの症例は、尿管腫瘍の精査目的でMRI検査の依頼がなされました。腰仙椎には術後の金属があり、ちょうど下部尿管が金属の近くを通ります。
当院ではルーチンのDWIにおける脂肪抑制法はSSRFに設定されており、そのまま撮像をした場合、尿管腫瘍の信号が消失しています(図2)。しかし、体内金属周辺の画像描出という事を考慮し、脂肪抑制方法をSTIRに変更して撮像してみると、ルーチンのSSRFで撮像した画像と比較して、どのスライスにおいてもSTIRでは尿管腫瘍が高信号に描出されています(図3)。
これは、SSRFでの脂肪抑制の場合、体内金属によるB0不均一の影響により選択水抑制となり、信号が消失したためであると考えられます。このような場合には、図1で示している各脂肪抑制法の特徴を考慮し、B0不均一の影響を最小限に抑える手法であるSTIRを選択することで、信号の消失がなく、腫瘍の信号評価が可能です。

図2. 体内金属周辺のDWI (脂肪抑制方法:SSRF)
図3. 脂肪抑制法の違いによる同一スライス間比較(上段:SSRF、下段:STIR)

「気づき」のきっかけは、全身DWIBSの検討から

当院では、体内金属周辺のDWIにおいて、STIRに変更してDWIを撮像するように指導しておりますが、これにはきっかけがありました。それは、全身DWIBSの撮像条件を検討しているときでした。1.5 Tesla MR装置における全身DWIBSは、確実な背景信号抑制が重要であり、z軸方向に大きなFOVで撮像したり、大量のスライス枚数で撮像したりするため、脂肪抑制法は「STIRのみ」が採用されています。特に、頚胸部領域のDWIBS撮像においては、STIRとSSRFを併用したDWIBSを検討した際に、腕神経叢部や一部の脊髄信号が消失することが多くありました(図4)。
これは前述したとおり、SSRFが磁場の不均一の影響を強く受ける脂肪抑制法であるために起きた事象です。そのため、STIRに他の脂肪抑制方法をhybridしないSTIR Onlyの脂肪抑制とすることで信号消失が無いDWIが取得できることが分かりました。

図4. 全身DWIBSにおける頚胸部領域の脂肪抑制法の違いが画質に与える影響

臨床でどのように役に立つのか?

T2WやT1Wで検出できているのに、DWIでは検出できない(信号が消失している)といった事象を最小限にすることに役立ちます。信号を消失させないためにも、STIRを脂肪抑制法としたDWIを撮像することで、目的部位を検出可能なDWIにすることが出来ます。

この手法では、脂肪抑制をSSRFやCHESS、SPIRなどからSTIRに変更するために考えなければならないことがあります。それは、STIRにすることでSNRが低下するため、NEX(加算回数)を増加させる必要があります。そのため、撮像時間が延長するという事を考えてください。そのため、ルーチンのDWIから脂肪抑制法をSTIRに変更するだけではSNRが担保できませんので、予め画像検証をしたSTIRのDWIを準備しておくことをお勧めします。

体内金属周辺のDWIでは、信号が消失したことで、所見があるにもかかわらず、「所見なし」と判断されてしまう可能性もあります。そのため、撮像している我々MRIオペレーターが気付くことが出来るかどうかが肝心です。
更には、この我々の気付きに加えて、脂肪抑制方法の一工夫をすることで常に患者さんにとって有益な画像提供をすることが出来ます。ぜひ活用してみて下さい。

ライター紹介

大塚 勇平(@東海大学医学部付属八王子病院)
MRIに魅了され、日々学びを深めています。
友人(同志)も増え、研究会や飲み会などでMRI談義をすることが楽しみです。
Web開催だけでなく対面形式の会も増えはじめ、学会・研究会などで多くの方々と議論できる環境にあることを幸せに思います。
私の顔を見かけた際にはお声がけいただき、色々とお話出来ると嬉しいです。

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Taiki Akiba昭和大学藤が丘病院 放射線技術部

投稿者プロフィール

昭和大学藤が丘病院の秋葉 泰紀(あきば たいき)と申します。MRI歴は8年目になります。
MRIは難しいとの固定概念があり苦手でしたが、綺麗な画像を撮像できた時の感動が忘れられず、今ではMRIが楽しいと日々感じております。学会や勉強会の際には、気軽にお声かけいただけましたら幸いです。よろしくお願い致します。

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