プレパレーションを知っていますか?

プレパレーションを知っていますか?

プレパレーションとは、治療や検査を受ける子どもに対して、認知発達に応じた方法で説明を行い、対処能力を引き出すような関わりをすることです。

本稿は、5年前のこちらの記事

「この物語(ストーリー)の続き」についてご紹介をさせてください。

小児MRI検査とプレパレーションビデオ

小児のMRI検査は、患児が医療体験を理解することができず、長時間の検査に対して主体的に協力することができない場合に鎮静を必要とします。それは、呼吸停止などのリスクを伴うものであり、その蓄積は神経発達に対しても潜在的なリスクがあることも懸念されています。医療現場においても、鎮静検査に伴う医師や看護師のスタッフの確保やトレーニングなど、安全性を担保するための努力、物質的負担、人的負担は決して小さなものではありません。

また、鎮静検査で個人的に印象に残っていることは、患児を鎮静するたびに不安な表情をされるご両親・ご家族の姿です。検査・治療を見守られるご両親・ご家族と医療体験に臨む子供たちに、もう少しだけ「安心」を届けられないかと考えた末に制作したのが、LEGOブロックを使ったMRIの検査説明用ビデオでした。

制作当時、自施設の患者さんへの検査説明に利用し鎮静せずにMRI検査を提供することができ、検査を受ける子供たちやご家族がとても喜んで下さいました。そして、当時の上司(技師長であり恩師)が「YouTubeで公開してみたらどうだ」 と背中を押して下さったことがきっかけの一つとしてあり、YouTubeに公開をしました。

多くの反響を頂き、たくさんの先生がSNSでシェア下さいました。私の施設に直接電話までしてくれて、使い方や運用などを聞いて下さる先生もいらっしゃいました。施設で患者さんに配布していたQRコード付きのチラシを小児科に置きたいと仰って下さる先生もいて下さいました。

私自身、本当に感謝を感じていた一方で、「困っていたのは自分だけではない」ということを同時に気づかせて頂いた貴重な体験でした。

私がYouTubeで公開した2018年、現場のそれぞれの努力でプレパレーションツールが手作りされていた当時の現状は、その後6年の時を経て大きく状況は変わっていったと思います。

相田典子先生がリーダーシップを下さり、また複数の企業が協力くださったことで、工夫を凝らしたアニメ、リアルな機器やスタッフが登場する高品質な映像が現在YouTubeで公開されています。日本語の動画のバリエーションが増え、自身が動画を手作りしていたときに想像していた理想的な未来が今ここにあることがとても嬉しく、そしてそんな日本医療を誇らしくも思っています。日本の子供たちがMRI検査を体験する環境は、この6年で大きく改善したのではないでしょうか。

シロクマンのMRIアドベンチャー(お子様向けMRI検査アニメーション動画)バイエル薬品株式会社

小児MRI検査説明用動画 キャノンメディカルシステムズ

小児放射線診療のインフォームド・コンセントを支援したい

プレパレーションビデオの制作を通して、素敵な出会いにも恵まれました。

-「実は核医学も同じで大変なんだ」

-「患児の数は多くないけど放射線治療もなんとかしたいんだよ」

核医学を専門とし小児検査の最適化に取り組む大脇由樹や放射線治療の体験ゲームやVRツールをプロトタイピングする医学物理士の針生将嗣の2人との出会いです。

そんな2人と意気投合し、「もっと医療体験を良くしたい、医療を受けた過去に囚われることなく、医療体験した経験が未来を創る価値になってほしい」そんな未来の話をしました。医療従事者の経験のみならず、自分たちが患者や家族として医療との接点を持った当事者としての経験が共鳴して、何か勝手な使命感を抱きました。周囲からは「そんなのできっこないよ」と言われる一方で、1人、2人、3人と共感してくれる心強い仲間が少人数ですが現れました。そして、「医療体験に価値を」という理念を、医療技術の枠を超えて実現するために、仲間と一緒に特定非営利活動(NPO)法人MedicalPLAYを立ち上げました。

現在、放射線診療のインフォームド・コンセントを支援するツール開発/普及に関する事業を現役の医療従事者・大学教員・企業人の仲間とともに取り組んでいます。

プレパレーションツール普及に向けたクラウドファンディングに挑戦します

仲間たちと一緒に、少しずつではありますが歩みを進め、私たちが作りたかったインフォームド・コンセントやプレパレーションを支援するツールが形になってきました。その一つが単純X線検査を説明する絵本「からだのなかをのぞいてみると…!?」です。

この絵本を医療現場に届けるために、NPO法人MedicalPLAYはクラウドファンディングに挑戦します。

NPO法人MedicalPLAYが学会展示を通して、医療従事者のみなさまに無償配布をします。学会展示には費用がかかるため資金を必要としています。

——————-

READYFORにて6/20より開始いたします。

もしよろしければプロジェクトページだけでも一度見ていただけたら幸いです。

https://readyfor.jp/projects/medicalplay-ehon-project

絵本「からだのなかを写真でみると…?」の全ページもこちらで閲覧することが可能です。

*6/27現在、ご支援を頂戴した皆様からの応援コメント一つ一つが涙が出そうになるほど嬉しく、私たちの宝物となっています。この場をお借りして御礼をお伝えさせてください。

——————-

一人でも多くの患者さんとそのご家族の医療体験がより良いものとなるよう、覚悟と信念をもって取り組みます。そのために、医療現場の先生と共に医療を創り、共に届けられることを望んでいます。

ここまで読んでくださりありがとうございます。

どうぞ応援とご協力をよろしくお願いいたします。

第60回小児放射線学会にて展示ブースを出展しました

6/21, 22 に第60回小児放射線学会にて初の展示出展をし、絵本「からだのなかをのぞいてみると…!?」のほか、開発中のMRI・核医学 検査体験ゲームやVR(ヴァーチャル・リアリティ)ツールなどを展示させて頂きました。絵本はブースに来られた先生に計60冊を無償配布させていただき、小児医療現場の検査説明に役立てて頂けたらと思っています。

検査体験ツール(ゲームやVR)は、将来的に検査を必要とした患者さんが「だれでも・どこからでも」アクセスできるようWebアプリとしてオープンソースとなるよう開発と整備を進めて参ります。

NPO法人MedicalPLAY: 初めての学会展示ブースにて。
左から大脇由樹 先生(MedicalPLAY共同代表 | 慶応義塾大学病院)、村田渉 先生(MedicalPLAY理事 | 駒澤大学 講師)、金井彩子さん(学生インターン生)、私(著者)

著者紹介

小野浩二郎(NPO法人MedicalPLAY 共同代表 | 医療機器メーカーにて画像診断機器・ソフトウェアの研究開発に従事)

医療にもっと関われるように数年前より企業へ移動しました。NPO活動をはじめ、さまざまな形で将来の医療に関われるよう、引き続き信念を持って精進して参ります。

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Takayuki Sakaiつくば国際大学 医療保健学部 診療放射線学科

投稿者プロフィール

MRIはルーチンを ただ撮るだけとしか考えていなかった技師が、この業界の多くの方に刺激をいただき、人の役に立ちたいと考えるようになりました。技師の知識や技術で救える患者数は圧倒的に変わると思います。様々なレベルの方に、価値のある情報を届けられるよう頑張ります!

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