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★ノンテクニカルスキル「傾聴技術」を患者接遇に活かす
- 2025/1/31
- BLOG, Education, 撮像のワンポイントアドバイス
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<新企画>「撮像のワンポイントアドバイス」
★~★★★までの難易度を設定し、MRIにおける基本的な注意点や撮像のポイントなどをまとめていくコンテンツです。初学者の方やローテーターの方など是非ご一読ください!
今回の「撮像のワンポイントアドバイス」の難易度は★ひとつです。
テクニカルスキルとノンテクニカルスキル
スキルには、大きく分けて「テクニカルスキル」と「ノンテクニカルスキル」の2つがあります。MRI撮像においては、テクニカルスキルであるパラメータ調整や撮像における創意工夫などが非常に重要であることは、みなさんご承知かと思います。しかし、患者さんの協力を得られなければ、テクニカルスキルを活かす場面は限られてしまいます。
今回は、テクニカルスキルを最大限に活かすためにも、ノンテクニカルスキルである患者接遇に活かせる「傾聴技術」についてご紹介いたします。
傾聴するための大前提「内的準拠枠」の理解
例えばアップルという単語を聞いてみなさん何を想像しますか?
Fig.1のように、人によって、赤りんご・メーカー名・青りんご・アップルパイなど想像するものが異なるかと思います。人が物事を判断・認識するのに使う基準を「内的準拠枠」と言います。これは今まで生きてきて経験してきたことを基準に考えるということで、近い言葉で表すと「価値観」です。
患者接遇時に、患者さんの考え方が理解できない場面もあるかと思いますが、患者さんはさまざまな価値観をもっています。「この患者さんはなぜこのように感じるのか私には理解できない」と決めつけるのではなく、各々に内的準拠枠があることを理解することが、傾聴、すなわち耳を傾ける上で重要となります。
患者接遇に生かす傾聴技術
カウンセリング学における傾聴では、さまざまなスキルが求められ、繰り返し訓練することが必要となります。今回はそのスキルの中でも、明日からすぐ使える、また医療従事者に必須となる技術として「事柄への応答」と「感情の伝え返しと共感」を中心にお話します。どちらも患者さんが言ったことをそのまま伝え返すといった、簡単で誰でもできる技術です。
Fig.2、Fig.3に2つのスクリプト(会話)があります。患者さんは50歳代の女性、MRI検査で来院され、検査時に質問から始まった会話です(~の部分は実際の検査で良くある内容を想像してみてください)。BはAに比べて、患者さんが言ったことをまずは受け止め、否定せず伝え返し、感情への共感をしています。言った事柄をそのまま伝え返し、さらには感情にも共感すること、これがノンテクニカルスキルである傾聴技術を使った会話になります。
「メラビアンの法則」
患者さんの言った事を伝え返す上で重要となるのが、「メラビアンの法則」です。「言語(verbal)、聴覚(vocal)、視覚(visual)」それぞれの「V」を取って「3Vの法則」とも言われています。
コミュニケーションをとる際、話の内容が重要だと思いがちですが、実際には言語情報はわずか7%しか優先されていません。言っている言葉(言語的表現)と口調や表情・態度といった聴覚や視覚情報(非言語的表現)に矛盾がある時に、人が受け取るメッセージは、非言語コミュニケーションだけで93%を占めているといった法則になります。
例えば、「お疲れ様でした」や「ありがとうございます」は、言葉としてはとても素晴らしいのに、『不機嫌』『軽い声のトーン』で言うと、とても印象が悪くなってしまいます。患者さんへ伝え返す時には、言葉の意味に合わせた口調や表情・態度が重要となります。
撮像前の患者接遇で重要な「ラポールの形成」
自分の内的準拠枠に当てはめず、患者さんにそのまま伝え返す事で、患者さんの中で「私の気持ちを理解してもらえた(聞いてもらえた)」という感情が生まれ、ラポールの形成(信頼関係)へとつながります。これから撮像する上で、患者さんに協力してもらうための説明、例えば体動防止や息止めの説明に耳を傾けていただくためにも、ラポールの形成は非常に重要となります。
患者さんの協力があってのMRI検査ですので、患者さんの声に耳を傾ける「傾聴技術」をぜひ明日から実践してみてください。
ライター紹介
東京メディカルクリニックの荒木智一(あらき ともかず)と申します。
埼玉の大学病院で7年間研鑽し、今の画像センターに転職してからは6年間MRI撮像に携わり、患者さんのためには何ができるのか日々考え、寄り添った撮像を心掛け、奥深いMRIを勉強しております。毎日が新しい発見のMRIに魅力を感じながらも、日々奮闘しています。
一方全く違う領域で、放射線被ばくカウンセリングも専門としております。カウンセリング理論の中で、傾聴技術の力に感銘を受け、医療現場に広がるように研究と活動も行っております。
研究会や学会などで見かけた際は、是非気軽にお声がけ頂けますと幸いです。
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