SSGR自由自在@SIEMENS

はじめに

岡山済生会総合病院の吉村祐樹です。

2017年2月10日掲載の『DWIにおけるSSGRとCHESS, STIRについて(補足説明)[』の記事においてSIEMENSの装置ではSingle Shot-EPI(以下、SS-EPI)のSTIRでSSGRが強制的に付加されているためnull pointが定まらないという問題点がありました。

今回はその問題を解決し、null pointを出現させる方法をご紹介したいと思います。

SSGR強制付加による問題点は上の記事を、また、SSGRの原理についてはMRI応用自在などをご覧ください。


SS-EPIのSTIRでnull pointを出現させる

そもそもSIEMENSにはSSGRを設定するパラメータがありません。そこで、SS-EPIのSTIRで強制付加されているSSGRを間接的にOFFにし、null pointを出現させる方法を説明したいと思います。

使用装置はSkyra 3T、バージョンはVE11E、XA30の両方で出来ることをオリーブ油を使ったファントム実験で確認しています。この後出てくる画像はすべてXA30バージョンのものになります。

まず、脂肪抑制法にSTIRを設定するとSTIR+SSGRとなります。
さらにFat Saturation(以下、FatSat)を入れFatSatの強度をWeakにすることで強制付加されていたSSGRがOFFとなり、STIR+FatSatの状態になります。

そして、SystemのTx/Rxのタブの中にあるAmplitudeの横にある[…]マークを押すとRFパルスのAmplitudeを任意に設定できるようになるので、ここでFatSatに相当する”AddCSaCSatNS 1H”と”SLoopFCSatNS 1H”の数値を0にします。するとFatSatのパルスが空打ち状態となり無効となるためSTIRのみの設定が完成します。

ちなみにこのFatSatのパルスは2発打っているようで、両方とも0にしないとFatSatが入ってしまいます(RESOLVEの場合は1発で”SLoopFCSatNS 1H”のみです)。

また、AmplitudeとはRFパルスのシンク波にかかる電圧の実効値を示しているようです。以下に簡単な実験結果を示します。

SS-EPI nullが今回説明した手法で撮像した画像ですが、ケミカルシフトしたオリーブ油が写り、その後信号が下がっていきnull pointが出現していることがわかると思います。また、グラフの縦軸の信号強度がマイナスを表示しているのはケミカルシフトしたオリーブ油に周囲のPVAの信号強度が加算されているため、(オリーブ油-PVA)の信号強度として表示しているためです。

SS-EPIでは上記のような操作をしないとSTIRのみとはなりませんが、RESOLVEはSTIRを設定してもSSGRが強制付加されておらず、純粋なSTIRの撮像が可能のようです。

以上より、通常のバージョンやシーケンスで撮像出来るため、どのご施設でもnull pointを出現させることが可能となり、DWIBSなどの画質検討に役立つと考えます。

その他の脂肪抑制法でのSSGRの挙動

せっかくなのでSS-EPIとRESOLVEで各種脂肪抑制法におけるSSGRの挙動とAmplitudeを0にしたときの状態を調べてみたので、以下の表にまとめました。

SS-EPIとRESOLVEで違う点は、先に述べたSTIR以外に脂肪抑制なしの場合でした。RESOLVEでは脂肪抑制なしの場合は当然脂肪が写ってくるのですが、SS-EPIでは脂肪抑制なしの設定でも脂肪抑制がかかった画像が取得でき、これはSSGRがこのシーケンスには組み込まれていて、その効果が出ているということがわかりました。

Amplitudeに関しては、SPAIRでは”optfsOptfs 1H”を、STIRでは”SLoopIRsel 1H”を0に設定するとそれらのパルスを空打ちさせることができます。

上の表よりSSGRやその他脂肪抑制法を間接的にユーザーがON/OFFできるようになるため、様々な脂肪抑制法を使うことが出来るようになります。ただし、装置やバージョンによってどのような状態になるのかはわからないので、気になる方はご自身の施設の装置でご確認ください。また、Amplitudeはメーカー曰く、ユーザーが設定するパラメータとしてはあまり推奨していないようなので、そのあたりも含めて各施設の判断と責任のもとで使用してみてください。

SIEMENSでGyro Cupネタやってみた

最後に、上記のことを応用して、PHILIPSのGyro Cup2022でGold Awardを受賞した拡散強調画像の脂肪抑制法をSSGRのみで撮像するLION DWIをSIEMENS装置でやってみました。

先ほどの表よりRESOLVEでSSGRのみの状態となるような設定とSPAIR+SSGRに設定した画像で比較してみると、SSGRのみの方がノイズが低減されているように感じます(Windowはそろえています)。これは脂肪抑制パルスが打たれないことによりMT効果が低減されたためと考えます。

また、SSGRのみの場合は脂肪抑制効果を高めるためにRF Pulse TypeをLow SARに設定することをお勧めします。これによりRFパルスの印加時間が延長し、スライス選択傾斜磁場の傾きが小さくなることでケミカルシフト量を大きくすることができるからです。RF Pulse TypeがNormalだとケミカルシフトした脂肪の消え残りが少し目立ちます(下図、黄色矢頭)。

SIEMENSではSSGRを直接設定できないため、LION DWIは撮像できないと思い込んでいました。
しかし、過去の経験や知識を自身の引き出しから取り出し、試行錯誤することで撮像することが可能となりました。これができたときには、やっぱりMRIは面白い!と感じた瞬間でした。


ライター紹介

吉村祐樹(岡山済生会総合病院 放射線技術科)
RADっていいとも(41)や過去の記事でもお世話になりました。
こちらもご覧ください。

【RADっていいとも】

【DWIにおけるSSGRとCHESS, STIRについて(補足説明)】

Chief Editor’s Comments

Siemensの装置で、STIRとSSGRが分離できない(セットでしか利用できない)問題を解決したすばらしい工夫だと思います。筆者の言われる通りこれにより解析が進むと思います。



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吉村 祐樹岡山済生会総合病院 放射線技術科

投稿者プロフィール

DWIとパラメータをいじることが好きです。MRIという名のテレビゲームをひたすら毎日やっている感覚です。このゲームは一生クリアできそうにありませんが、真摯にMRIに向き合っていきたいと思います。

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