MRIfan.net編集委員を務めさせていただいている等潤病院の鈴木大介です。
アキレス腱の検査といえばどのようなシーケンスを思いつくでしょうか。アキレス腱描出に有用な撮像法はいくつかあると思いますが、私からは「シングルエコーによるアキレス腱描出シーケンス」についてご紹介させていただきます。宜しくお願い致します。
背景
当院はCanonの3T装置を使用しています。Canonでは、アキレス腱描出に有用な撮像法としてUltra short TE(UTE)があります。これは、short TE(0.1ms)とlong TE(2.0ms)をサブトラクションすることでアキレス腱を高信号に描出するという方法です(Fig. 1)
しかし、アキレス腱の描出に有用な反面、デメリットも存在します。UTEは、サブトラクションをするため2回の撮像が必要となります。また、パラメータ調整があまり出来ないため撮像時間の短縮が難しく、約6分の撮像時間がかかります。これを2回撮像するため約12分かかってしまいます。さらに2回の撮像の間に体動などがあるとサブトラクション不良になる可能性があります。
そこで、新たなアキレス腱描出シーケンスの条件として以下のことを考えました。
・サブトラクション不要
・任意断面での形態評価が可能な高分解能3D撮像
・撮像時間はなるべく短く(追加撮像として検査時間の圧迫を少なく)
シンプルにField echo 3D
上記の条件を満たすことができるシーケンスを考えた結果、最もベーシックなGradient echo 3Dシーケンス、CanonですとField echo 3D(FE3D)シーケンスが設定条件の縛りが少なく、新たなアキレス腱描出シーケンスの条件に合うものが構築できるのではないかと考えました。さらに、白黒反転画像を作成することでアキレス腱を明瞭に描出できると考えました。
撮像条件もシンプルに
高分解能3D撮像の条件を満たすため、設定可能な最小スライス厚0.5mmにし、任意断面での形態評価を可能にするため面内分解能も0.5mm×0.5mmのisovoxelにしました。TRおよびTEは、0.5mm isovoxelにした時に設定可能な最小の値にしました。
FAは5~30°まで変更して撮像し、SNRとCNRを測定した結果、FAは10°に設定しました。撮像条件をTable.1に示します。
新たに構築したシーケンスで健常ボランティアを撮像しました。
取得した画像を白黒反転することでアキレス腱が明瞭に描出されていることがわかります。白黒反転画像から作成した0.5mm厚のCORとAXのMPR画像においても、アキレス腱を詳細に評価することが可能です。また、撮像時間は約3分30秒ですので検査時間の圧迫が少なく、診断に有用な画像を取得することができます(Fig. 2)
臨床症例
FE3Dで撮像したアキレス腱断裂の症例を提示します。アキレス腱および断裂部が明瞭に描出されていることがわかります(Fig. 3 矢印)
最新の装置でなくても撮像可能
今回構築したシングルエコーFE3Dは、使用装置によってスライス厚や分解能に多少の違いはあるものの、撮像条件の調整が容易で最新の装置やアプリケーションがなくても撮像可能な汎用性の高い撮像法です。
さらなる高速高分解能化への期待
今回、最新のアプリケーションは使用しておりませんが、Deep Learningを用いたデノイズ再構成技術であるAiCE(Advanced intelligent Clear-IQ Engine)や3D高速化技術であるFast 3Dを併用することで、さらなる高速化・高分解能化が可能です。実際にAiCEとFast 3Dを併用し、面内分解能を0.3×0.3mmにして正常ボランティアを撮像したところ、より早くより高精細な画像を取得することが可能でした(Fig. 4)。まだ検討中の段階ですが、より有用な撮像シーケンスになると期待しております。
是非、皆様のご施設でも撮像してみてください。
ライター紹介
東京都足立区にあります等潤病院の鈴木大介と申します。
学生の頃にMRIに興味を持ち、MRIの楽しさと難しさ、奥深さを日々感じております。皆様に少しでも興味を持っていただけるような情報を発信していきたいと思います。
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