★ポジショニングのポイント ~肩関節~

<新企画>「撮像のワンポイントアドバイス」

★〜★★★までの難易度を設定し、MRIにおける基本的な注意点や撮像のポイントなどをまとめていくコンテンツです。初学者の方やローテーターの方など是非ご一読ください!

今回の「撮像のワンポイントアドバイス」の難易度は★ひとつです。

等潤病院の鈴木大介です。今回は、肩関節検査のポジショニングについて、まとめましたのでご覧ください。

肩関節の検査といえば...

肩関節の検査というと、どの様なイメージを持たれるでしょうか。
私個人としては、
・ポジショニングが大変
・オフセンターによる磁場の不均一(脂肪抑制不良)が起こる
・体動や呼吸によるアーチファクトが生じる
・患者さんにとっては体勢の辛い検査
といったイメージがあります。
そのため、画像がきれいで、患者さんが辛くない検査を目指す必要があります。そこで重要になってくるのが「ポジショニング」になります。

ポジショニングのポイント

① 半側臥位
検側の肩を可能な範囲で寝台中心にするために、非検側にタオルやクッションなどを入れて、検側の肩甲骨が寝台になるべく平行になるようにします(半側臥位)(Fig.1)。この体位にする理由は体動抑制のほかに、画像の反転(coronal画像などで肩甲骨と寝台が45°以上の角度があると右肩が左肩のように表示される)や撮像断面が変わってしまうのを防ぐためです。
ただし、半側臥位は疼痛のある患者さんには辛い体位ですので、患者さんの状態を考慮してください。

Fig.1 左:半側臥位 右:半側臥位の時のaxial画像

②腕の高さ
肩関節が寝台から離れた位置にある場合、肘が寝台に落ちて肩甲骨平面と上腕骨方向のずれが大きくなってしまいます。そのため、検側の腕の下にクッションなどを入れて、肩と腕が平行になるようにします(Fig.2左)。また、疼痛のある患者さんは前腕を少し高くするだけでも楽になります(Fig.2右)。

Fig.2 左:肩と腕が平行 右:前腕部挙上

③ 中間位
ポジショニングは中間位にします。半側臥位の場合は手のひらを上に向ける(Fig.3左)、痛みが強いといった理由などで半側臥位になれない場合は、手のひらを横にして、親指を上に向けたポジショニングが中間位になります(Fig.3右)。その際、肘の辺りに砂嚢などを置いて、上腕がなるべく正面を向くように意識します。また、前腕部の過度な内旋や外旋にも注意してください。
患者さんの疼痛が強く、中間位が無理な場合は内旋位など、なるべく楽なポジショニングにしてください。

Fig.3 左:半側臥位時の中間位 右:半側臥位になれない時の中間位

また、患者さんにスペーサー等を持たせるとモーションアーチファクト低減に有効です(Fig.4)。

Fig.4 スペーサー等を持たせる

呼吸のポイント

体とコイルが一体化しているため、呼吸が大きいと体動アーチファクトが顕著になります。さらに、胸を膨らませる胸式呼吸では胸と肩が動いてしまうため、腹式呼吸を意識してもらうことが大切です。
検査前には、以下のような説明が大事になります。
・検査中は深呼吸など大きく息を吸ったり吐いたりしないようにしてください。
・胸を膨らませるような呼吸をすると胸と肩が動いて画像がブレてしまいます。
・検査中は、お腹を膨らませるような呼吸を意識してください。
また、患者さんに状態を聞きながら、痛みや苦しさを伴わない程度に砂嚢などを置くことで動きを抑制することが可能です(Fig.5)。

Fig.5 砂嚢を置いて動きの抑制

+αのポイント

 寝台を磁場中心に動かした後、隙間があることで体を動かせてしまいます(Fig.6左)。可能なら砂嚢などを詰めて、隙間を埋めて固定する方法も有用です(Fig.6右)。
 当院では行っていませんが、上肢を牽引することで疼痛のある患者さんも楽になり、モーションアーチファクトが軽減します。また、中間位のポジショニングが容易になります。

Fig.6 左:磁場中心での隙間 右:隙間を埋めた状態

以上、肩関節検査のポジショニングのポイントについて解説致しました。
患者さんの負担が少なく、きれいな画像を取得する方法として高速撮像技術や体動に強いシーケンスなどありますが、撮像前のポジショニングも非常に大切です。
今回の記事が検査の一助になれば幸いです。

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Daisuke Suzuki等潤病院 放射線科

投稿者プロフィール

東京都足立区にあります等潤病院の鈴木大介と申します。
学生の頃にMRIに興味を持ち、MRIの楽しさと難しさ、奥深さを日々感じております。皆様に少しでも興味を持っていただけるような情報を発信していきたいと思います。

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