はじめに
はじめまして。茨城県筑西市の協和中央病院に在籍しております、針貝昇平と申します。今回執筆の機会を頂きましたので、rDWIというシーケンスについてご紹介させて頂きます。
シーケンス作成の背景
脳卒中での緊急検査や認知症患者さんの頭部検査において、体動のためDWIすらまともに撮像できない!といった症例に遭遇することはありませんか?
私も「DWIくらいなら何とかなるだろう」などと甘く見て、痛い目に遭った記憶があります。何とかならないものかと思案していたある日、何の気なしにDTIを撮像・処理していたところ、あることに気が付きました。
撮像中に動いてしまった患者さんの画像に対して「DWI registration」処理を実行すると、まるで動いていなかったかのように見えるではありませんか!詳細は割愛させて頂きますが、この機能は画像の輪郭を抽出し、基準画像(通常はb=0画像)にfittingさせる(3軸すべてに対して!)というものです。
DTIでは主としてMPG印可軸による歪みの量・方向を集束させるために使用しますが、輪郭のfittingという観点から体動の補正にも使用できると確信し、DWIモードでこの機能を活用することにしました。
試行錯誤の末、rDWI(registrated DWI)というシーケンスを考案しました。当院ではこれ以降DWIの再撮がほとんど無くなりました。体動でお困りの皆様にぜひ活用して頂きたく、詳細を解説していきます。
シーケンスの仕組みと作成の要点
まず、前提として「一般的なDWIシーケンス」にregistrationを適用しても効果は得られません。通常、high b部分は内部で加算撮像が行われており、動きも加重平均化されて「既にぶれた画像」になっているからです。最大限この補正機能を活かすためには、「画像が傾いていること自体は問題ないが、補正に使われる各シリーズはブレていないこと」を満たすような撮像をすれば良い、すなわち「DWIの時間分解能を上げ体動をreal-timeにdynamic的に収集する」必要があります。
PHILIPS社製装置ではDWIのdynamic撮像はできないため、ここではb値を1ずつ変化させたmulti b(b値1つがdynamic1回に相当)での撮像とします。NSAやaverage high bでの内部加算は行わずにひたすら「体動を切り分けて収集する」事に注力します。撮像後はDWI registrationを実行し、処理後画像をcumulation(b=0は除く)すれば完成です。しかもこの一連の処理はすべてpostprocessに組み込めるため、初心者でも問題なく扱えます。(図1,2)
要点のみをまとめると
・multi b factor を使用
・average high b は使用しない
・NSAは「1」
・minimum number of packagesも「1」
・SNRの調整は、加算回数ではなくnumber of b factorsのみで行う
これで収集できれば、あとはregistrationさんが何とかしてくれます(笑)
使用例
救急撮像から長時間のthin slice撮像まで何にでも適用できます。効果はご覧の通りです。(図3,4)
少し変わった使い方だと、「補正前後の差分画像」を作成することでシーケンス中に動いた方向・量を視覚化することができます。固定具・固定法の効果確認などに利用できるかも?(図5)
最後に
本シーケンスで少しでも皆様が体動から解放されましたなら幸甚です。拙文にお付き合い頂きありがとうございました。
Chief Editor’s Comments
もともとmulti-b収集は、体外のアーチファクトを防ぐ目的で使用されたりしていましたね。通常の撮影(single bで加算)を行うと、体外のアーチファクトも加算されてしまいますが、multi-b収集では、1NSAにおけるアーチファクト信号は弱いので、表示閾値に達せず見かけ上「消える」ため、これを後から加算すれば、体外アーチファクトがない画像が得られるという利用法です。
このmulti-b収集にregistration機能を加えると、位置補正がなされた画像を加算できるという発見は、あっと驚く工夫だと思いました。
これを脳外で用いる場合、参照するb=0画像の輪郭がはっきりとした部分には役立つ可能性があります。一方Coronal画像は、上下端の輪郭が不明瞭なので、使用できなさそうですが、工夫できると応用範囲が広がると感じました。
差分画像の提案も含め、これからの応用が本当に楽しみです(高原)
ライター紹介
協和中央病院 放射線技術科 針貝昇平
診療放射線技師として駆け出してから、いつの間にか14年の歳月が流れています。恩師の言葉「知的好奇心は何者にも勝る」を実践すべく、日々精進しております。先日も子供とテレビを見ていて「閃いた!」となる場面がありました。何でもヒントになるMRIの世界って素晴らしいですね。
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