皆さんこんにちは。MRIfan.netの編集委員を務めております市立角館総合病院の千葉と申します。今回はUltra-short TE(UTE)使用時の固定具使用に関する注意点についてお届けします。
近年、UTEは様々な部位に応用可能です。部位によっては固定具等を使用し、ポジショニングを行う場合もあるかと思います。綺麗な画像を得るために、どのような注意をしなければいけないのかを解説していきます。
UTEとは
UTEとはUltra-short TEの略で、超短時間のTEを用いるシーケンスです。例えば、GEのSilenzや、SiemensのPETRAが該当します。RFコイルにおいて、通常よりも極めて短いRF印加による励起が行われ、励起後の瞬間から信号受信が始まります。この時、RFコイル側は送信時モードから受信時モードへμ秒オーダの高速切換が行われ(Ultra-Fast RF Switching)、TEはおおよそ数十μsecとなります。超短時間のTEであるため、通常のTEではT2減衰してしまう信号をUTEでは捉えられる可能性があります。
この特性を活かし、頭部ではコイル後のfollow-upに使用することで金属アーチファクトを減らしたり、四肢における腱の描出や、骨皮質の信号が捉えられることからBone imagingにも使用されます。このように、多くの臨床応用が広がっています。
UTEにおける固定具の見え方
人体において今まで見えなかったものが見えてくるということは、撮像領域に存在する固定具にも影響がある可能性があります。
実際に固定具が写り込んだ例を見てみましょう。(Fig.1)
UTEで撮像したT1強調像では、頭部の周囲に信号が見られます。赤矢印は側面に配置して頭部を押さえるクッションで、黄矢印はコイル内の下面に敷いているクッションです。これらは、通常撮像しているT1強調像には写り込んできません。このように、UTEでは普段問題なく使用している固定具も姿を表してくるのです。
固定具の種類による描出
固定具といっても様々な種類がありますが、どのような固定具が適しているのでしょうか。
そこで、固定具の種類による描出について実験を行いました。用意したのは、メーカー既製品の固定具、磁場不均一の補償に使用される米、バリウム、発砲スチロール、スポンジの5種類で、各固定具を並べてUTEで撮像した画像を見ていきます。(Fig.2)
Fig.2より、米は顕著に信号を持つことがわかります。
他は全て無信号に見えますが、window条件を変更すると、メーカー既製品では辺縁が縁取られた形が見えてきます。(Fig.3)
さらに、固定具を置いた位置の信号を、条件を変化させて計測しました。(Fig.4)
バリウム、発砲スチロール、スポンジは撮像条件を変化させてもバックグラウンドノイズよりも高い信号は検出されませんでした。このことからUTEを用いた撮像時の使用に適していると示唆されます。
メーカー既製品の固定具は条件によっては目立ちませんが、目視可能であり代替えを検討するべきと考えます。米はいずれの条件においても顕著に信号が検出され不適切であると思われます。
以上の点から、コイルの均一性が良好な場合は、スポンジなどが使い勝手が良さそうです。コイルの均一性が悪かったり磁場が不均一な場合は、固定具のフレキシビリティや硬さに対する患者ストレスを考慮すると、バリウムが最適と考えます。
日常使いだからこその注意点も
各種固定具を準備する際に、汚れ防止・感染対策などで周囲を布で覆うと、目視では確認できない汚れの付着が信号として現れる場合があります。周囲を覆う物についても、ビニールなど安価に取り替えが可能なものが適切です。
いかがだったでしょうか? 固定具が写り込んでも画像所見自体には影響しないのですが、やはり見た目には気になりますし、読影者の集中を妨げる要因にもなると思います。小さなことですが、こだわりを見せられる部分かと思います。皆様の参考になりましたら幸いです。
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