日立メディカルテクニカルアカデミー訪問

 

2019年1月26日(土)に茨城県診療放射線技師会のMR研究会メンバー有志4名で、千葉県柏市にある日立メディカルテクニカルアカデミー(HTA)に見学に行ってきました。日立製作所ヘルスケア柏事業場は、常磐自動車道の柏インターから降りてすぐの十余二(とよふた)工業団地の中にあり、HTAは工場から道路を挟んだ反対側にあります。こちらではユーザーやサービスエンジニアのトレーニングを行う施設で、様々な画像診断機器が医療機関と同様、稼働状態で設置されています。今回私たちメンバー一同は、日立製作所製1.5TMRI装置ECHELON Smartを実際に操作しながら、いろいろな新機能やアプリケーションを体験させて頂きました。

※ITEM2018で日立製作所ブースの記事を書かせていただきましたので、こちらも参考にしてください。

左から勝山さん(茨城県立中央病院)、砂森さん(水戸済生会総合病院)、石森(聖麗メモリアル病院)、本元さん(茨城県立こども病院)

HTAの外観。向かって右側にMR、左側にCTや透視などがあります

注意喚起ポスターは、さすが日立というべきか、オープン型装置(AIRIS)でした

 

ECHELON Smartには”Auto Pose”という自動位置合わせ機能があり、あらかじめ組み込まれれたデータベースをもとに、頭蓋内の形態を認識して頭の傾きを補正するだけではなく、自動でOMラインやAC-PCラインのロカライズをしてくれます。特別な操作など何も必要なく、一瞬で位置合わせが行われます。現在は頭部だけですが、脊椎などの自動位置合わせも開発中とのことでした。

ご存知の方もおられるかと思いますが、日立製作所製の装置はなんとTOF-MRAやT2*WIなどのGRE系シーケンスに体動補正(RADAR)の併用ができます。上の画像は体動のある患者さんのTOF-MRAで上段が補正なし、下段が補正ありです。撮影時間の延長はほとんどありません。対応していただいた日立製作所の営業さんは「見れないよりはマシな程度です」と非常に控えめなコメントでしたが、実際のところどの程度の補正効果があるのか試させて頂きました(いま考えると、こんな無茶振りな企画をよくぞ通してくれたと思います)。

砂森さんに被験者になっていただき、まずは体動のない通常のMRA撮影(比較用)。

こちらが体動あり(RADAR補正付き)MRA画像です。砂森さんによると頭部を左右30度くらいずつ傾けたり、顎を上げたり下げたり、撮影中はずっと動いていたそうです。原理としては、動きによる位相のズレを補正することで画像のブレを抑制するそうですが、予想をはるかに上回る体動抑制の効果の高さにびっくりしました。私が勤務する病院(聖麗メモリアル病院)では、高度に意識障害のある患者さんを撮影する機会が多いので(救急来院する脳卒中の患者さんは鎮静不可)、この装置を使える施設がうらやましいです。

体動補正の効果に驚く砂森さん

 

私も実際に中に入って試させて頂きました。通常モードも確かにうるさいですが、耳栓がなくても平気なレベルです。そして静音モードの場合は、永久磁石型装置のスキャン音より少々大きいかな?という程度で、まったく苦痛ではありません。技術資料(上図)によると、人間の耳に対しては1000Hz付近が最も耳障りなので、このあたりの周波数成分を抑制すれば良いとの事です。この静音化技術は、日立製作所中央研究所によるコンピュータシミュレーションで実現したそうです。

ペンシルビーム型の血流抑制(プリサチュレーション)することで、血行動態を把握する”BeanSat”という技術です。例えば脳血管バイパス術の吻合部を評価したり、脳血管撮影におけるMATASテストのような情報が得られるとのことでした。

BeamSatのプリサチュレーションパルスは上の図のように印加されます。抑制効果は非常に強く、ほんのちょっとでも設定領域に血管が重なると、それ以降の血流信号が抑制されます。

実際に撮影してみた画像です。プリサチュレーションパルスは左右それぞれの内頚動脈に設定しました。微妙な左右差が興味深いです。

こちらは上腸間膜動脈(SMV)の血流を抑制すると、脾静脈(SpV)の血流が肝右葉に優位に流れるようになることを示す画像です。これは面白いですねえ。

WIPですが、”Iterative Processing”による脳の高速撮影では、3分もかからずに、脳卒中診断に十分なクオリティの画像セットが得られます。

もちろん頭部だけではなく脊椎や骨盤内、四肢など、どの部位にも応用可能です。

FatSep(DIXON法)による全脊椎撮影。これでたったの12分24秒!

いずれもWIPですが、QPM(Quantitative Parameter Mapping)と「QSM(Quantitative Susceptibility Mapping)です。QPM(定量的パラメーターマッピング)は、いわゆるGEでいうMAGiCで、一度のスキャンでT1強調画像,T2強調画像,FLAIR,プロトン密度強調画像などを得ることができる技術です。GREベースのシーケンスなので、MAGiCでは不可能だったT2*強調画像や、QSM(定量的磁化率マッピング ー 物質固有の磁化率を推定し化学組成などを類推)を得ることができるそうです。

ガントリの中は、LEDライトでとても明るく照らされています。

「最近、右膝が痛い」という勝山さんの膝を撮影してみました(ノリノリの砂森さん)

冒頭にも書きましたが、HTAには様々な装置がいつでも使える状態で設置されています。

HTAの正面玄関前ロビーには、国産CT1号機が展示されています。砂森さんが若い頃にこの装置を操作してたことあるらしく、日立製作所の方から逆に質問攻めになってました。

隣には、超音波装置もありました。プローブが今では考えられない大きさです(笑)

 

日立製作所ヘルスケアの皆様、大変お世話になりました!

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Fumio Ishimori医療法人聖麗会 聖麗メモリアル病院 放射線科

投稿者プロフィール

茨城県北の脳外科専門病院にMR専従技師として勤務しています。昨年、8年ぶりに勤務先のGE製MR装置がバージョンアップされ、Deep Learning画像再構成(Air Recon DL)が使えるようになりました。また最近は、都内の脳外科クリニックに月2回ペースで勤務するようになり、キヤノンユーザーにもなりました。いまだに覚えることがたくさんありすぎて困ってます。猫を多頭飼いしてます。

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