- Home
- Look back Gyro cup ③「 3D BH Heavy T2 MRCPの限界を超える! 」
Look back Gyro cup ③「 3D BH Heavy T2 MRCPの限界を超える! 」
- 2020/7/8
- Other Writers, Philips, 創意工夫
- コメントを書く
Look back Gyro cup ③
今回、素晴らしいアイデアだけど惜しくも予選落ちした発表を紹介するシリーズ企画「Look back Gyro cup」を企画しました。
第3回目はGyro Cupで発表されたシーケンスの更なる向上を目指したアイデアのご紹介です。
Breath Hold 3D MRCPの現状と問題点
皆さんのご施設では、3Tで呼吸停止下(BH) 3D MRCPは撮像していますか?
現在、3D MRCPのGold Standardである呼吸同期下(RT) Heavy T2 MRCPで利用されているTSE以外にも、B-TFE、GRASE等があります。
B-TFEやGRASEは、TSEと比較すると濃縮胆汁も描出できる、撮像時間の短縮が容易である、というメリットがある一方、背景信号が高く膵管の描出が悪くなる事があります。
その点において、強い背景とのコントラストを呈するTSEでのHeavy T2撮像は、有用なのですが問題点があります。
1.5TではSARが小さくすむため、Refocus Flip Angle(RFA)を高く設定して、自由水信号を低下させずにTRを短縮し、TSE factorを延長することで、画質の劣化を少なく撮像時間の短縮が可能です。
しかし、3.0TではSARが大きくなってしまうため、SARの制限によりRFAを低く設定する必要があります。
結果、自由水信号が低下してしまうため、撮像時間を短縮するためのTRの短縮・TSE factorの延長によるSNRの低下や、SENSE factorの増加による展開エラーの影響が大きくなり、画質が顕著に劣化してしまいます(Fig.1)。
Compressed sensingが使用できれば、解決するかもしれませんが、使用できない場合、現状では撮像時間や分解能・撮像範囲を犠牲にしたパラメータ設定をせざるをえません。
「VISTA」から「3D VIEW」へ
非選択的再収束パルスを使用した3D TSEシーケンスである「VISTA」は、このMRCP以外にも様々な領域で使用されていると思います。
このVISTAをBrain・MSK・Spine・Breast・Pelvis・Prostate等、様々な領域とコントラスト毎に最適化したものが3D VIEWです。
VISTAと比較した改良点として、以下の3点が挙げられるかと思います。
①RFAを組織に合わせて変調してくれる
②Echo spaceがより短縮可能
③K-space order「Y(Cartesian)」でも、flexibleに信号を充填することで「radial」と同様に、TSE factorを延長可能
この特徴をMRCPに活かせないか?と考えました。
そこで、現状BrainとMSK以外はオプションであり、Brainは頭部領域にしか使用できないため、本来、四肢関節用であるMSK VIEWを使用してみました。
ここで、「RFAを組織に合わせて変調してくれる」という特徴は、T2値の短い組織を対象としているため、T2値の長い水を描出するMRCPに不向きです。
なので、あえてconstant(一定)RFAを設定できる「MSK PD」を使用しています。
結果、VISTAではTSE factorを延長するために「radial」を選択せざるを得なかったのが、3D VIEWでは「Y」が選択できるようになったため、これにHalf scanを併用することで、TSE factorを延長しつつ、撮像時間を短縮することができました。
更に、Echo spaceの短縮により信号収集時間が短縮するため、磁化の回復する時間が長くなり、TRを短縮した時の画質の劣化も少なくできました。
(Fig.2)に撮像条件の1例を、(Fig.3)にその画像を示します。
Half scan は、Release5.2辺りからTFEだけでなく、TSEにも2方向(位相方向:スライス方向)併用できるようになりました。
自由水に関していえば、Halfscan factor(Y:Z)=0.7:0.9程度までなら、少しのボケで撮像時間を短縮することが可能になっているため(Fig.4)、古い技術ながら非常に有効です。
3D BH VISTAの限界を超える!
では実際どのくらい違うのか? 高分解能化した時の例です。
従来のBH VISTAでは、TRの短縮によるSNRの低下や、SENSE factor上昇による展開エラーによって、画質が著しく劣化していますが、3D VIEWを使用してHalf scanを併用することで、RT VISTAにより近づいた画像を得る事が可能です(Fig.5)。
今度は、撮像時間を短縮した例です。
同様に、3D VIEWを使用してHalf scanを併用することで、高速化した時にも画質に差がでます(Fig.6)。
おわりに
いかがでしょうか? 日常検査で、BH 3D MRCPをHeavyT2で撮像している方は、ぜひ試してみてください!
正直な所、3D VIEWを用いてもRT 3D MRCPに近づきはしますが、同等な画質にはなりません。
そこで、近年急速に普及してきているPhilipsのcompressed sensing技術である「compressed SENSE」をVISTAではなく3D VIEWに併用することで、よりRT 3D MRCPと同等の画質なBH 3D MRCPに近づくのではないかと考えています。
ライター紹介
北九州市にある製鉄記念八幡病院の納 正信(オサメ マサノブ)と申します。
診療放射線技師歴9年目、MRI歴5年目、趣味はマラソン・ロードバイクです。
MRIは勉強すればするほど謎が増えてきます。
原理の謎、パラメータ設定の謎、画像における現象の謎、etc…。たくさんの考える事が次々でてくるので、楽しいです。
気がついたら1日の仕事が終わっているのも謎の1つですね(笑)。
コメント
トラックバックは利用できません。
コメント (0)
この記事へのコメントはありません。