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- 小児MRI検査プリパレイション2018(チャイルド・ライフ・スペシャリスト)
チャイルド・ライフ・スペシャリストとは?
チャイルド・ライフ・スペシャリスト(以下CLS)は、北米で発展してきた専門職で、役割の一つに病院で検査や処置を受ける子どもが不安や恐怖心に対処できるようサポートをすることが挙げられます。MRIは痛みはありませんが、所要時間や姿勢保持、音、閉所、暗さ等ハードルの多いタフな検査です。子どものMRIは、鎮静やそれに伴うモニタリングや酸素投与、鎮静の成功不成功など、撮影者はご苦労の連続かもしれません。私も、放射線技師をはじめスタッフの子どもに対する理解と温かさに助けられています。
たしかに鎮静なしで撮れればいいのですが、CLSの視点では鎮静なしで検査をすることが目標ではなく、その子のレディネスに合わせて検査が全うできるようサポートすることが目標です。鎮静がその子にとってよりよい方法であれば鎮静薬の使用を相談することもあります。
ただし、準備が整っていない=検査ができないということではなく、適切な方法を取ることでレディネスを形成できることもあります。そのために、アセスメントに基づいた説明や練習、気を紛らわす工夫(プリパレイション)をしています。
1. アセスメント
遊びや本人、保護者への質問を通して、
1. 音や閉所への耐性:聴覚過敏や閉所恐怖症につながるような苦手さがないか。身近な爆音や閉所に関する質問(花火やゲームセンター、トイレやかくれんぼ、トンネル等)。
2. 自己コントロールの力や集中力:同一姿勢でいられるか。落ち着いて遊んだり、話が聞けるか。
3. 一人でいられそうか:分離不安が高まっていないか。保護者不在の場面での様子や保護者、スタッフからの情報収集。就学しているかも判断材料になる。
などを観察、確認します。その後の説明中の様子も含めて検討します。
2. 説明
年令や特性に合わせた言葉の選択や視覚的な教材を使うこと、子どもが主体的になれるアプローチや場面を取り入れるように心がけています。
1. 写真や模型を使って検査の流れを確認
医療機器や手順はイメージしにくいので、模型を操作したり写真を見たりすることで不安が具体化されやすくなります。具体化された不安は遊びを通して表出されやすく、写真や模型をいじりながら質問が出たり、人形に声をかけている様子から不安の所在が窺えることもあります。
2. 実際に音を聞いてもらう
MRIの場合は音も大きなハードルなので、実際に音を聞いてもらうことも重要です。海外の物が多いですが、YouTubeにMRIを受ける子どもたちへの説明動画があります。音を聞いてもらって、その反応を見たり心の準備をしてもらいます。
3. 練習
不安が残る場合、他の人の様子を見ることから始めて、自分で寝てみる、一人でいてみる、時間を延ばしてみる、というようにスモールステップで自信を深めてもらえるように練習をすることもあります。これには技師さんのご協力がかかせません。お忙しい中合間を見つけてご協力いただき、子どものペースに合わせてフォローして下さるので本当に感謝しています。
4. 工夫
子どもの対処能力を上げるためには、主体的に振舞える環境が重要です。その一つに選択できる環境が挙げられます。お気に入りのぬいぐるみやタオルなどを持っていける、好きな音楽を選ぶに加えて、DVD視聴は大きな選択肢の一つになるでしょう。子どもは視覚刺激に集中しやすい傾向があります。集中しやすく余計なことを考えないですむ環境を提供できるのが強みです。ただ、集中しやすい分内容には気を付ける必要があると思います。
閉所が苦手な場合、克服を目標にしませんが、本人が無鎮静でやりたいという意思がある時にはサポートします。恐怖の程度にもよりますが、アイマスクをすると恐怖心が軽減してできる子もいました。
また、当院では原則親のMRI同伴はしていません。一人でいることに不安が強い場合、看護師が付き添ってくれることはあります。各施設での基準があると思いますが、まず「できた」という成功体験をきっかけに、「一人でやる」という目標を共有することでできるようになる子もいるので、親やスタッフと一緒にやってみるのも一つの方法だと思います。
略歴
松井 基子(茨城県立こども病院,成育在宅支援室,チャイルド・ライフ・スペシャリスト)
1978年生まれ。東京生まれの茨城育ち。カナダ・マクマスター大学チャイルド・ライフ・プログラムにて学ぶ。地元で貢献できればと思い、縁あって2005年10月より茨城県立こども病院で活動を開始。2009年に常勤職員となり、現在に至る。
相棒のかえるはもう4代目。かえるが特別好きなわけでもないのに、相棒の人気がありすぎてかえるグッズが増えるばかり…最近は名前を吹っ飛ばして「かえるの先生」「かえるの人」最終的に「かえる」と呼ばれるに至りました。
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