「MRI安全性確認のタスクシフティング」

【はじめに】

皆様、はじめまして。大牟田市立病院の川口 悦郎と申します。

当院は「良質で高度な医療を提供し、住民に愛される病院を目指します」という基本理念のもと大牟田、有明地区の地域の中核病院として全職員日々邁進しております。昨年度は「平成30年度自治体立優良病院総務大臣表彰」を受賞することができました。

【MRIの安全管理の難しさ】

皆様のご施設ではMRIの安全管理はどのようにおこなっていますか?

職員に対しては、どこの施設でも年1回くらいMRI安全管理の講習会を行っていると思います。当院でも新人研修で1時間くらい枠をもらって講習を行っています(たまに熱くなって1時間を超える場合もありますが・・・)。新規採用の職員に車椅子や酸素ボンベが吸着する動画をみていただくことは、大変効果的だと思っています。しかし職員がハサミをガントリに吸着させたり、患者さんが検査室内に金属を持ち込んだりと、なかなかトラブルがゼロにはならないのが現状で、今後も定期的に安全管理講習会をおこなったり、院内の掲示板で注意喚起したりと、啓蒙活動を継続することが重要だと思います。

患者の体内金属は、検査依頼時に医師もしくは看護師さんが問診票でチェックしていると思いますが、その金属にMRI適合性があるのかどうかは、放射線科でない医師や看護師さんでは判断が難しいのではないでしょうか? MR条件付き適合(MR conditional)のものにいたっては、添付文書に空間勾配やSARについて記載されているため、MRI検査に従事している放射線技師でも分からない時もあるはずです。

【MRI安全管理への放射線技師の積極的な介入】

当院では患者の体内金属のMRI適合性が分からない場合は、われわれMRI担当の放射線技師も積極的に介入しています。

これは当院でのMRI適合性判定のフローです。

以前はMRI検査室に直接電話がかかってきても検査中ではなかなか対応が困難でしたが、現在は検査を行っていないMRI担当者が問い合わせ対応専用のPHSを持って対応しています。様々な部門のご協力により、当院で現在使用しているインプラントの添付文書をファイル化し、院内ネットワークで「PMDA」や「医療機器のMR適合性検索システム」、「MRI SAFETY」などにどこからでもアクセスできるようにしています。他施設で挿入されたインプラントに関しては、地域連携室よりその施設に「体内金属確認依頼書」をFAXして情報収集します。

 

適合性が不明な場合もよくあります。添付文書に記載がないものはメーカーさんに連絡します。メーカーさんも添付文書にMRIsafeと記載されていないため「最終的には病院様でご判断ください。」とよく言われますが、磁性の有無、材質、現在までの健康被害の報告があるかを聞くようにしています。

リスクとベネフィットの上でMRI検査を施行することは大事なことです。主治医は検査を受けることのベネフィットは十分理解されていますが、MRIによる有害事象が起こるリスクについて詳しくは知らない場合もあります。われわれMRIを熟知している放射線技師が、MRIによる有害事象がどのように起こるかを主治医に報告し、検査施行するかどうかディスカッションすることはがとても重要な役割です。

他施設より当院で挿入されたインプラントについての問い合わせもあり、その中には金属確認の依頼もあります。カルテで検索し、製品名、メーカー名、当院での撮影歴、添付文書があるものは添付し、地域連携室より返信しています。

当院での依頼でも、他院での依頼でも、必ずカルテに記載しています。カルテ上に「MRI検査のための体内金属確認」という文書のフォーマットを作っており、私以外の職員が対応しても同じような記載ができるように工夫しています。

【最近の話題】

ご存知の方が多いと思いますが、令和元年8月に厚生労働省医薬・生活衛生局医療機器審査管理課ならびに医薬安全対策課より「植込み型医療機器等のMR安全性にかかる対応について」の通知がありました。(https://www.pmda.go.jp/files/000230872.pdf)

添付文書にMRI検査に関する安全評価の記載があると、私たちにとっては調べやすくなり吉報ですよね。

 

【自己紹介】

地方独立行政法人 大牟田市立病院 中央放射線部 主査 川口 悦郎

技師歴17年目です。MRIやCTなどの画像診断を中心に業務してきました。MRIはオペレーターの知識・技術で最適な画像を撮影できることが魅力です。MRI装置を“つかえる”ではなく、“つかいこなせる”ように日々努力しています。

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