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御法度な実験
- 2015/10/24
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御法度な実験
『RADっていいとも 素敵な仲間とのペンリレー(20) 荒井信行』続編
入職当初、当院のMRI部門は3台体制ですべてPhilips社製Intera 1.5Tでしたが、現在はそのうち1台が残るのみです。一昨年に約10年使用した1.5T装置を完全撤去する際、是非やってみたかったことを敢行しました。それは、
「MRI装置に砂鉄を撒いてみたい!」
ということです。通常では決して許されない実験ですが、完全撤去の際なので実行が可能でした。
背景:
検査前の更衣と金属チェックを徹底していれば問題ないのですが、もし砂遊びをしてから来院した小児患者のポケットに砂が入っていたら?もし肌着に貼付したままの使い捨てカイロが破れていたら?砂鉄は装置の隙間に入り込んだり細かすぎて撤去が困難となる可能性があり、ある程度の大きさがある磁性体よりも厄介です。砂鉄混入の場所によってはチューニングエラーを引き起こすかもしれません。そこで砂鉄によりどのような影響が出るかを調べてみました。
結果:
砂鉄は使い捨てカイロを破いて入手しました。実際に近づけてみると微細な砂鉄は磁力線に沿うような帯状の形状に分布し、ガントリ開口部、特に下部に吸着しました(下図右)。
吸引力をF=mg・tanθとすると、正接(tan)でかかってくるので、意図的に上の方からも撒いたのですが、砂鉄程度の質量でもガントリ下部に吸着する割合が高くなったと考えられます。
砂鉄を少量吸着させた時と全量吸着させた時にそれぞれSE法とGRE法でファントムを撮像しました。
全量の砂鉄の場合(右下)は大きな歪みと砂鉄自身による信号欠損域が確認できますが、注目していただきたいのが少量の砂鉄の場合(左下SE法、
このあとクエンチを起こし解体されていきましたが、たくさんの過酷な実験にも耐えてくれた装置だったので感慨深いものがあったのを覚えています。後から試してみたいことがあれこれと思い浮かぶもので、もっと綿密な計画を立てて砂鉄を吸着させればよかったと心残りの実験でもあります。
ライター
名古屋市立大学病院 荒井信行
Chief Editor’s Comments
画質にとって脅威となる砂鉄
周知のごとく、
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