★★SSFSEのブラーリングについて

<新企画>「撮像のワンポイントアドバイス」

★〜★★★までの難易度を設定し、MRIにおける基本的な注意点や撮像のポイントなどをまとめていくコンテンツです。初学者の方やローテーターの方など是非ご一読ください!

今回の「撮像のワンポイントアドバイス」の難易度は★★ふたつです。

静岡済生会総合病院 山崎敬之です。

皆さん、近年、Deep learning技術が発達し、Single Shot Fast SE(SSFSE)シーケンスを使用することが多くなったのではないでしょうか?
今回は、SSFSEのブラーリングについてまとめました。

SSFSEとは

SSFSEとは、とても短時間で撮像できる撮像シーケンスです。短時間で撮像するため、体動に強く、腹部領域、骨盤領域などで使用されます。
では、なぜSSFSEは短時間撮像できるのでしょうか?

スピンエコー(SE)法は1回の励起で、k空間1行分のデータを取得します。そして、このデータ取得を位相エンコードの数だけ行います。よって、撮像時間は長くなります。
一方、SSFSEは1回の励起で、k空間全てのデータを取得します。よって、撮像時間は短くなります(図1)。

図1 SE法とSSFSE法の違い

SSFSEのコントラスト

SSFSEは、1回の励起で全エコーを収集するため、TRは存在しません。そのため、T1値の差はコントラストに寄与しません。SSFSEは、T2強調画像で使用されます。
SSFSEのコントラストは、実効TEにより変化します。実効TEとは、k空間の低周波領域(k空間の中央部付近)に充填されるTEのことです(図2)。k空間の低周波領域はコントラストに寄与します(図3)。よって、この部分に充填されるTE値により、SSFSEのコントラストは決定されます。

図2 SSFSEのコントラスト
図3 k空間の低周波領域と高周波領域

ブラーリングの発生

SSFSEでは、1回の励起で全てのデータを取得します。得られるデータの信号強度は、T2減衰の影響により、最初と最後で大きな信号差が発生します。そして、この信号強度の異なるデータは、k空間の高周波領域に充填されます(図4)。k空間の高周波領域は、画像のエッジ成分に寄与します(図3)。ここに信号強度の大きく異なるデータが充填されると、ブラーリング(ぼけ)が発生します(図5)。

図4 ブラーリングの発生原因
図5 ブラーリング

ブラーリングも役に立つ!?

組織のT2値よりブラーリングの程度は、異なります。T2値の短い組織は、T2減衰が速いため、最初と最後のデータ信号強度差は大きくなります。信号差が大きくなるとブラーリングが大きくなります。
一方、T2値の長い組織は、T2減衰が遅いため、最初と最後のデータ信号強度差はT2値の短い組織に比べて小さくなります。よって、ブラーリングは小さくなります(図6) 。

図6 T2値の違いによるブラーリングの変化

このことを利用すれば、肝嚢胞と肝血管腫を鑑別することができます。
肝血管腫はT2値の短い疾患です。そのため、SSFSEで肝血管腫を撮像すると、画像のボケは大きくなります(図7)。一方、肝嚢胞はT2値の長い疾患です。よって、SSFSEで肝嚢胞を撮像しても、画像のボケは目立ちません。このようにブラーリングの発生はT2値の短い組織なのか、T2値の長い組織なのかの判別に役立ちます。

図7 肝血管腫のブラーリング

ブラーリング対策

ブラーリングの影響は、撮像パラメーターを調整することで、最小限にすることができます。ブラーリングは、最初と最後のデータ信号強度差が大きいと、大きく発生します。よって、データ収集時間を短くし、最初と最後の信号差を小さくすることで、ブラーリングは小さくなります(図8)。

図8 ブラーリング対策

SSFSEのデータ収集時間は

データ収集時間=エコースペース(ESP)×エコー数(位相エンコード数)

で表すことができます。

ブラーリングを小さくするポイントを以下にまとめます。

・周波数マトリクス数を小さくする
・受信バンド幅を大きくする

⇒ エコースペースが小さくなる

・長方形FOVを使用する
・パラレルイメージングを使用する

⇒ エコー数が少なくなる

周波数マトリクス数を小さくすると、エコースペース(ESP)は小さくなります。これにより、データ収集時間は短くなり、ブラーリングは小さくなります。しかし、空間分解能は低下します(図9)。

図9 周波数マトリクス数の変化

受信バンド幅を大きくすると、ESPは小さくなります。よって、ブラーリングは小さくなります。しかし、SNRは低下します(図10)。

図10 受信バンド幅の変化

長方形FOVを使用すると、エコー数は減少し、ブラーリングは小さくなります(図11)。

図11 位相方向のFOVの変化

パラレルイメージングを使用すると、エコー数は減少し、ブラーリングは小さくなります(図12)。

図12 パラレルイメージング有無の変化

上記の改善点を全て取り入れた画像は以下となります(図13)。

図13 ブラーリング対策前後の画像

ブラーリングの影響を低減できています。

以上、ブラーリングの低減方法について解説しました。
最後に、注意点です。ブラーリングを小さくする方向に撮像パラメーターを調整すると、空間分解能、SNRは低下します。メリット、デメリットを考え、撮像パラメーター調整をしてください。

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山崎 敬之

投稿者プロフィール

静岡済生会総合病院でMRI業務につき、10年となりました。勉強しても分からないMRIの奥深さに魅了されています。毎日、楽しく学んでいきたいです。

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