ITEM2022 ~Philips編~

読者の皆様、こんにちは。静岡済生会総合病院 山崎敬之です。
ITEMは3年ぶりに行ってきました。
私はITEM2022におけるPhilips Japanのブース取材に行ってきましたので、ご報告させて頂きます。


今年のPhilipsブースは昨年同様、感染対策がしっかりと行われていました。ブース入場する際も、手指消毒、使用箇所の消毒など、至る所に感染対策の配慮がなされていました。


今回ブース取材にご協力いただいたのは、MRモダリティスペシャリストの森脇 聡さんです。最新技術について、非常に詳しくご説明して頂きました。

MR5300


ITEM2022では、最新1.5T機種のMR5300の展示がありました。MR5300の魅力は、ヘリウムフリーを実現したBlueSealマグネットです。

MR5300には、直感的に操作できるモニターが搭載されています。


コイルの重量は、一番大きいもので1kg程度でした。とても軽量化されていることに驚きます。

次世代高速イメージング ”Smart Speed”


次世代の高速イメージングとして、Smart Speedが大きく取り上げられていました。Smart Speedを用いることにより、SENSE単独使用と比べて最大65%高速化、65%高分解能化、高コントラスト化を実現できます。さらに97%のシーケンスに対応しています。

では、Smart Speed の実体に迫っていきましょう。
Smart Speedは、大きく2つに分けることができます。
1つ目はC-SENSE +AI (Deep learning)、2つ目はC-SENSE +Non-cartesian/EPIです。

①C-SENSE +AI (Deep learning):Smart Speed AI


まずはC-SENSE +AI (Deep learning)からご紹介します。
ここで、Philips社のC-SENSEについておさらいです。
C-SENSEは、SENSEとCompressed sensing(Wavelet変換)を同じ画像再構成ループに統合した高速アルゴリズムを採用しています。2つの技術が相補的に機能することにより、2D、3Dの制限なく幅広い撮像で高速化あるいは高画質化を実現しています。欠点は、Compressed sensingのDenoising factorを上げ過ぎてしまうと、ノイズは大きく除去されますが、画像の細かい解剖構造は失われることでした。

新技術のC-SENSE +AI (Deep learning)とは、C-SENSEのCompressed sensing(Wavelet変換)をNeural Networkに変えたものです。この技術は、SmartSpeed AIと呼ぶようです。SmartSpeed AIを用いると、上記で述べたCompressed sensingの欠点を改善し、より高いノイズ除去に加えて、高画質化を実現できます。

上段がC-SENSEで撮影された画像、下段がSmartSpeed AIで撮影されたものとなります。上段のC-SENSEでは、Denoising factorを強くしていくと、ノイズは除去されていますが、細かい解剖学的構造(例えば視床の辺縁や白質、灰白質の辺縁)は失われていることがわかります。一方、下段のSmart SpeedはAI factorを強くしていくと、C-SENSE同様にノイズを除去しつつ、解剖学的構造は失うことなくシャープに見えることがわかります。

頭部MRAを45秒で撮影した画像です。左はSENSEのみ、中央はC-SENSE、右はSmartSpeed AIで撮影しています。SENSEのみの画像では、ノイズでMRAは描出できていません。一方、C-SENSEの画像では、Compressed sensingでノイズ除去されているため、MRAはしっかりと描出できています。続いてSmartSpeed AIの画像では、C-SENSEの画像よりさらにノイズが除去されつつ、末梢血管の描出も良くなっていることがわかります。C-SENSEは素晴らしい技術ですが、それ以上にノイズ除去を行えるのは、SmartSpeed AIです。


SmartSpeed AIを用いることにより、黄色矢印の病変はノイズの影響を受けることなく、シャープに描出できていることがわかります。

②C-SENSE +Non-cartesian/EPI


次は、C-SENSE +Non-cartesian/EPIです。C-SENSE +Non-cartesian/EPIとは、k空間の充填がNon-certesianシーケンス(Multi Vaneなど)やEPIシーケンス、SEMACにCompressed sensingが対応したというものです。

では、詳しく見ていきましょう。

まず、C-SENSE +Non-cartesianです。
この技術はSmartSpeed MotionFreeと呼ぶそうです。Multi Vaneは体動補正を行うことができるシーケンスですが、サンプリング数は増加するため、撮影時間は延長します(中央上)。撮影時間の延長を防ぐために、SENSE factorを増加させると、サンプリング数は減少し、ストリークアーチファクトが発生します(中央下)。ここに、新技術であるSmartSpeed MotionFreeを使用すると、発生するストリークアーチファクトを除去することができます。これによりSENSE factorをさらに上げることができ、高速化につながります。


次は、C-SENSE +EPIです。
この技術はSmartSpeed diffusion(EPICS)と呼ぶそうです。DWIを撮影する際は、SENSE を用いて歪みを低減させることが一般的ですが、SENSE factorを上げるにつれ、SENSE特有のノイズによる折り返りアーチファクトが発生します。SmartSpeed diffusionを使用すると、今まで発生していたアーチファクトを除去することができるため、SENSE factorをさらに上げることができ、歪みの少ない高画質の画像を臨床に提供できます。

改良されたMuliti Vane


SmartSpeed MotionFreeの発表に伴いMulti Vaneシーケンスの改良が3点追加されました。

1つ目は、Contrast weightingです。
Contrast weightingとは、目的とするエコーに対して重み係数を大きくし、目的外のエコーに対して重み係数を小さくするというものです。Multi Vaneのようなradialでk空間を充填するシーケンスは、k空間中心部分に複数のエコーが含まれています。そのため、コントラストの平均化やブラーリングの問題が発生していました。これにContrast weightingを用いることで、目的とする実行TEのみが強調され、コントラストの平均化やブラーリング問題を解決しています。

2つ目は、chemical shift controlです。
radialでk空間を充填すると、chemical shiftの発生方向は多方向もしくは平均化されていました。chemical shift controlとは、Bladeごとに周波数シフトの方向を可変し、chemical shiftの発生方向をユーザーが任意に設定できるというものです。

3つ目は、R-FOVです。
Multi Vaneでは、収集するBladeの幅は常に一定であるため、画像は正方形FOVの画像となります。一方、R-FOVを用いると、k空間を1Blade収集する度にBladeの幅を変更し、サンプリング密度を変えることにより、任意の方向への長方形FOV画像を可能としています。
これらの3つの技術を用いることにより、Multi Vaneで問題視されていたコントラストの平均化、ブラーリング、正方形FOVの問題を解決し、よりcartesianに近い画像を臨床に提供できるようになりました。


体動を抑制しつつ、cartesianに近いコントラストになっています。乳児や小児撮影で、とても役立ちそうです。

2022年のフィリップスブース取材では、SmartSpeed AI、SmartSpeed MotionFree、SmartSpeed diffusion、Muliti Vaneの改良とワクワクする技術が目白押しでした。すぐにでも使ってみたい技術です。

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山崎 敬之

投稿者プロフィール

静岡済生会総合病院でMRI業務につき、10年となりました。勉強しても分からないMRIの奥深さに魅了されています。毎日、楽しく学んでいきたいです。

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