ITEM2017 フィリップスヘルスケア ブースREPORT

初のMRIfan.netとしてのブース取材

東京警察病院の古河勇樹と申します。この度、編集協力として初めてブース取材を行ないました。上手くレポートできるかわかりませんが、皆様どうぞ宜しくお願いします。私はフィリップスヘルスケアMRI情報をお伝えしたいと思います。

今回のフィリップスブースでは新装置の発表こそないものの、次世代型システムプラットフォームとして「dSync」が発表されました。またアプリケーションとしては Release 5.3 ( R5.3 )が発表されました。R5.3 は、1.5T Ingenia / Achieva R5.2 、3.0T Ingenia / Achieva R5.17 からのアップグレードリリースとなります。 R5.2 では「mDIXON XD」, 「MultiVane XD」,「O-MAR XD」が搭載されましたが、3.0T では R5.2 が存在しません。 そのため3.0T では上記 3つのシーケンスも R5.3 によって使用可能です。

今回R5.3 の概要をお聞きして、かなり驚愕しました。なぜなら今まで使用できなかった研究用シーケンスと、他社にはあってフィリップスには存在しなかったシーケンスがほとんど搭載されており、思いつく限り詰め込んだといっても過言ではないラインナップだからてです。尚、次世代型システムプラットフォーム「dSync」のお話は高原先生が分かりやすくご説明していますのでこちらをご参照ください。

「RSNA2016 その4 Philips MR」

• 3D VANE XD(息どめなくてもT1GEが撮像可能)

スライス面内をラジアルサンプリングする 3D-GRE の撮像方法です。従来法と異なり時計回りの収集でなく、ゴールデンアングルを改良した Pseudo Golden Angleが採用されています。これによりストリークアーチファクトの発生が抑えられます。また、ラジアルサンプリングですので体動に強く自由呼吸下での撮像などに応用が可能です。

• Black Blood Imaging ( iMSDE )=魅力あるシーケンス リリース!!

PrepulseとしてMPG パルスを改良したmotion sensitized gradientを使用しBlack Blood Imagingを取得するのがiMSDEです。有用性は学会や勉強会などでよく聞きますが、研究用シーケンスで自施設では使えないというシーケンスの代表ではないでしょうか。頸部プラークイメージや、転移性脳腫瘍でのBlack Blood Imaging の有用性が示されています。180° パルスの数やmotion sensitized gradient の印加時間なども選択可能ですので、目的の部位に応じた設定が可能になっているようです。

• 4D-TRANCE

3D撮像でのCINEMA-STAR が可能です。これにより、血管の重なりなどを考慮してプランニングする必要がなくなり、撮像後、観察したい方向から再構成することが可能です。また、呼吸/心電図同期併用はできないものの、ラベリングパルスの幅や位置などを自由に設定可能なので、血管を選択的にラベリングし撮像することも可能なようです。

• 3DASL(G社のASLと同等)

3D pCASLを使用したSingle phase ASLの定量化がついに実現しました。複数 Dynamicの1回目でプロトン画像を取得し、自動で脳血流画像の作成が可能です。これで、ASLでは視覚的評価を利用するMulti Phase ASLと定量化が可能な3D pCASLの2つが選択できます。うまく使い分けることにより、Single phase ASLの問題点である側副血行路などによる遅い血流による影響なども評価できるかもしれません。

• 3D NerveVIEW ( 3D-SHINKEI )

3D-TSE にiMSDEと脂肪抑制を併用し、動静脈と筋肉、脂肪を抑制します。その後、3D-TSE で DATAを収集します。MR Neurography を高空間分解能で明瞭に描出可能なシーケ ンスです。

• Zoom Diffusion(S社のZoom Itと同じもの)

フィリップスでは、これまでパラレルイメージングであるdS-SENSEを応用したdS-Zoomと呼ばれるZoom Imageが提唱されていました。今回、局所励起を利用した Zoom ImageでのDWIが使用可能となりました。原理は既に発表されているS社のものと同じようで励起パルスと再収束パルスとの選択傾斜磁場を斜めに印加することで、2つのパルスが重なり合う領域のみ励起される仕組みです。これにより歪みの少ない高空間分解能のDWIが取得可能となるようです。

•Multiband SENSE

EPIで複数スライスを同時励起可能なシーケンスです。fMRIやDTIなどで効果を発揮しそうです。原理的にはEPI以外にも応用が可能ですので、将来的には全てのシーケンスに適用される時代がくるかもしれません。

・Compressed SENSE (WIP)

こちらは圧縮センシングとパラレルイメージングであるSENSEが融合したものです。ITEAM には間に合わなかったようですが、年内の発売は決定しているようで強くアピールしていました。2D、3D 問わず、ほとんどのシーケンスに適応可能で4~5倍速を視野に入れているとのことでした。一見5倍速は理論上の数値にも聞こえますが、個人的所見でいえば、現状SENSEのみで3 倍速は臨床レベルで使用可能ですので、圧縮センシングを併用して5倍速なら十分考えられるのではないでしょうか(3.0T Ingenia でのお話です )。Compressed SENSEを正確に用いるためには、被撮影部位のモデルが非常に重要で、現時点では頭頸部、脊椎、四肢関節領域に適応可能とのことです。体幹部と循環器領域は次期バージョンに搭載されるようです。

• APT imaging (WIP)

こちらも。ITEAM には間に合わなかったようですが、年内の発売は決定しているそうです。私自身も良く分かっていないので、受け売りですがAPT imagingはCHEST imagingの一種で生体内のタンパク質のプロトン交換を利用したものです。具体的にはアミドプロトン(-NH)と H2O中のプロトンの交換をみています。(下図参照) これにより、今までの画像では得られなかったコントラストが取得可能であり新しい知見が得られることが期待されているシーケンスです。

ここからは少しマニアックですが、ソフト的なお話です。

・Refocusing Flip Angle (RFA)

従来フィリップスでは2発目以降の再収束パルスのみRFAの設定が可能でした。(下図 Contrast ) R5.3 から「T1 optimized」「T2 optimized」の2つが追加され最大3点のRFAの角度が設定できるようになりました。これにより目的部位に応じたフローアーチファク トの低減やBlack Blood効果の増大、SARの低減が考えられ、細かい調整が可能になりま した。

・VCG Calibration

3.0T装置で心電図同期をする際に問題の1つとして挙げられるのが、Magneto hydrodynamic Effect と呼ばれるT波増大です。増大されたT波がR波と装置が誤認することで同期不良を引き起こす原因となるため、電極の貼り方や心電図計の置き場所など苦労されていているかと思います。R5.3からCalibration機能が任意のタイミングで可能となり、Trigerの感度も設定が可能となりました。これによりT波の影響だけでなく、応用すれば不整脈にも対応できることが考えられ、是非使ってみたいと感じました。

以上、初レポートでした。

ライター紹介

東京警察病院 古河勇樹

RADっていいともを是非合わせて読んでください。

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