今度の第4回BodyDWI研究会(2月13日土曜日、エル・おおさか)では、「骨転移」をテーマとして丸一日発表が行われます。整形外科の先生方、また放射線治療の先生方による発表があり、臨床的で現実的なディスカッションが行われると思いますので、ぜひいらしてください。
造骨性骨転移はDWIで「不明瞭」なのか
先般、http://tarorin.com/dwi/dwibs/2015/11/bone_metastasis_dwibs/でも書いたように、骨転移ガイドラインにおいては、造骨性骨転移がDWIで「不明瞭」と書かれていますが、これが正しくないー大多数はむしろ高信号ではないかーも提起されると思います。参加される皆さんは、本当に不明瞭なのかどうか、今後ぜひ研究を進めていただきたいと思います。
骨シンチのコストは妥当なのか
この研究会では、骨シンチ(Bone Scan = BS)が、どの程度役立つのかについても、少し踏み込んで議論が行われると思います。Impact Factor 6程度の雑誌、European Urology誌 1)では、前立腺がんの骨転移診断において、WB-DWIがBSを明らかに上回るという記述がなされています。また最近のRadiology誌 2)でもこれが事実として引用されています。またEuropean Urology誌の別の論文3)では、各国の大まかなMR,CT,BSのコストが書かれており、かなりの幅がありますが、この平均値を用いたごく大雑把なコストを下に記します。このことからわかるように、我が国では、BSのコストがMR, CTに比較して突出して高いこともあり、Cost Effectiveな画像診断を考える上で参考になると思います。
3)の論文では、「WB-DWIは、A New Gold Standard of Detection」「WB-DWIは、BSのコストより高いことに比較してもなお、BSより役立つ」「ただしすべての患者に対してではなく、ハイリスクな患者において行うべきだ」という論調で書かれています。もしMRのコストがBSよりも安い(=日本)のであれば、さらにこの論調は強くなるべきものでしょう。
そうはいっても、現状では、骨シンチは病院にとっては大きな収入になり、言葉は悪いと思いますが「ドル箱」と称されることもあります。また逆に、WB-DWIを行いますと、通常少なくとも3つの部位(胸部、腹部、骨盤)を撮影するので時間的コストは従来のMRIよりかかり、やればやるほど損をしてしまうという現状があります。ですから、心では分かっていても、実際にはWB-DWIに移行できないという社会問題もあるのです。骨シンチの減点は、それで生活をしている人もいますので、なかなかすぐには難しいです。WB-DWIにたとえば 50%程度の加算があれば、「損をする」状態が解消されますから、自然にその方向に進んでいくと思われます。このようなコストの適正化はぜひ訴えていきたいものです。
- Can whole-body magnetic resonance imaging with diffusion-weighted imaging replace Tc 99m bone scanning and computed tomography for single-step detection of metastases in patients with high-risk prostate cancer? Lecouvet FE, El Mouedden J, Collette L, Coche E, Danse E, Jamar F, Machiels JP, Vande Berg B, Omoumi P, Tombal B. Eur Urol. 2012 Jul;62(1):68-75.
- Volume of Bone Metastasis Assessed with Whole-Body Diffusion-weighted Imaging Is Associated with Overall Survival in Metastatic Castration-resistant Prostate Cancer. Perez-Lopez R, Lorente D, Blackledge MD, Collins DJ, Mateo J, Bianchini D, Omlin A, Zivi A, Leach MO, de Bono JS, Koh DM, Tunariu N. Radiology. 2016 Jan 25:150799.
- Whole-body Magnetic Resonance Imaging and Prostate Cancer Metastases: A New Gold Standard of Detection, But Does It Help Us and At What Cost? Kate D. Linton *, James W.F. Catto. Eur Urol. 2012 Jul; 62: 76–77
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