ITEM2021レポート Philips編

皆さんこんにちは。東京警察病院の古河です。
ITEM2021におけるPhilips・Japan(以下、Philips)のブース取材を担当させて頂きましたのでご報告させていただきます。

前回のMRIfan.netにおけるPhilipsのブース紹介は、高原先生による「RSNA2019レポート 〜 Philips MRI 編」ですので、ほぼ1年半ぶりのご紹介となります。

今回のPhilipsブースは、感染症対策の観点より機器展示は行わず、例年より規模を収縮するともに、ブースに入場する際も、人数制限、手指の消毒、使用箇所の消毒など、様々な配慮をされていました。

今回、ブース取材にご協力いただいたのは、Philipsアプリ・ビジュアル担当(営業さん談)・石田 真美子さんです。PhilipsにおけるAIの取り組みについて、詳細に解説して頂きました。

Smart Plan

まず、冒頭はPhilipsにおけるAIの代表である「Smart Plan」と呼ばれる自動位置決め機能を紹介されていました。

Philipsユーザーの皆様はご存じであるかと思いますが「Smart Plan」はBrain、Knee、Shoulder、Breast、Spineの5つの部位でリリースされており、既存のスライスLineの他、施設ごとに自由にスライスLineを追加することができます。

BreastにおいてはImage Based(IB)シミングと呼ばれる機能で、DWIやDynamic時の脂肪抑制ムラなどの問題が改善されますので、自動位置決め機能に留まりません。

R5.7から「Fast Smart Survey」として、Smart Brainの撮像時間が60秒から20秒に短縮されました。CSを応用し撮像時間短縮を実現されたようです。
当院でも使用していますが、従来は撮像時に待ち時間がありましたが、現在はオペレーター側の余裕がなくなるほどに短縮されています。

こっそりAI化

Philips装置はリモートにより装置の状況を把握されており、稀にサービス側から装置に不具合がないか連絡をいただくことがありましたが、この監視ツールにはAIが導入されているそうです。

確かに、こういった各種DATAによる未来予測判断は、AI化することによる恩恵が大きそうですよね。

放射線治療への応用とAI

MRI業界ではあまり話題になることはありませんが、近年MRI-Linacと呼ばれる装置が放射線治療業界では注目されています。

本邦でも2019年5月31日にElekta社により「Elekta Unity」が発売されていますが、このMRIはPhilips社のものが使用されており、様々なテクノロジーが応用されています。

Lagendijk JJ et al:The magnetic resonance imaging-linac system.Semin Radiat Oncol. 2014 Jul;24(3):207-9

MRIイメージガイドによる放射線治療は様々な利点がありますが、モーションモニタリングと呼ばれるリアルタイムにMRIを撮像しながら目的部位に照射できるという技術はその最たるものでしょう。

今回紹介されていた「MRCAT: MR-based Dose Calculation」はCT画像を用いずにプランニングを実現する手法で「MR-only based plan」と呼ばれるものです。

2019年で発表されていた論文上での方法論は実現には遠いという印象でしたが、AIを応用することで実現するようです。個人的には非常に興味深い内容で、今後に期待ですね。

Validation of dose distribution computation on sCT images generated from MRI scans by Philips MRCAT. Rep Pract Oncol Radiother. 2019 Mar-Apr;24(2):245-250

Fast MRI

各社ともにDLRをMRIの画像処理に応用することで、高品質で高速な画像取得に取り組んでいますが、PhilipsはCompressed SENSEにDeep Lanningを応用するアプローチでその実現に向けて取り組んでいるようです。

まだ、WIPの段階でなく論文上での紹介のみでしたがアプローチの手法としては実現まで遠い道のりには感じませんので、今後に期待したいと思います。

Brain Suite

AIをアルツハイマー解析に応用させたプログラム「Brain Suite」も紹介されていました。

撮像時間は1分弱でAIによる海馬の体積測定をすることで、脳の健康状態や将来の認知症リスクを早期段階から鋭敏に評価することができるそうです。

ISPの新しいアプリケーション

ISP12になり「4D flow」「feature tracking」の解析が可能になったそうです。今までは第3パーティの専用ワークステーションでの解析が一般的であったと思いますので、敷居が高くて導入できなかった施設には朗報であると思います。

骨皮質の画像化

最後に、各社から発表されている骨皮質画像のアプリケーションである「FRACTURE」の紹介です。
他社からはUTEでのアプリケーションが紹介されていますが、PhilipsではmFFEのTEを4.6msから4echo取得することで実現していました。
他社UTEの画像と遜色ないように感じましたので、当院でも試してみたいと思います。

装置やソフトの大きな新製品は世界的なCOVID-19による影響でなかなか難しい状況ですが、Philipsとしての確かな足取りが感じられる製品紹介でした。
そして個人的にはPhilipsのお知り合いの皆さまと会えたこともうれしかったです!

以上、Philipsレポートでした。

Chief Editor’s Eye

PhilipsではFRACTURE(骨皮質描出シークエンス)を、inphaseのecho 4つを加算するという方法で実現しました。inphaseだけを加算するので、脂肪による画質の就職を防ぐことができ、かつUTEのような特殊技術でなく実現できたところが秀逸だと思います。この方法で、石灰化病巣もMRIで描出できるようになり、MRIの芸風が広がったと言えます。
AIについては、故障予測にも用いることができることを今回のプレゼンでは表示していますが、さまざまなところで恩恵がありますね。本丸の画像に対するAIはすぐに提供されるようになるということでした。個人的には、one shot TSE (類 SSFSE)などの準備動作(shimmingなど)が速くなることに応用できないだろうかと思っています。心穏部分の高速化ができると、全体としてかなり速くなると思います [高原]

Editor’s Comments

古河編集委員が紹介して下さったBrain Suiteは、Philips公式ページのプレリリース受診者用紹介ページに詳細が載っています。VSRADと何が違うの?と思った方は、ご一読下さい。形態情報としての結果だけでなく、将来予測まで含めた結果を「可視化」して「受診者へ分かりやすく示す」というのがポイントだそうです。

ちなみに皆様、AI(人工知能)とDL(Deep Learning、深層学習)の違いはご存知でしょうか?詳細を省いてざっくり言うと、AIはDLを内包した広い概念のことです(例:DLはリンゴ、AIは果物)。

昨今の人工知能ブームにより、今年はどのメーカーもDLやAIを活用した新しい機能が目白押しですね。
過去の高原先生の2019年のRSNA記事2019年のITEM記事についても、是非もう一度ご覧頂き、2年前との違いを感じて頂けたらと思います。 [Mariko]

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