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Look back Gyro cup ②「 CSF Flow with Low RFA SSTSE 」(Philips)
- 2020/5/7
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Look back Gyro cup ②
今回、素晴らしいアイデアだけど惜しくも予選落ちした発表を紹介するシリーズ企画「Look back Gyro cup」を企画しました。
第2回目は「 CSFの流れを可視化する 」アイデアのご紹介です。
CSF Flow with Low RFA SSTSE
人口の高齢化にともない認知症は、大きな社会問題となっています。その原因疾患のひとつとして、特発性正常圧水頭症が挙げられます。
その診断にはCT やMRI による形態的評価が重要で、円蓋部の脳溝や脳室の拡大を評価するのに利用されています。
近年、中脳水道から第3,第4脳室レベルにかけて、脳脊髄液(cerebrospinal fluid;CSF)の流れに異常があったとされる報告があり、MRIを用いたCSF Flow Imagingが注目されています。
MRIにおいてCSFの流れを可視化する手段としてさまざまな撮影法があります。
従来法の心電図同期併用Phase Contrast Cine MRIをはじめとして、Time-SLIP(Time Spatial Labeling Inversion Recovery)法、iMSDE(improved-Motion Sensitized Driven Equivalium)法などを用いて脳脊髄液の流れを評価できるとの報告がありますが、それぞれメリット・デメリットが存在し、装置メーカーやバージョンによっては使用できないものも存在します。
今回ご紹介するシーケンスは、装置メーカーやバージョン問わず多くの施設で使用できるシーケンスだと思います。
撮像法はとてもシンプル!!
撮像シーケンスはSingle Shot Turbo Spin Echo(ssh TSE)法です。
MRCP検査やその他、腹部MRI検査でよく使用されているアレです。
撮像方法は高速SE法の再収束パルスであるRefocus Flip Angle(以下RFA)を下げる!たったこれだけです。
RFAを下げることでCSFの流れをFlow Voidとして描出することができます。
上記を利用して、同一断面をDynamic撮像することで経時的な変化を撮像可能です。
撮像断面を中脳水道やモンロー孔などに設定して撮像すると…
fig.2 Dynamic撮像によりCSFの流れを動態として描出
RFAを低く設定すると、CSFの流れをFlow Voidとして描出できますが、画像のコントラストが変化します。
そのため、RFAをただ下げるだけにすると、プロトン強調画像Likeな画像となってしまいます。そこでRFAにある工夫をしてみます。
RFAの工夫で、さらなる画像の向上
Reforcusing Controlは5回目のRFAをmin Angle、k=0のRFAをmid Angle、最後のRFAをmax Angleとして段階的にRFA強度を変調させる機能です。
これによりk=0付近のRFAを低く設定してFlow Voidを起こさせ、かつCSFのようなT2値の長い組織の信号強度を高くすることができます。
VISTA法やCube法などの3D TSE系シーケンスで使用されている可変再収束フリップ角を2D撮像に応用した技術です。
RFAのフリップ角を変調させることで、PSS (pseudo steady-state)効果によりT2コントラストを保持しつつ、CSFの流れをFlow Voidとして描出することができます。
Fig.4 ssh TSE Dynamic Sag により、中脳水道や橋前槽周囲のCSFの流れを観察
Fig.5 ssh TSE Dynamic Cor により、モンロー孔周囲のCSFの流れを観察
2D撮像のSingle Shot TSEとReforcusing Controlを組み合わせることによってCINE画像の画質をさらに向上させることが可能となり、CSFの動態を明瞭に観察することができます。
短時間撮像が可能
従来法の心電図同期併用Phase Contrast Cine MRIでは、同期撮像であるために、撮像時間が長く体動の影響が受けやすいこと、不整脈などで更なる撮像時間の延長を招いてしまう例もあります。
しかし、本法では同期撮影の必要はなく、TRを短くするなどして1フェーズあたりの時間を減少させることができます。
CSFの流れを観察する上で最低5〜10フェーズあれば十分と考えれば30〜60秒程度で十分評価可能なCINE画像を取得することができます。
まとめ
本法は装置メーカーやバージョンを問わず、低いRFAを用いた2D ssh TSE Dynamic撮像を用いることでCSFの動態を画像化することができます。
また、Reforcusing Controlという機能を用いてRFAを段階的に変調させることで画質を向上させることが可能です。
さらに、短時間でのCINE画像の取得を可能とし、中脳水道やモンロー孔周囲での髄液の動態やクモ膜嚢胞など嚢胞性病変の交通評価などで、有用な画像を追加できることが期待できます。
ライター紹介
東海大学医学部付属病院所属の上薗博史と申します。
MRIに従事して10年になります。
学生時代はとにかくMRIが苦手でまさかこれほど長くMRI業務に携わるとは思いませんでした。
MRIは現在でも挫折の連続ですが、腐らずに頑張っています。
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