RADっていいとも 素敵な仲間とのペンリレー (60) 大西 宏之

「足ると、足らずを知る」

MRと私

はじめに

神戸大学医学部附属病院の島田さんよりバトンを頂きました。兵庫県神戸市にあります王子会神戸循環器クリニックの大西宏之と申します。診療放射線技師になって25年ほどになります。MRが好きで色々な勉強会、学会などを通じて多くの方と交流させて頂きました。
趣味:低山ハイク(六甲山)、読書

市章山からの眺望

自己紹介

ろくに学生時代に勉強をしていなかったためか、社会情勢による就職氷河期のためか、卒業後すぐに就職できずに面接を受けては落ちと、悶々とした日々を送っていました。
実家近くの病院に飛び込みで就職活動の電話をしていたところ、「系列病院の淡路島の病院に欠員が出たのでどうか?」と打診を頂きました。実家は兵庫県加古川市(カツメシ、靴下の生産で有名。将棋が盛んな市です。)でしたので、明石海峡大橋もあるので、それほど遠くにも感じず、寮もあったので6月からお世話になりました(結果、2か月間無職でした)。
当時の淡路島の民間病院は、高齢者の人口比率が高く、20年先の未来の状況と言われていました。当然、認知症の患者様も多く、MRやCT検査も大変苦労した記憶があります。
はじめてのMR装置はGE社製Signa1.0Tで、頭部、整形領域、たまにMRCP(当時はシングルショットMRCPが撮像できることが最新だったようです)を撮像していました。MR検査の撮像時間は長く、認知症の患者様の画像はモーションアーチファクトのみの画像でした。綺麗に写したいけど、なにをどうすればよいかはいつもクエスチョンでした。「目の前の問題提起と解決方法の模索、あとは方法の実行だ」と、今の自分なら当時の自分へ教えてあげるのでしょうが、その頃は只々固定をしっかりするだけのモーションアーチファクトの大量生産でした。やっぱりパラメータと画像の関係を理解したい思いが強くなり、アプリケーションの方が来られた時に話を聞いたり、頂いた資料を読み込んだり、先輩、上司、放射線科の医師にご教授頂いたりしましたが、用語の理解は難解だし、フーリエ変換なんてとんでもなく難しい原理だと思ったような気がします。しかし、それらを理解してワンクリックの変更で画質が良くなることを経験すると勉強が楽しくなり、のめり込むようになりました。

淡路島での生活も楽しく送っていたのですが、職場は田舎の救急病院ということもあり、夜間のベル待機も重要な業務であったため、どうしても島内、島外の勉強会への参加はかなりハードルの高いイベントになっていました。兵庫県技師会の月一発行物「シャーカステン」には、県内で行われる勉強会や講習会が記載されていて、「おもしろそうなテーマだなっとか、この技師さん、いつも載ってるなっとか」胸を躍らせて読んでいました。

紆余曲折を経て、7年務めた淡路の病院から神戸市の病院へ転職しました。転職後、すぐにシャーカステンに記載されている勉強会に片っ端から参加していきました。7年間の溜まりにたまったフラストレーションを爆発させたかったのでしょう。ほどなくして、神戸頭部研究会(JART会誌へ「続・脳細胞増殖講座」を投稿した研究会)の代表から世話人へのオファーがあり、考える間もなく快諾しました。発表スライドも今までほとんど作成したことがなかったので自宅まで先輩が来て下さり、スライド作成の仕方を教えてくれました。テーマは、「大脳基底核の解剖について」で、CT、MR画像と解剖図を用いての20分間の発表でしたが、当日はものすごい緊張で胃がキリキリして、発表前に牛丼を食べて胃を落ち着かせて参加したのを鮮明に覚えています。また、発表が決まると月一発行物「シャーカステン」に自分の名前が記載されていることに大変感激しました。遠くのシャーカステンが身近なものになっていきました。
8年前から「神戸MRの会」の代表になり、定期的に自分の名前が記載されています。淡路島で勤務していた時に「シャーカステンに載っている技師と君とは違うよ!」と言われたのが、忘れられないぐらいショックな言葉でした。人前で何かを発表するということは、立派で偉大なことなのかもしれませんが、自分が望みコツコツと前進すれば、それなりに実現するのではないかと思います。また、色々な場に出席することでメンターにめぐり合うこともあります。「君の発表はまだ、いい恰好しようとしている。」と言われたこともインパクトがありました。地に足がついた発表をしていないのを見透かされたような、発表内容を伝えることよりも自分を良く見せようとしていることは大変恥ずかしいことでした。神戸に移って自分に課していたことは、「Noを言わない」ということです。それもあって色んな発表の機会を頂きました。今考えるとよく依頼を受けたなと思う内容のものもありましたが、全て自分の肥やしになっていると思います。

研究会での発表風景

最後に、感銘を受けた言葉に「足るを知る:不満をもたずに現状に満足すること」、「足らずを知る:現状に満足せずに努力すること」があります。そのバランスを考えて日々研鑽を積み、社会的な役割を果たしながら充実した毎日を送りたいと思っています。

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吉村 祐樹岡山済生会総合病院 放射線技術科

投稿者プロフィール

DWIとパラメータをいじることが好きです。MRIという名のテレビゲームをひたすら毎日やっている感覚です。このゲームは一生クリアできそうにありませんが、真摯にMRIに向き合っていきたいと思います。

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