検像運用について

 はじめに

まだフィルム運用のころ,一般撮影のみならず、放射線検査においては撮影条件を駆使してよい画像を作る努力がされていました.もちろん読影のためです.

現在はフィルムレスでデータが画像サーバに保管されます.しかし,診断できないような濃度やコントラストの、例えば胸部や乳腺などの画像は保管されてはいません.読影の際に放射線科医や臨床科の医師が濃度を合わせる必要のある胸部写真など聞いたことありません.動きや問題があって読影に使用できない画像は送りません.

MRIでは見たい部分を自由に濃度やコントラストを読影端末で変化させて観察できます.一般撮影などの画像では得られないメリットがあることもたしかです.しかし,読影をしやすい画像を提供する姿勢は変わらないはずです.特に診療科での観察や患者説明の時など,画像を開くとすぐに適切な画質を提供できる努力は必要だと思います.

当院の状況

当院はMRIを3台所持しています.すべてのMRI本体と画像サーバ間には検像端末が入っています.(図1↓)

MRI本体で撮像されたデータやWork Stationで作成されたデータは,自動で(もしくは手動で)検像端末にまず送られます.検像端末からサーバに送らない限り,サーバには入りません.(図1↑,図2↓)

当院使用機器(メーカ,システム,バージョン)は以下の通りです.

PACS 富士フィルム SYNAPSE (VM-SAN) Ver. Synapse413

RIS富士フィルム F-RIS Ver. V7

検像装置 富士フィルム iRAD-QA Ver. 1.8.0207

検像端末で行うこと(撮像担当者,または撮像補助者)

1) 適切な濃度・コントラストの調整(図3)↓

2) ダイナミックやDual撮像など(事前に分けて送る設定にできるものもある)

一括転送されているものを分けること.(シリーズの分割)

3) 画像の付帯情報の記載

これらは事前に撮像時やWork Stationでの処理時での記載に対応しきれない場合や記載忘れ・記載ミスの場合にもサーバに送る前に修正します.(例えばダイナミックなどの時間の記載や,MPRなどの処理,記載忘れた造影情報など,その他の情報)(図4↓)

4) スライスオーダーの調整

メーカによってはスライスのオーダーを変更できない場合があります.当院での取り決めは,Axは脳は尾―頭方向,それ以外は頭―尾方向,Coは前―後,Sgは右―左(ただし,四肢の場合は外から内)としています.よって,必要に応じてスライスオーダーを変更する必要があります.MRI装置から転送時にオーダー調整できるものについてはこの限りではありません.

5) シリーズの合成(分かれているものを一つにする)

何度か撮像した位置決め画像等、まとめたほうがわかりやすいものは合成する.

6) 複製新規

BPASやミエロ,腕神経叢など,ネガポジ逆転させたほうが見やすいものがあります.その場合はオリジナルを複製して,反転させた画像もつくります.

7) シリーズ順の調整

位置決め画像から始まって,ダイナミックやPOSTなど,一連の調整.Work Stationで作られたものは撮像時と別の通し番号が付けられるため,検像端末に転送した際に,実際の撮像順とは無関係な部分に入ることがある.それゆえ撮像順になるように元画像の後に入れるなど,見やすいように工夫してサーバに転送します.

8) 不要画像の消去

動きや緊急停止した場合や自動で作成されるMIP画像など,臨床で使えない画像は混乱の元なので消去する.しかし放射線科医と相談して,状況で残す場合もあります.

サーバに送った画像の確認(MRI責任者)

〇検像端末で作業し,サーバに送られた画像を,なるべく早くMRI責任者がRIS端末から再度画像を確認します.経過観察や前回との比較をする場合,濃度やコントラスト差が生じることを懸念して,リファレンスとなる目が必要だと考えています.もちろん,検査に携わるスタッフ全員がそのような目を持つように濃度調整していますが,さらにリファレンスとなる責任者が確認します.そこで問題があった場合はRIS上にコメントを残し,どの画像がどのように問題があるかを記載します.担当者はそれを見て,再度,検像端末で調整して送り直します.濃度・コントラストやスライスオーダーは訂正して上書き可能だからです.付帯情報の間違いは一度サーバ画像を消して(隠して)から新規で再送します.

運用について

以上のように検査を担当するオペレーターは多くのモニターを見ながら作業することになります(図2=わかりやすくするため再掲)

スキャンの合間でWork Stationや検像端末を操作することになります.処理に手間がかかる場合や込み入った検査,呼吸停止下での撮像など,操作が困難な場合もありますので,すぐにはサーバに転送できないデメリットもあります.その際は,撮像補助の要員(検査の準備や電話連絡など,周囲のマネージメント担当技師)がオペレーターの横で助ける場合もあります.責任者によるRIS端末上での検像はさらに時間が経過した後となりますが(読影が終了している場合もある)(図1=再掲),経過観察なども考慮して,適切な画像を残すようにしています.

MRIは,撮像する技師においても読影しながらすすめていく要素の強いモダリティと考えます.再度画像を見直すことで,様々な評価,反省点や今後の改善点の確認などもできると考えています.

なお,検像端末とRIS端末では,画質の確認としてはモニターに依存する可能性もありますが,輝度などはおおよそ統一(読影端末とも同様)することにより,読影に支障のでるような極端な画像を提供することはありません.

さいごに

検像は手間がかかります.しかしながら,我々は画像を扱う職業です.提供する画像にプライドを持つべきであると考えています.

私どもの取り組みが何等かの参考になれば幸いです.

高津安男(大阪赤十字病院)


Chief Editor’s Voice

2017年のMR学会(宇都宮)において、「匠の技」のシンポジウムで発表をなさった高津安男さん(大阪赤十字病院)のスライドに感銘を受けました。そこで私は挙手し、以下のような発言をしました。

「高津さんの素晴らしい技に感動しましたが、一番『匠』を感じたのは、(そういった技もさることながら)「すべての画像のウィンドウ設定に全く違和感が無かった」ことです。全てのスライドのすべての病変の描出において完璧でした。最近は、送られてくる画像のWindowがめちゃくちゃであることに悩んでいます。僕らが読影端末の画像を開けてまずしなくてはならないことは、マウスを(Window調整のために)動かすことなんです。(初期設定が適切ではないので)すべての画像にこれをしなくてはならないのですが、もし高津さんが送ってくれたなら、Windowが適正なので、いきなり読影に入っていけることになります。

昨今は技師さんが画像を見ないで、ましてや診断眼を持たないで、漫然とPACSに転送することに本当に困惑しています。いつも画像を見ていないので、先日も(b=1000を送らなくてはいけないのに)b=0のMIPが送られていて、そのことに気づいていないのです。これが最近も複数の病院でこれを生じていました。めちゃくちゃなウィンドウで送られる画像がPACSでそのまま臨床医に届いてしまい、あるいはCDに焼かれて他の病院への行ってしまいます。フィルムの時代は検像をしていましたら、こんなバカげたことは起こりませんでした。いまの管理職の人はそれをしていたはずなのに、若者がしている現状を放置しており、堕落しているのではないかと感じます。」

・・・とまあ、このようなことです。このぐらい強調しないとならないぐらい、画像の無思考転送は深刻になっていて、なんにも画像を見ないで(「病変を見つけよう、見つけたらそれがさらに明確になるように撮影しよう」と思わないで)、クリックするだけの人が多くなってしまっています。

そのような趣旨で話したのですが、シンポジウムが終わったあとに、高津さんが話しかけてくれました。大阪赤十字病院には「検像端末」があって、そこに飛ばしてチェックしてからPACSに流しているというではありませんか。私はこれだ!と思い、MRIfan.netに書いていただけるようにお願いしました。高津さんが快諾してくださり、ここに詳細を公開できることになりました。

マンパワーや設計上の工夫が必要ですが、ぜひ技師の皆さんには参考にしていただければと思います。また、話題にしていただければと思います。私はウィンドウのことだけを発言しましたが、誰しもが経験するDICOM画像上の名称のわかりにくさも、リネーム(rename)対応していて、素晴らしいと感じました。

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tarorin

tarorin東海大学工学部 医用生体工学科 教授

投稿者プロフィール

MRIの撮像・フィルム焼き・患者導入に従事していた経験を活かし、企・技・医の中間の立ち位置を大切にしています。モットーは研究結果を中立的に判断すること、皆で研究成果を愉しむことです。

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