直腸癌を対象としたT2W-SPACEについて

直腸癌について

画像診断ガイドラインでは,直腸癌の局所浸潤の評価にMRIが推奨されています(推奨グレードB)。直腸の壁構造の描出および局所浸潤の評価には高解像度のT2WIが有用で,2D-TSEによる撮像が基本ですが,断面設定によってはblurringや,pseudospiculated appearanceによるoverstagingを引き起こす可能性が指摘されています*1)
撮像時の限られた状況下で適切な断面を設定することは簡単ではなく,病変部が複数ある場合には検査時間が延長してしまいます。

そこで…

3Dでデータ取得できれば後処理による断面変更が可能ということで,Variable Refocusing Flip Angle(VRFA)-TSEを使用した3D画像と2D-TSEによる描出能の比較を行った報告がいくつか見られますが,3D画像による評価については2Dと同等とするもの*1)と,2Dより劣るとするもの*2)がありました。パラメータ設定が影響しているのではないかと考え,当院のシーメンス社製MAGNETOM Skyra(3T)でVRFA-TSEであるSPACE(sampling perfection with application optimized contrasts using different flip angle evolutions)を使用した場合のパラメータ設定について検討してみました。SPACEでT2コントラストが得られるRFA modulation type(RFA mode)としては,RFAが一定のconstantモードと,可変するt2varモードがあります(Fig.1)
スライド1
Fig1
constantモードは,主にMRCPやMRUなどheavy T2WI取得時に利用されていると思います.検討した条件下では,スキャン効率がt2varよりやや優れるものの,SARが非常に高く,blurringが目立つため,直腸癌対象ではt2varモードを選択しました(Fig.2,Fig.3)スライド2
Fig2

スライド3
Fig3
また,撮像時間短縮およびモーションアーチファクト低減のために,TR短縮が可能か検討しました.ファントムおよびボランティア撮像の結果では,縦磁化を強制回復させるRestoreをONにすることで,2000msec程度までTRを短縮しても各対象物と精製水とのコントラストは保たれていました.なお,t2varにおける脂肪信号は2D-TSEに比べて低く,精製水とのコントラストは2D-SEに近似した。(Fig.4,Fig.5)。

スライド4
Fig4

スライド5
Fig5

最適化されたパラメータは?

以上から,当院のパラメータは以下のように設定しました.解像度を高めるためボクセルサイズは0.9mmのアイソボクセルとして,局所励起によって位相方向(RL),スライス方向(AP)の励起範囲を限局することで,対象外からのアーチファクト混入の低減,撮像時間の短縮を図りました。

Protocol

(Plane)

RFA

mode

TR

[ms]

TEeff

(TE)[ms]

ETD[ms]

(TF)

Matrix FOV

[mm]

Voxel size

[mm]

Imaging

time

SPACE (Coronal) t2var 2000 96

(270)

602

(178)

256*180 230*162 0.9*0.9*0.9 5min

30sec

Table.1 MR Imaging Parameters for T2-weighted SPACE Protocols

臨床応用について

Fig.6は,Raの進行直腸癌の症例で,拡散強調画像で高信号を示す部位が複数みられました.撮像時に選択した断面(2D-TSE)では,病変部と前立腺との境界が不明瞭ですが,T2W-SPACEのMPR断面では境界が認められます.対象部位に直交する断面によって,壁深達度や隣接臓器への浸潤について,より詳細な観察が可能になった症例です。上記シーケンス運用後は,その他の骨盤疾患などに対してもT2W-SPACEの依頼があり,局所励起が使用できない1.5T装置(MAGNETOM Avanto)では,Voxel sizeを1*1*1mm程度とし,腹部全体を6分ほどかけて撮像しています。
スライド6
Fig6
以上,今回の検討では,直腸癌の局所浸潤評価目的でT2W-3D-VRFA(SPACE)を撮像する場合,RFA modeはボケが少なくSARが低いt2varが有用で,その場合は脂肪信号が低くSEに近いコントラストになる,RestoreをONにすることでTRは2000msec程度まで短縮可能という結果を得ました。今後も,シーケンスの良さを活かした画像が提供できるよう,症例を重ねながら検討を続けていきたいです。

*参考文献

1) Kaur et al , MR Imaging for Preoperative Evaluation of Primary Rectal Cancer : Practical Considerations. RadioGraphics 2012;32:389-409

2) Kim et al , Preoperative 2D and 3D MR for Rectal Cancer Staging. Radiology 2010; 254:485-492

3) J.J. F¨utterer et al , Preoperative 3T MR imaging of rectal cancer:Local staging accuracy using a two-dimensional and three-dimensional T2-weighted turbo spin echo sequence. European Journal of Radiology 2008; 65:66-71

【ライター紹介】

浜松医療センター 有谷航と申します。診療放射線技師になって10年、MRIを担当して6年になります。選択肢が多く、さまざまなアプローチができるMRIにとてもやりがいを感じています。プライベートでは野球をはじめ、ゴルフやテニスなど体を動かすことが好きです。これからもMRIを通じてたくさんの方と交流できれば幸いです。宜しくお願いいたします。
浜松医療センター有谷

 

 

 

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北川 久東京慈恵会医科大学附属柏病院 放射線部

投稿者プロフィール

MRIの奥の深さにいつも悩まされています。
おそらくゴールの見えないMRIをこれからも追い続けるでしょう。

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