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MRIクイズ (2) ールーチン作業の落とし穴
- 2015/1/7
- Any Modality, MRIクイズ, ミニレクチャー
- コメント:1件
脳血管の3D-TOF-MRAのMIP画像は、施設によって作成方法は様々ですが、大まかに下記のいずれかに該当すると思われます(さらに元画像を追加するか否かのオプションもあります)。
- 元データに忠実に、カッティングやノイズ除去などの手技を一切加えず、全体イメージをそのままMIP処理し、回転像を作成。
- 血管の分離(前方循環系と後方循環系の分離など)、ノイズ除去、頭蓋外血管(外頚動脈系血管など)や静脈を技師の手により極力除去した後、回転像を作成。
当院では2の方法を採用しております(ここまでが今回のお話の前提です)。さて、次の症例をご覧ください。
【症例】50代女性 右側頭部痛、右眼の充血、たまに耳鳴り(右側のみ)
この患者さんのMRA画像です。症状を見ただけで何の疾患かピンときた方もおられるかと思いますが、実はこの画像では、まったく異常は認められません。病変部分はノイズと一緒にカットされています。
こちらはある程度のノイズ除去を行い、病変部を残した全体像です。右内頚動脈周辺にまばらな高信号がありますね。当院では、内頚動脈サイフォン部周辺の、海綿静脈洞や蝶形骨洞、下垂体などの信号は、内頚動脈の視認を優先するために「ノイズ」と見なしてカットしているのですが、技師の不注意(カルテの不読、原画像の未確認)により、正常のように見えるMIP像を提出、という痛恨のミスをしてしまいました。
幸いなことに主治医が主訴からある疾患を疑っていたため、元画像の提出要請があり(当院の場合、指示なき場合は元画像を添付しません)、正しい診断が付きました。解答は下の方にスクロールして見て下さい。
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【解答】内頚動脈海綿静脈洞瘻(carotid-cavernous fistula:CCF)
元画像を見ると、右内頚動脈周辺に不整な高信号域がありますね。CCFは内頚動脈と海綿静脈洞の間に瘻が形成されることで、内頚動脈の血液が海綿静脈洞に直接短絡、眼球突出や充血などの眼症状、拍動性雑音などの症状が起こります。MRAをよく見ると右上眼静脈の逆流による拡張があります(ただし、この所見のみでCCFと診断するのは難しいでしょう)。
CCFには外傷や動脈瘤破裂が契機となる「直接型」と、内・外頚動脈の硬膜枝が関与する「間接型」(硬膜動静脈瘻: dural AVFの一種)の2通りがあります。直接型は眼球の著明な突出や大量の鼻出血などの症状が急激に起こりますが、めったに遭遇することはありません(ほとんどの場合、今回の症例のようなdural AVF typeです)。
この患者さんには血管内治療が行われました。経静脈アプローチにより海綿静脈洞と瘻孔をコイル塞栓し、症状は軽快、無事に退院されました。
CCFを含め、dural AVFの患者さんを検査した場合(かなり頻度は低いですが)、ノイズと思われる信号の中に病変が隠されていることがあります。検査の際は必ず「カルテを確認すること」、疑わしい信号を見つけたら直ちに「元画像を確認」する習慣を付けましょう。
コメント
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コメント (1)
MR angiography については,必ず元画像を残し,評価する医師は必ずそれを含めて診断すべきだと思っています.MRAの元画像をサーバーに残しても,その容量は知れています.きれいに作られた再構成画像には,落とし穴があります.