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頭部MRAのちょっとした工夫(1)
- 2019/1/5
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頭部MRAのちょっとした工夫
東海大学医学部付属病院 放射線技術科 高野 晋と申します。
私は以前、血管造影室に配属されていため、お世話になった脳神経外科の先生からの頭部MRA検査がオーダーされると「ナイスな画像を撮って、先生に喜んでもらいたい」という思いに駆られます。
今回は、そんな思いから実践してきた頭部MRA検査における『ちょっとした工夫』を紹介させて頂きます。
記事は2部構成でお届けします。
Time-of-flight (TOF) MRAの弱点
頭部MRAシーケンスの代表といえば、やはりTime-of-flight (TOF) MRAかと思います。
TOF MRAは流入効果を利用しているため、流速状態や方向が信号値に反映します。
皆様、このようなTOF MRA画像を見たことがないでしょうか(Fig.1)。
図に示すようにSlabに対して平走する血管や血流がうっ滞する動脈瘤では、TOF MRAにおいて信号低下してしまいます。
そこで、私はこのような症例に対しVariable Flip angle (VRFA) -3D-TSEを利用したMIP MRAを撮像しております。
VRFA -3D-TSEを利用したMIP MRAとは
VRFA-3D-TSEは、スライス選択傾斜磁場(Gz)において収束パルスであるRefocusing pulseをNon-selectiveに励起することにより、従来の3D-TSEと同じ実行TEでもETL数を増やせ、Echo spaceを短縮することができます。
そのため、撮像時間を短縮し、さらにモーションアーチファクトを低減できる撮像法です。名称は、VISTA (PHILIPS)、SPACE (SIEMENS)、CUBE (GE)、MPV (Canon)、IsoFSE (HITACHI)と各社ベンダーによって様々です。
このVRFA-3D-TSEのもう一つの特徴が、Refocusing pulseのフリップ角を低く設定することで、血流の位相が揃わなくなりBlack blood(BB)効果が得られることです。
皆様の中にも、頸動脈のプラーク評価や椎骨動脈解離の判定などにVRFA-3D-TSEのBB効果を利用し、細かいスライスで撮像している方も多くいらっしゃるのではないでしょうか。
私はこのVRFA-3D-TSEをTOF MRAのように3D MIPで、観察できないものかと考えました。
そこで、VRFA-3D-TSEをプロトン密度強調のコントラストで撮像をし、画像のネガポジを反転後、MIP処理する方法に辿りつきました(Fig.2)。
本手法でFig.1で示した症例を撮像すると以下のようになります(Fig.3)。
TOF MRAで信号低下していた部分が、VRFA-3D-TSE MRAでは明瞭に描出されております。この方法で、TOF MRAの弱点を補えることができるといえます。ただ、メリットばかりではありません。実は、このMIP処理にはコツと手間が必要なのです。
Fig.2をもう一度ご覧ください。
画像をネガポジ反転すると、背景も白い信号になるのが分かります。ゆえに、TOF MRAと同じ感覚でMIP処理を行うと白い立方体が表示され、「なんじゃこりゃ」という状況になります。そのため、最初はMinIP(最小値投影法)で表示させ背景をカットします。ある程度、背景カットが終わりましたらMIP表示に切り替え、さらに要らない部分をカットして完成です。
さらに、動静脈は分離せずに表示されるため、不要な静脈も削除する必要もあります。
VRFA-3D-TSE MRAの撮像条件
シーケンスの作り方は非常に簡単です。既存のT2W VFRA-3D-TSEのprofile orderをlinear (sequential) からlow-high (centric) に変えるだけです。後は、必要とするスライス数・厚み・面内分解能に調節します。
当院で使用している撮像条件をFig.4に示します。
2分程で撮像できるので検査時間も大きく延長はしません。
TOF MRAとVRFA-3D-TSE MRAの比較
内腔径1.5mmのチューブファントム内にGd溶液を流し、TOF MRAとVRFA-3D-TSE MRAを比較検討しましたが、VRFA-3D-TSE MRAは流速に依存なく真値に近い半値幅の径が測定され、方向依存性もないことが示されました(Fig.5)。
TOF MRAは血管径を過小評価してしまうため、動脈瘤の大きさを正確に示すにはVRFA-3D-TSE MRAが適しています。また、TSE法の方が、TOF MRA のFFE法よりも磁化率に強いため、クリップやコイル近傍の血管も描出できるのがもう一つの利点です。ただし、本手法ではデバイスも血管と同様に信号として表示されるので、治療した動脈瘤におけるneck remnantの評価はできない点に留意してください。
最後にコイル塞栓術で温存したい脳動脈瘤内の下向きに走行する娘血管・AVM内のフィーダーとドレーナーを明瞭に描出することができた症例を紹介いたします(Fig.6)。
血管内治療が予定されている患者には、事前に治療戦略が立てやすくなる場合があるので、この撮像はおすすめです。
ライター紹介
東海大学医学部付属病院 高野 晋(たかの すすむ)
技師歴10年目 MRI歴4年目。良き上司・先輩・後輩に囲まれながら、MRIと楽しく過ごしています。難解なことが沢山ありますが、たまにアハ体験することがあり、その瞬間は快感です.趣味はけん玉です。けん玉は、日本が誇る伝統的な玩具ですが、いまや世界中にプレーヤーがおり、海外ブランドやプロチームも存在します。様々な技の組み合わせで、新しい技が開発できるところが、 MRIのシーケンスに似ていると思っています。
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